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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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あるはずもない

 18階層の半ばまで進み、小部屋のような行き止まりで休息を取っていた。

 予想していた通り、ホーンラビット、ヘビィルースター、ディアと階層ごとに魔物の出現が変わっているようだな。


 さすがにこれがダンジョンのセオリーだとは思わないが、徐々に肩を慣らしていくようにも感じられる構造に、やはり初心者用として考えられたダンジョンだと見て間違いないだろうな。


 ここに、どうしようもなくゲームの中の世界を連想してしまう。


 そもそも町の外で遭遇する魔物についても正確なことは分かっていないらしい。

 魔物が出現した瞬間を目撃しなければ分からないとも思えるが、刃物で斬っても血が出ない点やアイテムをドロップしてそのまま消失するところ、まるで発動するようにスキルが使えることやレベルとステータスを表示できることなどから考えると、この世界そのものがゲームの中だと感じても仕方がないのかもしれない。


 だからといってそう判断できるのは、それを知っている者だけだ。

 しかし、ある種の危険な思想にも繋がるんじゃないだろうか。

 極論ではあるが、"死んでも生き返れる"なんて馬鹿な発想もされかねない。


 そんなことがあるはずもない。

 VR内を自由に冒険できる世界なんてのは、まだまだ未来の話だ。

 たとえ存在するとしても、落ちてる葉っぱすら細かく創りこまれた世界が身近にあるとはとても思えない。



 違和感を強く覚えるダンジョンにも、それは言えることだ。

 宝箱や魔物が配置されるように置かれ、ボスを倒すと報酬がもらえる。


 まるでアトラクション感覚だとしか思えない。

 それもここまでの難易度を考えると、本当に初心者を対象としたものだった。


 この世界には15階層の泉で会った連中のように、魔物を狩ることを軽視している冒険者が多いのかもしれないな。


 迷宮内にいる魔物の数は町の外よりも遥かに遭遇率が高い。

 ゴブリン以外はそもそも集団で見かけることも少ないだろう。

 だが所詮ボア程度の魔物に、鍛えた冒険者チームが負けるはずもない。


 それに"攻略組"と呼ばれているチームが現在進んでいる階層も気になっていた。

 世界最大級の迷宮が大昔に発見され、いつの時代にも攻略をメインに活動する冒険者チームも多いだろうとは思う。


 だが、それでも未だ83階層を攻略中という点が解せない。

 ここはまだ20階層にも到達してないし、難易度も相応だろう。

 80階層は届くかも分からない遥か先になるのも間違いない。


 しかし、それを差し引いて考えたとしても、ありえないんじゃないだろうか。

 ギルド職員の女性が話していた内容から察するところ、現在攻略中の冒険者は歴代でも相当の強さを誇ると思われるが、そんな強さを持っていても先に進むことができないことに首を傾げてしまう。


 ……いや、可能性くらいは考えられる。

 物理、魔法ともに効き難い魔物が出現しているんだろうな。

 いわゆる魔法生命体と呼ばれるゴーレムの上位種が大量発生すれば、安全マージンを取りつつ休憩と攻略を交互に行い、ダンジョンをゆっくりと進んでいることくらいは想像できる。

 ゴーレムってのは攻撃が効き難いだけじゃなく体力も高いって聞くし、そんなのがもさもさ歩いていれば攻略が捗らないのも頷けるが。


 俺の想定では、子供たちでも冷静に対処ができれば30階層は突破できるはず。

 今後出るだろうコボルトやら狼の魔物であるウルフ系が出ようとも、今の3人が勝てないとはとても思えない。

 唯一、体力と魔力残量に不安が残るフラヴィとエルルだが、それも休憩を取りつつ進めば問題にならないだろう。


 難易度の低さから、子供たちの修練をするためには相当深く潜る可能性も視野に入ってきたが、最悪の場合も想定する必要があるかもしれないな。

 ……まさか深部で"攻略組"とばったり、なんてことにならなければいいが……。


 そんな予感をひしひしと感じ始める俺がいた。

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