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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第五章 誰がために
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選択を誤れば

 そんな危機的状況で、自然とこの考えに行き着いた。


「……まさか、ゴーレムみたいな魔法生物が歩いてる世界じゃないだろうな」


 気配察知で見つからない敵が出現した場合、状況は非常に厄介なものとなる。

 気づかずに寝込みを襲われる可能性が出るということは、つまるところ一人旅がかなり危険なものになることを意味する。


 ここから感じ取れるものから察すると、もう戦いは終わったようにも思えるが、問題の存在は真っ直ぐこの場所からすぐ近くを目指している。


 動きに迷いはない。

 恐らくは湖畔に出ようとしているんだろう。


 このままだと確実に鉢合わせる。

 しかし今回の相手が素直に話を聞くような存在だとは限らない。

 何ものかに向けて、明確な敵対行動を取っていたと思える。


 これは思っていた以上に厄介なことになりそうだ。

 状況次第ではフェルザーの湖から離れることになりかねない。

 だがこうしている間にも、刻一刻と状況は悪い方へと変わっていく。


「…………しかたがない。

 かなり危険だが、確認しないといけないな……」

「きゅぅ……」


 この子も気配で察しているのだろう。

 回避できないと理解しているのか、どこか覚悟を決めているようにも見える。

 ……どちらかといえば、諦めといった方が近いだろうけど。


「……ごめんな、フラヴィ。

 すごく怖いと思うけど、この相手は確認した方がいい」

「……きゅぅ……」


 少し悩みながらも胸に抱きつく。

 よほど気配の相手が怖いのだろう。

 威圧とも言えるものに()されて震えていた。

 もうすでに何かを察しているのかもしれない。

 この子はそういったことに長けているのか?


 フラヴィの気持ちもよくわかる。

 これが危険な気配をまとっているのも間違いじゃない。


 だが……。


「まだ戦うと決まったわけじゃない。

 あいつの時もそうだったし、会話ができるかもしれないだろ?」

「きゅぅ……」


 少し落ち着いてはいるが、これは何かを警戒し続けている気配だ。

 それも、必要なら攻撃することもためらわないだろう。


 そんな気配をフラヴィも察しているんだよな?

 今回は俺も"大丈夫だ"と軽々しくは言えない。


 こいつは相当強い。

 切り札はあるが、安心など微塵もできない。


 第一、この子を抱えたまま使えるかもわからないんだ。

 その上、腰に差しているのはいまだ使い慣れない西洋剣。

 今更だが、木刀くらい作っておくべきだったかもしれない。


 これは、選択を誤れば最悪の結果に繋がる。


 それほどの強者を相手に、幼いこの子を抱えたまま戦えるのか?

 いざとなればフラヴィを逃がしたいところだが、それも意味はないだろうな。

 この子がひとりで離れるとも思えないし、何よりもフラヴィだけじゃこの世界では生きていけない。



 ……なら、俺が取る道はひとつだ。


 こちらを攻撃する敵ならためらわない。

 確実な一撃でケリをつけてやる――


「行こう、フラヴィ」

「……きゅぅ……」


 覇気のある俺の言葉に、とても弱々しくフラヴィは答えた。

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