巡り会えてる幸運に
翌日の昼、街道を通りかかった商人たちと食事を共にしていた。
護衛冒険者は3人。
いずれもこの先の町へ戻るところらしい。
30代前半の男性で構成されたチームは、熟練者を思わせる安定感があった。
「いやぁ、大人数で食べる食事はやっぱりいいものですなぁ」
「そうだな、俺たちにゃ華がないし、飯が美味く感じるぜ」
商人であるバルテルに続き、チームリーダーであるロータルは楽しげに答えた。
彼ら3人は元々ソロの冒険者が集まってチームを組んだのが始まりらしい。
一度戦闘をしただだけでそれぞれの個性に気づき、好みまでとても似通っていたのがはっきりと伝わったみたいで、それからは常に行動を共にしているんだと笑いながら話した。
馬が合う仲間を見つけるのは難しい。
それが命を預ける冒険者であればなおのことだ。
ほんの少しの歪みが命の危機に直結する職業なんだから、それも当然だが。
今回はこの先の町で店を構えるバルテルに、護衛と採集依頼を請け負った。
護衛と採集を同時に依頼されるのはわりと稀なことらしいが、バルテルとも馴染みのある彼ら3人は、持ちつ持たれつの友好的な関係を10年続けているようだ。
なんとも不思議な人たちに出逢えたと思うが、彼らの持つ人の良さからか、俺たちを食事に誘ってくれたのが経緯になる。
ロータルとマテーウス、ヘルゲの3人もこの先にあるブロスフェルトを拠点に活動する冒険者で、主に収集系の依頼を生業にしているらしい。
その帰り道で俺たちと出逢ったわけだな。
「俺たちはかなり相性がいいみたいでな、ずっと冒険を共にしてるんだ」
「そういや今年でチーム結成12年目だったか?
まぁ、これも腐れ縁ってやつだな!」
マテーウスもヘルゲも、ロータルと似たような笑みを浮かべながら話した。
どうやら相当気の合う仲間と出会えた3人みたいだな。
「でもいいのか?
俺たちもご馳走になって」
「いいっていいって、気にすんな。
飯は大勢で食った方が美味いし、何より楽しいからな!
子供を連れてんのを見た時は驚いたが、トーヤは強そうだし問題ないだろ!」
笑顔で言葉にするヘルゲの気遣いが素直に嬉しかった。
修練がひと段落したら、また乗合馬車での旅をするか。
そう思えてしまうような人たちと俺は会えている気がする。
きっとこれは、とても貴重な体験だ。
願っても経験できるようなものじゃない。
出会いは一期一会だとは、よく言ったもんだ。
いい人たちに巡り会えてる幸運に感謝するべきだな。
ちなみに食事もかなり力を入れているようだ。
獣肉をそのまま鍋にぶち込む作り方はしていないし、この料理ならブランシェも顔をしかめることはしないで食べてくれていた。
……まぁ、どこか寂しそうな瞳でちらちらと視線を向けているが。
俺の作った食事が日常になればいつかは飽きるかもしれないし、たまには別の人が作った食事も悪くないと思える。
楽しく冒険を続けるために美味い食事は必須だと彼らは断言した。
その考えは俺も強く共感できる、旅にはとても重要な要素のひとつだ。
たかが料理、されど料理。
美味いものを食べれば活力に繋がり、結果的にいい未来へ繋がる。
これは適当に考えてはいけない大切なことだと俺は思っていた。




