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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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赤い宝箱

 魔晶石を受け取り、インベントリに入れる。

 随分と問題点が見えたゴブリンだったし、これの価値は低いだろうな。


 他にドロップ品はないようだ。

 正面奥に出現した薄青色のゲートを進む。


 その先は20畳ほどの部屋になっているようで、中央に赤い宝箱がひとつと奥には薄青色のゲート、背後には薄緑色の非常口があった。

 横に並びながら目を輝かせて箱を見る子供たちへ、俺は言葉にした。


「3人が頑張って手にした宝箱だ。

 折角だし、みんなで開けるといいよ」

「いいの!? ごしゅじん!?」

「ああ」


 同時に喜ぶ子供たちを微笑ましく見守る。

 小さなフラヴィを中心に、3人でゆっくりと箱を開けた。


「わぁ、いっぱいだねー」

「ちっちゃいけど魔晶石がごりごりしてるよ、トーヤ!」

「他は何かが入った小瓶に……なんだろ、この綺麗な石」


 摘むようにして手に取るブランシェ。

 透明度の高い、薄緑色の小さな結晶体。

 3センチくらいの大きさで、荒削りの原石にも見えた。


 小瓶と結晶の鑑定を行ってみる。



【 回復薬・微 】

 体力をわずかに回復する。

 とても小さな傷なら治せる。


【 帰還の水晶 】

 迷宮の外に出ることができる水晶。

 手に持った状態で帰還を願うと使用可能。

 部屋にいるすべての仲間に効果がある。



「"鑑定"スキルによると、回復薬と帰還用アイテムと出てる。

 回復薬は……21本みたいだし、ひとり3本もらえるみたいだな。

 魔晶石も小さいとはいえ、換金すれば2万ベルツ分くらいはありそうだ」

「おぉー!

 10階層すごいね、ごしゅじん!」

「ボス討伐の報酬だし色々もらえてるみたいだが、回復量は微々たるものだから傷薬程度と考えたほうが良さそうだ。

 帰還用アイテムは持っていることで安全性は増すが、どちらもこのダンジョン内でしか効果が得られないものらしい。

 5階層ごとに戻るゲートは置かれているそうだが、逆に言えば2~4、5の道中、6~9階層と、不測の事態に陥る可能性も考えられる。

 持っているだけでも精神的な安心感に繋がるし、ありがたいアイテムだな」

「ふむ、確かにその通りに思える。

 使う機会は来ないほうがいいとも言えるが」

「そうだな。

 俺もそう思うよ」


 レヴィアの言うように、これはあくまでも緊急脱出用アイテムとしての役目が大きいし、そんな機会は来ないほうがいいに決まってる。


「じゃあさ、この石はトーヤに持ってもらおっか?」

「うんっ」

「そだね。

 アタシだと、ポケットから落ちちゃいそうだし」

「ブランシェもフラヴィもいっぱい動くから落ちちゃうかもね」

「持つのは構わないんだが、俺ばかりに判断を任せきりってのもどうかと思う。

 そういった意見はなるべくしてもらう方向で頼めるだろうか?」


 大人たちに視線を向けながら確認をする。

 優柔不断にも思われかねないが、俺ひとりに頼りきるのは危険だからな。


「わかりました。

 とはいえ、私はトーヤさんほどの判断力もありませんので、何か異変を感じたら報告するくらいしかできないと思いますが」

「我も理解したが、判断が曇ることもあるだろう。

 リージェと同じく警戒を続けながら進む程度になるが」

「私もですね。

 冒険者の知識として助言くらいはできると思いますが、気配を読むことはまだみなさんほど上手ではありません。

 危機的状況を判断するのは、トーヤさんが適任かと」


 ……なんとなくだが、そう返ってくるだろうなとは思ってたよ。


「ねね、トーヤ」

「なんだ?」

「これ、どうしよっか……」

「小粒の魔晶石か。

 マジックバッグを持たない一般的な冒険者は、一度戻って換金するんだろうな」

「でも結局お金がじゃらじゃらするんじゃない?」

「迷宮ギルドが預かってくれるみたいだし、そのまま貯金するんじゃないか?

 魔晶石を換金して、パーティーで分けた金額を預けているんだろうな。

 まだ持ち合わせは大丈夫だし、インベントリに入れておくよ」


 必要に応じて換金すればいいものだから収納しておけばいい。

 持ち歩く意味もないし、戦闘の妨げにもなる。


 いつかまとめてギルドに持っていこう。

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