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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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みんなはどうしたい

 笑顔の絶えない彼らから別れてしばらくの時間が経ち、馬車の姿が見えなくなったころ、俺は子供たちに今後の進路について訊ねた。

 とはいっても、この子たちがどう答えるかは分かっていたが。


「ここから少し遠いみたいだが、みんなはどうしたい?」

「あたしは行きたい!

 お花も見たいけど、開けた場所らしいからのんびりできそうじゃない?」


 のんびりするなら町でって選択もあるんだが、否定できない俺がいる。

 それにこういった楽しみを冒険に巧く取り入れていくのが冒険者だしな。

 まだこの子達の強さに不安はあるが、いい経験になるのも間違いじゃない。


「ふらびいもいきたい。

 おはな、とってもきれいなの」


 この子は本当に花が好きなんだな。

 そこも年齢相応の女の子に思えるが、魔物なのを忘れる時が未だにある。

 まぁ、それはブランシェにもどこか似たような感覚はあるんだが……。


「わぅ! わぅわぅわぅ!」

「ブランシェも賛成みたいだな」

「わぅ!」


 俺が直接答えると、この子は瞳を輝かせながら嬉しさを前面に出してくれた。


 自分の意思や気持ちが伝わるのは、よほど嬉しいんだろうと思う。

 残念ながらこれは俺の勘みたいなものだから、実際にはしっかりとした言葉として認識できないことに最近では申し訳なさを強く感じる。

 何かこの子の想いを知ることのできるスキルはないものか……。


 思えばブランディーヌのような伝え方も、この子はできるようになるはず。

 しかし、その"いずれ"を待つのはあまりにも他力本願だし、この子の親代理としても示しがつかない。

 彼女が使っていたスキルと思われるものを俺自身が体得する必要があるんだろうが、一体どうすればいいのかまったく見当もついていない。


 闇属性魔法で何かそれっぽいものができないだろうか。


「満場一致だね!」

「そうみたいだな」


 俺の意見は聞かなくても分かっていたみたいだな。


 また表情に出ていたんだろうか。

 ……いや、あまり深く考えるのはよそう。


「西北西にある浅い森を3日ほど真西、だったな」

「浅い森ってことは、少しは視界も悪くないのかな?」

「それは行ってみないと分からないが、修練には悪くない場所だ。

 少し早い気もするが、慎重に進めば大きな問題にはならないはずだよ」


 盗賊みたいなのが悪意を向けてきたら、俺がぶった斬ればいいだけだしな。

 相手の態度をしっかりと見るつもりだが、魔法や弓矢で遠距離攻撃をしてきたら一瞬で叩き潰す必要がある。


 覚悟を決めるように強い意思を心に刻んでると、エルルは優しい笑顔で話した。

 それはどこか、気負いすぎにも思えた俺をなだめるような気配にも感じられる、とても不思議な印象を受けた。


「せっかくの旅なんだもん。

 町へ真っ直ぐ進むだけなんて、つまんないよね?」

「そうだな」


 エルルの言葉に自然と笑みがこぼれた。


 街道を外れることはより大きな危険に繋がるが、確かにこの子の言う通りそれだけではつまらないと俺も思えてしまう。

 目的のある旅とはいえ、だからこそ心にゆとりを持つべきなのかもしれないな。

 風任せってのとは少し違うと思うが、自由気ままに旅ができるのは理想か。



 周囲の警戒を続けながら、俺たちは街道から西北西に進路を変える。


 後方にも馬車は見えないし、できるなら見られる前に街道から離れた方がいい。

 浅いとはいっても、子連れの男が森に向かう姿は色々と問題になりかねないし、必死に止められる可能性も考えられる以上、早めに向かうべきだろうな。

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