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24.悪魔……?

 街に来たので毎度の如く、フェネがギルド協会で依頼を受けてくれました。なお、カードをお持ちでない私はいつも協会の外で待機命令を出される。ワンちゃんの気持ちを極められるかもしれない。


 皆が出て来た……!


「フェネ、今度の依頼は?」


「ヴィヴィの大好きな魔物討伐。デッドリィスパイダーの駆除」


 私が好きなのは百合と乙女だけです。フェネはいつも解釈を間違えがち。


「ではパパッと終わらせましょう」


「……ちょっといい?」


 ラプちゃんが小さな腕をピンと立てて挙手。かわいい。抱きしめたい。はっ、私は何を。


「……わたしは討伐とか興味ないからここで物売ってる。元からそのつもりだったし」


「あら、だったらわたくしも残るべきかしら。ラプスさんにこちらでの商売の基本を教えてさしあげるべきでしょう」


「じゃあ私も残るべきか。路上で勝手に販売するのも制約があるから、法令違反していないか確認する必要がある」


 あれれ? なんで皆ラプちゃんの方に歩いていくのかな? そんなに幼女が好きなのかな? 私も好きだけど!


「というわけだからそっちはヴィヴィに任せる。どうせ一人で片付けられるでしょ」


「フェネー! あなたそれでも百合信仰信者ですか! そんなてぇてぇから離れるような教えを説いた覚えはありません!」


「入った覚えもない」


「それに第一私はギルドカードを発行していないので討伐して撮ることができません」


「だったら私の貸すよ。使い方なんて簡単だし」


 そういう問題じゃない……! ていうか何これ。誰も反論しないのは、私が嫌われてるってこと……? 嫌われ天使、堕天使……。


「そもそも私殺生禁止なんですよ? 忘れてません?」


「……なんかもう面倒くさいから一緒に行く」


 ラプちゃん……! さすがは百合信者です。物分かりがいいです。将来有望ですね。







 街を出て邪魔な蜘蛛共を瞬殺してやりました。これぞ百合パワー。岩の隙間に隠れようと、草原に身を隠そうと無駄なのです。


「やっぱり無駄足だった」


「フェネ、無駄ではありません。こうして共に同じ時間を過ごすことが百合において大切なのです」


「ただ往復するだけの人達の気持ちも考えて欲しい。というかモノコの指導はいいの?」


 むむ、確かに忘れていました。ですがモノコの実力を考えたら危険な魔物の相手はさせられませんし……。


「あっ、ここに小さな芋虫がいます。これならモノコでも倒せるのでは?」


「……ヴィヴィさん。わたくし、そこまで落ちぶれて見えますの」


 はわわ、お嬢様のプライドを傷つけてしまった……。


 おまけにラプちゃんに至っては目が完全に死んでる。蝙蝠の羽がいつも以上に垂れ下がってます。


「ラプちゃん、まさか人界の空気のせいで気分が悪いのですか?」


 首を振ってる。


「お腹痛いですか?」


 首を振る。


「ラプス。彼女は単純だ。適当におだてておけば、手駒に使える」


「……ヴィヴィお姉ちゃん、わたし早く戻って物売りたい」


 おっ、お姉ちゃんですと!?


「帰りましょう。いますぐに。あとフェネ、あんまり悪い事教えたらてぇてぇポイントマイナスにします」


「自分の胸に手を当ててみたら?」


「こういうポーズが好きです?」


「天界の義務教育終わってんな」


 そうですよー。秩序とか規律ばっかりで本当退屈で眠たくなる授業ばかりでした~。





 というわけで報告も無事終わりました。報酬も受け取ったみたいで出て来ました。


「今日も大量ですか」


「いつも通り。モノコ様、今回の金貨はいくつ所望で?」


「ヴィヴィさん以外何もしてませんの。配分の余地がありません」


「じゃあラプスに渡しておくよ。誰かさんが借金してるらしいし」


 というわけで報酬はラプちゃんのパンドラに食べられましたとさ~。


 それでようやく街の大通りに来て、フェネの許可も下りたところで、ラプちゃんのバザーが始まります。テーブルクロスに乗せられた小さな雑貨たち。すると早速お洒落なお婆様が足を止めました。


「これは売っているのかい?」


 ラプちゃんが頷く。


「その翼、魔界の子かい。あそこに行ってみたかったけど叶わなくてねぇ。でも魔界の物を見られるとは嬉しいよ。この湯呑みはいくらだい?」


「……銀貨一枚」


「このネックレスは?」


「……銀貨一枚。ここの全部同じ値段」


 まさかの銀貨均一商店だった!? こんな高そうなネックレスとこの湯吞みが同じ値段とは。そもそも湯吞みですら安い気が。


「ラプスさん……さすがにこれは銀貨一枚の価値ではありませんわ。このネックレスは金貨3枚相当ですし、この湯呑みも銀貨5枚……いえ6枚の価値はあるでしょう」


 さすがはモノコ。その辺の目利きがしっかりしてる。


「……価値はわたしが決める。そういう考えは嫌い。資本主義の悪魔め」


「あらあら。魔人に悪魔と呼ばれる日が来るなんて。ここは人界。向こうとはルールも価値も違います」


 なんかバチバチしてるー。そしたら私が間に入る前にフェネが動いてくれた。


「客のいる目の前で口論はしない。ラプス、前に私が言ったのは覚えてる?」


 確か安すぎるとそこで買う人が増えるから他の店が潰れるとかだったかな?


 ラプちゃんは少し俯いてから顔を上げた。


「……ごめんなさい。さっきのは間違えた。モノが言ったのが正しい値段」


「いいのよ。ここでの商売も慣れてないだろうからね。じゃあこの湯吞みをください」


 お婆様が銀貨を6枚渡してラプちゃんが受け取ってる。


「……ありがとう」


「大切に使わせてもらうわね」


「……大切に……。はい、本当にありがとう」


 ラプちゃんの目に光が宿った……? こんなにキラキラした目を見たの初めてみた。尊い。


 お婆様がお辞儀して行ったからラプちゃんがヒラヒラと手を振ってる。やっぱりおばあちゃんっ子なのかも。


「……モノ。さっきはごめん」


「貴方は人界が初めてですから仕方ないです」


「……違う。わたし、値段の大小だけで価値が決まるって思ってた。でも、あの人は値段があがっても嫌な顔しないで大切にするって言ってくれた。魔界だったら、絶対ありえなかった」


「ふふ、やはり貴方は人界の方が商売向いてるかもしれませんわね」


「……そうかも」


 そしてここにてぇてぇが。これは私にとっての最大の価値あるものです。祈りましょう。


「さぁラプちゃん。この調子でどんどん売りましょう!」


「……ヴィはうるさいからあっち行ってて」


 ガーン!


「実際すぐ面倒起こすしね。嫌なら魔法で花びらでもばら撒いてたら?」


 なんか私だけでラプちゃんと仲良くできてない気がするんですけど……。

 うぅ、仕方ないので演出の天使になります。悲しいです。やけくそです。


 しかも3人仲良さそうに談笑してる。幸せそうならオッケー!

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