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俺の従兄弟は俺です  作者: 氷瀬 豊
一章 ~一学期~
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紗弥だから

俺達が家を出た後、


「行ってきまーす」


と、恵が言った。


「恵が早起きなんて珍しいな」


「…………何言ってるの、輝弥くん? 私、いつもあれくらいの時間には起きるよ」


「どうしたんだ恵? 俺のこと今、輝弥くんって……」


「言った。後、私は恵じゃなくて紗弥だからね」


「?」


俺は全く状況がわからなかった。

状況を理解するために、もう一度恵を見る。

…………いつもと変わらない。

そしてさっきの言葉を思い出す。


紗弥だから?

…………紗弥だから!?


「お前、紗弥か!? …………でもなんで恵の中に?」


「あそこに呼び込んで言ったの。ホームルームまで体を私に貸してくれたら、いつもより長く寝ていられるよ、って言うと、すんなりOKしてくれた」


あそことは多分、あの白の世界だろう。

もしかして、こいつが恵の中にいたからあそこに行けなかったのか?

それで俺は納得した。


……それにしても恵のやつ、

そんなことで体を貸すなんて…………





そういえば、なんでこいつは外に出てきたんだ?


「なんでここに来たんだ?」


「……外の空気を吸いたかったの」


「それならこいつの体使えばいいじゃねーか 」


紗弥を指差して言う。


「それもそーなんだけどね…………恵ちゃんと話してみたかった」


「話してみたかった?」


……もしかして、妹いないのか?


「お前、何人家族なんだ?妹いないのか」


「うん。4人家族で、2つ上の兄が一人いる」


「そうなのか」


てっきり俺は恵と兄貴がいると思っていたが、違うらしい。

ということは、兄貴はそのままの兄貴ではないのだろうか。


「その兄貴ってどんな人なんだ?」


「一言で言うと、頼りになる人、かな 」


「そうか」


…………絶対兄貴とは別人だな。

兄貴は頼りになるが、まずシスコンというキーワードがでてくる。

だから別人だとわかる。

でもそれがよかったのかもしれない。

あれが兄貴で一人で相手してると、毎日疲れるだろうし。






俺達はいつもより5分遅く学校についた。



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