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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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初めての食べ歩き

 もぐもぐと美味しそうに牛串を頬張る子供たちを連れて、俺はギルドを目指す。

 炭火とタレで仕上げた絶妙な芳しい香りに、すれ違う人も思わず意識を向けた。


 ここまで随分と頑張ってきたし、平原に出た頃はもう昼になっていた。

 さすがにその場で食事をするだけじゃなく、テーブルやらイスなんかをインベントリから出すのをためらった俺は、お腹を空かせた子供たちにもう少しだけ頑張ってもらった。


 しかし町に着いた途端、いつものように我慢の限界に達しそうな"はらぺこわんこ"の一声で、美味しそうな香りを放つ屋台の牛串を人数分購入することになった。

 これで少しはこの子の空腹も持つだろう。


 やはりこうして人の姿を取れるようになったブランシェにはとても都合がいいと思えるほど、この子は初めての食べ歩きを満喫しているようだ。

 ぶんぶんと左右に振る尻尾からも、その喜びがはっきりとわかる。

 何とも可愛らしい様子だが、手に持った5本の串が強い空腹感を物語っていた。


 この子にはこれまで随分と我慢をさせていたのかもしれない。

 それを申し訳なく思う反面、これからは好きに食べたいものを買ってあげられるなと、都合のいい解釈をする俺だった。



 まぁ、せっかく町に寄るんなら食べ歩きも楽しみながら旅をしたい。

 特に屋台で買ったものを食べ歩くのは、俺も嫌いじゃないからな。

 日本じゃ祭りでもなければこれほど多くの屋台なんてそうそう見かけないし、この世界の人達には馴染みの光景でも違った意味で楽しめるだろう。


 この世界での屋台は、大きく分けてふたつあるらしい。

 店舗の宣伝として用意されたものと、店を構えるまでの資金稼ぎだ。

 どちらも不味ければすぐに客が寄り付かなくなるだろうし、香りや調理法を見られるからほぼ想像通りの味が食べられる屋台での食事も悪くない。

 それに、綺麗な町を眺めながらの食べ歩きが不味いわけもないからな。


 ブランシェが食べたいと指をさした屋台だが、どうやら当たりの店みたいだ。

 しっかりと下処理もしているし、香辛料の使い方が絶妙で臭みも感じない。

 あふれる肉汁と甘辛いタレのバランスが良く、これだけ美味しければ他の料理にも色々と代用できそうだと考えながら、俺は食べ終えた串をインベントリに放り込んだ。


 この世界の住人全てではないと思うが、路上にゴミをポイ捨てするような馬鹿はこれまで見たことがない。

 そういったモラルがしっかりとあるからこそ、この美しい町がさらに魅力的に見えるんだろうな。


 とても広い幅の石畳を行き交う人の数は、これまで訪れたどの街とも違った。

 だが、これほど大きな町でも、人々の意識はかなり高いのかもしれないな。

 むしろこれが普通だと思っているからこそ、ゴミひとつ落ちていないんだろう。


 そんな考えを持つ人だけじゃないことも理解している。

 そういった意識の高い人たちが多いと、俺は思いたいのかもしれないな。

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