じゃ、じゃあさようなら
今日は紗弥のケータイを買うために、近くの家電量販店に来ていた。
俺と同じものを買う予定らしい。
「お姉ちゃんはどれ買うの?」
「輝と同じやつかな。ずっと使ってたし」
「でも色は黒しかないよ?」
「別にいいよ。黒好きだし」
「そうなんだ…………好きなものは変わってないの?」
「好きな食べ物は変わってると思うけど、好きなものは変わってないと思うよ」
こうして話している二人を見ていると、紗弥の方が
年上とは思えない。
同級生に見える。
二人が話していると、向こうから手を振りながら走ってくる人がいた。
「めぐちゃーん!」
よく見ると、恵の友達の…………そう、藤崎だ!
前に家にきたとき、一人だけ長身(といっても俺と同じくらい)だったので、印象的だった。
「千鶴!どうしてここに?」
「親についてきたの!…………ところでそちらは?」
「えーっと、おね……従姉妹の紗弥ちゃん」
「へぇ、紗弥ちゃんって言うんだ。今小学何年生かな?」
…………
沈黙。
誰もしゃべらない。
藤崎がしゃべらないのは、質問をしているから。
俺と恵は紗弥の様子をうかがうため。
紗弥は…………放心状態だった。
だが、最初に沈黙を破ったのは紗弥だった。
「あの私……小学生じゃなくて、中学三年です…………」
「えっ!」
藤崎はかなり驚いたようで、少し後退した。
「すいません!私ったら…………」
「いや、別にいいですよ…………気にしてないですから……」
……絶対気にしてるな。
後で慰めてやろう。
「じゃ、じゃあさようなら!」
逃げるように藤崎は走り去った。




