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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第八章 オ・ブ・デュ・デジール
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おおきくなるもん

 目が覚めると、左腕がやたらと重いことに気がついた。

 丸くなって眠るブランシェだが、随分とまた成長したみたいだな。


 あくびをしながら伸びる姿を見つつ、大きさを確認する。

 どうやら肩高50センチ、体長90センチまで急成長したようだ。

 しっかり確認したわけじゃないが体重も40キロはあるかもしれない。

 ここまでくると立派な大型犬だが、表情はいつもと同じように可愛らしい面持ちだった。


 その姿からは、とても狼だとは思えない。

 母親のブランディーヌは精悍な顔つきだったが、まったく似てないことに驚く。

 育つ環境が違うと表情も変わるって言うし、もしかしたらそんなところからきているんだろうか。

 それとも少しずつ変わっていくものなんだろうか。


「ブランシェ、また大きくなったね」

「あぁ、そうみたい、だな」

「わぅわぅ、わふぅわふわぅわふん」

「ぅぅ……ふらびいも、きっとおおきくなるもん……」


 フラヴィは対照的に成長が遅めだ。

 まぁ、人の姿で急に大きくなってもびっくりするし、これはこれでいいんだが。


 朝食を食べながら今日の予定を話していると、やはり例の場所に行ってみたい衝動に駆られているようだ。

 場所はそれほど遠くもないし、散歩のついでに行くのも悪くない。



 食事を終えて玄関に向かうと、ひとりのシスターがヘルミーネと話をしていた。

 先日の広場で神父コルヴィッツの補佐や被害者の誘導など、寸暇(すんか)を惜しんで動き続けてくれた女性だ。

 ……修道女特有の衣装で、人物の判断がつきづらいのは俺だけなんだろうか。


「おはようございます、トーヤ様」

「おはようございます、トーヤさん」

「おはようございます、ヘルミーネさん、レナーテさん。

 レナーテさんがここにいるのは少し驚きですが、何かありましたか?」

「先日の一件で、司祭様がトーヤさんにお逢いしたいと仰っているのです」

「それでわざわざ朝早くから迎えに来たんですね」

「よろしければ、教会までご同道していただければ恐縮です」

「わかりました、よろしくお願いします」

「いってらっしゃいませ」

「この後は外に少し用事があるので、野宿する可能性があります」

「かしこまりました」


 丁寧にお辞儀をする彼女に、少々頑張りすぎじゃないだろうかと思ってしまう。

 昨日の今日なんだから無理せずにいて欲しいもんだが、これを言ったところで笑顔のまま否定するんだろうな。


 綺麗に整備された石畳を歩いていると、ブランシェの大きさが際立って見えた。

 チョーカーが若干首の体毛に隠れつつあるが、締まってる様子はないみたいだ。

 大きさを調整できないアイテムは失敗だったかもしれないな。

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