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優しい日々を
――その日、俺は夢を見た。
極々ありふれた、日常の夢を。
日本にいる家族と一緒にフラヴィとブランシェ、そしてエルルが楽しげに過ごすありふれた日常のひと時を。
不思議とあの樹の女性もいることに驚きと、妙な安らぎを俺は感じていた。
夢とは、睡眠中にいかにも現実であるかのようなイメージを体感したり、希望や願いからそういった幻想を見る現象、もしくは将来なりたいものや、こうありたいと願う未来のことだ。
今見ているものは、俺自身が体験した現実ではない。
だからこれは、俺がこうありたいと願う"未来"なんだろう。
俺は、こうしてみんなと、日本で過ごしたいと願っているんだろう。
穏やかに思える、未来の日常を。
希望が込められた、優しい日々を。
その安らぎの中を生きたいと望みながら、俺は大切な家族と共に未来の日々を、ほんの少しの間だけ静かにすごした。




