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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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寂しげな影を

 空高く、天まで伸びるかのような大樹。

 周囲は開け、その先には浅めの森が広がる。

 どこか神々しくも思える、不思議な場所だった。


 春だというのに、葉をひとつもつけていない大樹の枝に腰掛けるひとりの女性。

 美しい笑顔を見せながらも、どこか寂しげな影を感じさせた。

 その服装はこの辺りでは似つかわしくない、とてもシンプルな白のロングドレスをその身にまとっていた。


 整った顔立ちも、日に焼けたような肌も、華奢と思える体躯も。

 そのどれもがこんな場所にいることすら首を傾げてしまう。


 濃いめで茶色の長い髪をそよ風にさらさらと揺らめかせ、空へ手を伸ばしながら見上げる女性はその場から忽然と姿を消した。


 後に残ったのは恐ろしいほどの静寂。

 まるで女性など最初からいなかったようにも思える静けさが辺りを包んだ。

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