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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第六章 僭称するもの
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それぞれの嗜好

 まずはいろんな種類の料理でこの子達の嗜好を探ってみた。

 色々なものを少しずつ食べさせ、それぞれ好みが違うことも徐々にわかってきたが、初めて食べる料理の味に瞳を大きく見開きながら輝かせ続けるこの子達に微笑ましく思っている。


「これも、とってもおいしい」

「はぐっはぐっはぐっ」


 満面の笑みで答えるフラヴィと、一心不乱にがっつくブランシェ。

 何とも対照的なふたりではあるが、料理の好みもやはり違うようだ。


 ブランシェは肉食。

 魚も嫌いじゃないが、肉には勝てないようだ。

 これも大体は食べさせる前からわかっていたことだったが、あれだけ美味しそうに食べてくれるなら作った甲斐があるな。


 狼の魔物だし当然なのかもしれないが、野菜は好まないようだ。

 食べないわけじゃないが、肉にはとても敵わないらしい。

 それを理解できるほどの豪快な食べっぷりをこの子は見せた。


 フラヴィは草食よりの魚料理を好む。

 もちろん肉も食べるし、ブランシェと同じように嫌いなものはない。

 どちらかといえば野菜の方が肉よりも好きだと笑顔で答えた。


 やはり言葉を交わせるのは、俺にとってもこの子にとってもいいことだな。


 中でもフラヴィは果物をかなり好むようだ。

 初めて食べた"ユクルの実"はこの子の好物になっていた。

 食べやすいサイズに切った果実をとても幸せそうにほおばる姿に頬が緩んだ。


 ひとつ気になることがあるとすれば、教えてもいない食器の使い方や食べ方をこの子が知っていたことか。


 これも恐らくは俺が取った軽率な行動からきているものだとは思うが、これに関して言えば決して悪いことではないし、旅先でしっかりと食器を使うことができるのはマナーだけじゃなく教育の賜物(たまもの)と思われるだろう。

 俺が他人からどう思われようとかまわないが、ふたりが礼儀正しく作法のできる子達だと人から判断されることは素直に嬉しい。


 ほんの少しだけ、親の気持ちがわかったような気がした。



 ふたりとも好き嫌いをしないで何でもよく食べてくれる。

 むしろブランシェは少々食べ過ぎてる傾向を感じるくらいだ。


 今もお腹を上にして地面へ横になるが、お腹がぽっこりと丸みを帯びていた。

 指で優しくつつくいたりなでたりすると嫌がる様子もなく、どこかくすぐったそうにわふわふと声を出して、しばらくするとそのまま眠ってしまう。


 目が覚めると、静かに眠っていたのが嘘のように走り回る。

 元気に、何よりとても楽しそうに駆けるこの子を見ていると、病気とは無縁のように過ごせるかもしれないと思えてならなかった。


 どうやら体力がフラヴィの3倍は軽くあるようで、これではさすがにこの子はついていけないなと思いながら、狼の魔物ってのは凄まじいもんだと感心した。

 その分フラヴィの3倍は食べているようにも思えるが、成長する子はよく食べるってことなのかもしれないと、あまり気にしないようにした。


 必要以上に食事を取ろうとはしてないみたいだし、それだけ体が食べ物を欲しているってことなんだろう。

 この子はどんどん大きくなる可能性も十分に考えられるな。

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