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15.珍道中

 資金も集まったから、新たな百合救済に向けていざしゅっぱーつ。街を出て街道を歩いていたけど、隣にはフェネのみ。むむ?


 振り返ったらモノコがすっごい息を切らして付いてきてます。


「はぁはぁ。なんて過酷な旅でしょう。これが百合信仰の試練なのですね」


 魔物退治したりでバタバタして結構歩き通しだった気がする。フェネがずっと付いてきてくれてたから普通だと思ってた。


「ヴィヴィのペースは少し早いかもね。急に飛び出すし」


 えっ、それ初耳なんだけど!? それに百合を助けるには一刻争うしこれくらいできないと……。私は乙女を見れていなかったのだ……ぐはー。


「わたくしはお気にさらずに。冒険者を志した以上、この程度で根を上げるわけにはいきません」


 どう見ても息切れしてるし、気にするなと言う方が無理。


「フェネ休憩にしましょう」


「……私は別にいいけど」


 フェネの言いたいことは分かる。モノコって気を使われるのを嫌うイメージがある。報酬をきっちり分けるくらいだし。でも本人は苦い顔をしてるだけで反論はなし。それだけ辛いのかも。





 というわけで街道できゅーけー。座るところないから草原にダーイブ。きもちー。天界も緑が多かったからよく寝転がってたんだ~。なお、フェネは腕を組んで冷ややかに見てくるし、モノコも人目を気にしてか立ったまま。自分が子供に見えてきた……。


「お嬢様には徒歩の移動はきつかった?」


 フェネー、どうしてあなたはいつもいつも刺があるのー。乙女の地雷を好んで踏むなんて、まさかそういう性癖?


「少し疲れただけです。すぐに歩けるようになります」


「どうだか。お嬢様は屋敷に帰った方が身のためだと思うけどね。誰にだって向き不向きがある。あなたはあなたの特技を活かして生活すべき」


「仰る意味は分かります。けれど、出来るか出来ないかで人生が決まるくらいなら、死んだ方がマシね」


 そ、それは時期尚早なのでは!?


「……気持ちは分かる。決められた人生ほど、くだらないものはない」


「まぁ。フェネさんにもそういう経験が?」


「……少し、ね」


 するとお互い静かに笑ってる……? これはてぇてぇ、なんだけど、なんというかこの2人仲が悪いと思ったら意気投合するし関係性が全く読めない。百合の伝道師としてまだまだって痛感する。


「お喋りはこれくらいにしましょう。わたくしはもう大丈夫ですの」


 なんとなくそれがモノコのやせ我慢だっていうのが伝わる。


「この際ヴィヴィに乗せてもらったら?」


「私はいつでもウェルカムです」


 シュバっと屈んで待機。乙女のためなら馬車馬の如く走れる。というか乗せたい。


「さすがに雑草で汚れた方の背中には乗れません」


 寝転んだのがここで裏目に……。自重しておくべきだった、私の馬鹿ー。とりあえず翼をパタパタして雑草を落とそう。くっ、羽の間に挟まったのが中々落ちない……!


「……冒険者志望なのに汚れたくないってわがままがすぎると思うけど? この先、獣道や荒地なんていくらでも通る。そんな時でもあなたはそう言う?」


「フェネー。またそうやって毒を吐くー。自分だって香水つけて乙女心持ってる癖にー」


「そっ、それとこれは別でしょ」


「同じです。乙女心つまり尊い。それに女の子なら汚れたくないと思うのは普通です」


「まさかヴィヴィに普通を説かれるなんて……」


 ショック受けるのそこ!?


「2人は仲がよろしいですのね。付き合いが長いのかしら?」


「出会ってまだ3日目」


「えっ!?」


 驚くのも無理はない。なにせこの私は百合信仰の天使。私にかかれば初対面の乙女と仲良くなるなんてわけがない……と思う。


「これこそが百合信仰の力です」


「ただ暴走しすぎて目立ってるだけでしょ」


 暴走なんてしたっけ? 百合の救済はしていた記憶があるけど、暴れた記憶はない。うん。


「こんな感じで百合信仰旅団はゆるゆるのてぇてぇを目指していますので、モノコも気を使わなくていいのです。お互い思いやる心を持つ、それが尊いです」


「いつの間に旅団になったんだ……」


 今から。人生なんてそんなもの。


「思いやり……」


 できたらそこは、「尊い……」にしてして欲しかった。


「肝に銘じておきます」


 うーん、まだ固い気がするけどこればかりは育ちもあるだろうし、少しずつ慣れてもらうのが一番かな。


「ところでフェネ、この先ってどこに繋がってるです?」


「何も知らずに歩いていたのか……」


 だって街道があるってことはどこかに繋がってるって考えるよね? それがどこかは知らないだけなのだ~。


「この調子だと魔界だろうね」


「魔界……」


 確か魔人がいる国。人間、天使、獣人、そして魔人の4つの種族がこの世界にいる。その中でも魔人は特に孤高の存在に近い……と何かの本で見た。空から観測してもてぇてぇが少なかったからわりとノーマークだったけど、これはいい機会かもしれない。


「おーけーです。次の目的地は魔界です」


「本気か……」


「うっ、わたくし急に腹痛が……」


 どちらも青ざめてるような? モノコは分からなくもないけど、フェネまで?


「ヴィヴィ、さすがに魔界はちょっと……」


「尊いは場所を問わず」


「うん、聞いた。でもあそこは魔境だし、魔人はちょっと偏屈な人が多いというか……」


「なら問題ないです。いつも小言言う人に付き合ってるので」


「小言で済んだらどれほど楽か」


 いつもならやれやれって付き合ってくれるフェネが本気で躊躇ってる。ふぅむ?


「あ、あの。ヴィヴィさん、魔界へ赴かれるというのは本当ですの?」


「はい」


「あ、あのような無法地帯に足を踏み入れるなんて……いえ、これこそが冒険者の資質……?」


 百合信仰の資質です。モノコはそれを知るべき。


「フェネ、今更億すなんてらしくないです。私はもう大天使に喧嘩売ってるんですよ?」


「初めて聞いた」


 あり、そうだっけ?


「モノコ。百合とは和解であり、尊いです。魔人だろうと魔物だろうと、皆分かり合えるのです」


「分かり合える(女限定)」


 フェネは私をよく分かってます。


「ああもう。行けばいいのでしょう? 心身鍛える修行と思って、魔界でも天界でも行ってやりますわ!」


「おぉ、モノコがやる気満々。フェネもいいですね?」


「嫌な予感しかないけど」


 フェネの嫌な予感は大抵良い予感なので問題なし。


 さぁ魔界を目指してレッツゴー!

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