おおきくなるもん
目が覚めると、左腕がやたらと重いことに気がついた。
丸くなって眠るブランシェだが、随分とまた成長したみたいだな。
あくびをしながら伸びる姿を見つつ、大きさを確認する。
どうやら肩高50センチ、体長90センチまで急成長したようだ。
しっかり確認したわけじゃないが体重も40キロはあるかもしれない。
ここまでくると立派な大型犬だが、表情はいつもと同じように可愛らしい面持ちだった。
その姿からは、とても狼だとは思えない。
母親のブランディーヌは精悍な顔つきだったが、まったく似てないことに驚く。
育つ環境が違うと表情も変わるって言うし、もしかしたらそんなところからきているんだろうか。
それとも少しずつ変わっていくものなんだろうか。
「ブランシェ、また大きくなったね」
「あぁ、そうみたい、だな」
「わぅわぅ、わふぅわふわぅわふん」
「ぅぅ……ふらびいも、きっとおおきくなるもん……」
フラヴィは対照的に成長が遅めだ。
まぁ、人の姿で急に大きくなってもびっくりするし、これはこれでいいんだが。
朝食を食べながら今日の予定を話していると、やはり例の場所に行ってみたい衝動に駆られているようだ。
場所はそれほど遠くもないし、散歩のついでに行くのも悪くない。
食事を終えて玄関に向かうと、ひとりのシスターがヘルミーネと話をしていた。
先日の広場で神父コルヴィッツの補佐や被害者の誘導など、寸暇を惜しんで動き続けてくれた女性だ。
……修道女特有の衣装で、人物の判断がつきづらいのは俺だけなんだろうか。
「おはようございます、トーヤ様」
「おはようございます、トーヤさん」
「おはようございます、ヘルミーネさん、レナーテさん。
レナーテさんがここにいるのは少し驚きですが、何かありましたか?」
「先日の一件で、司祭様がトーヤさんにお逢いしたいと仰っているのです」
「それでわざわざ朝早くから迎えに来たんですね」
「よろしければ、教会までご同道していただければ恐縮です」
「わかりました、よろしくお願いします」
「いってらっしゃいませ」
「この後は外に少し用事があるので、野宿する可能性があります」
「かしこまりました」
丁寧にお辞儀をする彼女に、少々頑張りすぎじゃないだろうかと思ってしまう。
昨日の今日なんだから無理せずにいて欲しいもんだが、これを言ったところで笑顔のまま否定するんだろうな。
綺麗に整備された石畳を歩いていると、ブランシェの大きさが際立って見えた。
チョーカーが若干首の体毛に隠れつつあるが、締まってる様子はないみたいだ。
大きさを調整できないアイテムは失敗だったかもしれないな。




