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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第七章 後悔をしないように
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潰す切欠に

 ……もしかして、逆なのか?


 狙った相手は一族の者だが、それほど深く闇と関わっていない?

 それなら護衛に魔法がかかった理由も、こんな場所を旅行している意味もわからなくはないが。


「……闇社会に通じているのは貴族家の中でも極々一部で、指輪の所持者はそれすらも知らされていない可能性がある、ということだろうか……」

「……ふむ、面白い推察だの。

 トーヤ殿はなぜそう思うのかの?」

「馬車に乗る者すべて無傷で指輪を手に入れているからです。

 トシュテンと名乗る男は、家族を失った強い復讐心から馬車を狙ったはず。

 だとしても、昏睡魔法ひとつで指輪を手に入れられたのもおかしな話。

 護衛の強さや一部の魔法を無効化する魔導具を所持していない点。

 さらには指輪を奪われたとギルドに報告、捜索依頼が受理されていないと思われることも考慮すれば、所持者が無知の可能性も出てくるかと。

 指輪が奪われたことを意図的に報告しないのだとしても、奪わせる理由がない。

 家紋が刻まれたものを量産して使っているとはとても思えないし、売ろうとした者を狙う必要すらない以上、暗殺ギルドとは関わりがないように思えます。

 そんな馬鹿と繋がりを持たせれば、裏社会の一斉摘発も視野に入るでしょう。

 下手をすれば今も盗まれたことにすら気がついていない、闇社会とは無縁のボンクラでは?」

「……ふむ、なるほどの。

 その推察をもとに行動するのは危険じゃが、筋が通っているように思えるの」

「仮に闇社会と繋がりがあったとしても、そういった無能なら暗殺ギルド壊滅も現実味を帯びてくるな」


 確かにそうだが、無能なやつに大切な指輪を持たせる理由がわからない。

 こういったものは一族だから持つのではなく、当主のみが所持するものだ。


 しかし、馬車に乗っている者はそうではないはず。

 もし貴族家の頂点に座している者であれば、トシュテンは指輪ではなく直接本人を狙うだろう。


「……親の権力を笠に着るボンクラが、当主の指輪を勝手に持ち出したのか……。

 ……指輪が奪われたことを公にはできない以上ギルドにも報告できず、秘密裏に探している……?」

「確かにそんなことが当主に知られたら、たとえ親族だろうと一大事どころじゃ済まないから、秘密裏に探そうとしているボンクラってのは有力な線に思えるが、さすがにそこまで無知で馬鹿な貴族はいないと思うぞ。

 ……いや、逆にそういったやつの方が遙かに厄介で面倒ではあるが……。

 馬鹿を追い詰めれば何をするかわからんからな」

「じゃが、ギルドとしては闇組織を壊滅できる可能性は魅力的じゃの。

 その者がどんな理由で指輪を持っていたのか、トシュテンと呼ばれた男に聞けば何かわかるかもしれんからの、少し期待を持ってしまうわい」


 もし裏社会そのものを変えられなかったとしても、暗殺ギルドなんて恐ろしい組織を潰す切欠になるかもしれない。

 それだけでも人々にとっては安寧を手に入れることになる。

 そうローベルトは神妙な顔で言葉を続けた。


 とはいえ、俺としてはそういったものとは無縁の旅をしたいんだが、どうにもそうはさせてくれない嫌な気配にでも導かれているんだろうか……。

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