表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第八章 オ・ブ・デュ・デジール
236/700

信憑性は高まるが

 "月明かりが道を示す"

 古びた地図にはそう書いてあった。


 しかし、正確な場所を記したものは一切なく、枯れた泉と思われる窪んだ地面はあちこちに点在していた。


「もう少し分かりやすく書いてもらえると助かるんだが……」

「他に何か書かれてないの?」

「……いや、大まかな場所しか載ってないみたいだ」

「おつきさま、きれいだね」

「わぅ」


 すでに辺りは月明かりが平原を照らしていたが、岩場に変化は感じられない。

 これはやはり、見ている場所が違うということなんだろうか。


「あたしたちも別々に探してみよっか?」

「そうだな。

 周囲に気をつけて、何かあれば俺のそばに来るんだ。

 手がかりが見つかっても岩場にひとりで走って行かないように」

「うんっ」

「わふっ」

「よーし! みんなで探そー!」

「おーっ」

「わふ!」


 笑顔で探し始める子供たち。

 その楽しそうな様子から、あまり強くは言えなかった。


 魔物や敵対者に対し最大限の警戒をして周辺に気配を張り巡らせる。

 多少不安ではあるが、これだけ見通しが良ければ問題ないだろう。


 ふと、足元にある窪みに視線が移る。

 これだけぼこぼこと自然にできるものだとは思えない。

 ざっと見ても24箇所はへこみがあるようだ。


 恐らくこれも巧妙に細工が施されているんだろうな。

 そういった点を考えれば信憑性は高まるが……。


「……ぱーぱ、あれ、なんだろう?」

「何か見つけたの!?」


 エルルとブランシェが駆け寄り、俺もふたりに続く。

 大岩を指差すフラヴィの視線を辿ると、月明かりが妙な当たり方をしていた。


「……なんだろ、あれ。

 月明かりが照らしているのに、暗い部分がある?」

「……岩の角度の違いで陰になってるんだ。

 あの明るい部分を調べてみようか」

「うんっ」

「わふわふっ」


 ……だがそんなこと、現実的に可能なのか?

 月は見る時間だけじゃなく、方角や高度によっても変化する。

 それも刻一刻と姿を変えていくはずだ。


 "月明かりが道を示す"とは、何かの比喩的な表現だと思っていた。

 文字通りに月明かりを目印に使うなんて、ありえるんだろうか。

 現に少し場所を離れただけでその目印は見えなくなっている。


 地図に季節や時刻は書かれていない。

 本気で財宝を探させるつもりはないのか?

 それともお宝が欲しければ何日でも探してみろという挑戦なのか?


 疑念はいくらでも出てくる。

 そもそも集めたお宝を他人に渡そうとする意図も分からない。

 あれだけ巧妙に隠しているのなら、地図を残さなくても記憶すればいいだけ。

 わざわざ手の込んだことをする意味も理由も俺には理解できない。


 やはり罠か。

 いたずらに好奇心を煽って、残念でしたと嘲笑うのが目的か?

 それなら古代語で書かれた手がかりや、大量に作られた地図にも繋がる。

 十数億ベルツという金額も、餌としては申し分ない。


 ……楽しそうに前を歩く子供達の気持ちに、水を差さなければいいが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ