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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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程度の低さ

 なぜこんな場所で彼女たちは待機をしているのか。


 それについては聞かなくても想像できることだ。

 その証拠に扉がほんのりと赤みを帯びている。


「攻略中の冒険者がいるのか」

「ああ。

 アタシらはカルラとの階層調整で最初から進んでるが、先に入った連中は結構危なっかしい若手冒険者チームでな。

 攻略にも時間がかかってるみたいで、要するに足止めされてんだよ」

「この辺りじゃ冒険者と鉢合わせることも少ないんだが、たまにいるんだよな、実力に伴わない強さで挑もうとする無謀な連中がよ」

「それも自由ですし、先にいたあの子たちに攻略を優先させるのは当たり前ですが、少々心配事は尽きませんね。

 ……骨になってなければいいんですけど」


 随分と怖い表現をするな、彼女は……。

 だが実際に命を奪われることも少なくはないと聞いている。


 命を奪う以上、奪われる覚悟もするべきだし、何よりも自由であるべきの冒険者にはそういった危険が付きまとうのも、ギルドに登録する前にしっかりと説明を受けた上でどうするかを選ぶことになっているからな。

 冷たい言い方になるが、自由の代償として受け入れるしかないだろう。


 もっとも、真面目に修練をしていないガキが命の奪い合いになる実戦でどうなろうと、本音を言えば自業自得だとしか俺には思えてならないが。

 稀に剣すらロクに扱えない粋がった子供がダンジョンに潜り、大怪我して早々に引退するなんてこともあるそうだが、それこそ冒険を勘違いしているとしか言いようがない。


 俺が教えていればそんなことは絶対にさせないし、それでも言うことを聞かなければボコってでも止めるだろう。

 そもそもある程度の強さを持たなければ、10階層まで辿り着けないはずだ。

 そんな強さしか持たないのに先を進むことを強行するなんて連中すべての面倒は見切れないし、それこそ自分で気づけと俺なら言葉にする。


 命を懸けて冒険することができる者を、敬意を込めて"冒険者"と呼ぶんだ。

 俺はそう思っているし、本来冒険者とはそうあるべきだと考えている。


 これまで多くの冒険者と会ってきたが、そのほとんどはそれを理解している者たちだったし、無茶と無謀の区別がついていない危なっかしい連中は15階層で会った1チームだけだ。


 ……この差はいったい何なんだろうな。


 価値観か、我の強さか、それとも何か別の要因か。

 俺にはその判断がつかないし、人や状況によっても様々だろう。


 ただひとつ言えることがあるとすれば、世の中を舐めてなければそんな考えは出てこないってことだ。

 そういった現実が見えていない連中は何を言っても無駄だと感じる一方で、手を差し伸ばさなければ最悪の状況に向かうことも間違いじゃない。


 まぁ、言うことを聞きそうなやつらでもなかったし、救いの手をたくさん振り払ってきた連中だろうから、あとは自由にすればいいか。


「いるんだよな、そういった馬鹿どもがよ。

 アタシらもそこそこ経験あるからな、そんな連中はごまんと見てきた。

 ……ま、馬鹿はさっさと引退するか死ぬかのどっちかだな」

「引き際わかんねぇと長続きしねぇからな、冒険者ってのは」


 豪快に笑うバルバラとコルドゥラ。

 ベティーナを含めかなり灰汁(あく)が強いが、冒険者として大切なものはしっかりと持っているようだ。


 実力はもちろんだが、その心構えを持ち合わせていないやつは長続きしないどころか、最悪の結末を迎えかねない危険な職業なんだ。

 それは分かっているのが当たり前のことで、分からないなら知ろうとする気概が絶対的に必要になると俺は思う。


 そうでなければ悲しむ人が出てくるんだが、問題はここかもしれないな。

 誰も気にかけてくれるような人たちが周りにいなく、誰もがそれを正してくれないのなら、それはもう自分自身に直すところがあると気付かなければ改善されることはないだろう。

 そういった意味でも、あの連中に会話をしなかったのは正解だったな。


 ……そのことに何も思わないわけではないが。


「そういったことも踏まえて、冒険者は自由であるべきです。

 迷宮に子供がいる、可愛い服に似合わないダガーを装備してる。

 たったそれだけのことでも嘲笑うような程度の低さしか持ち合わせない連中は、もう二度と会うこともないでしょうね」


 呆れたような、情けないと思っているような。

 同じ冒険者として括られることを嫌悪する彼女たちがそこにいた。

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