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14.令嬢、妄信す

 ふへへ。依頼が終わって報酬をもらったフェネの手には大きな皮袋。ワーラット討伐自体はそこまでだったみたいだけど、ユニコーンの角が高価に取引されたのだ。まさに百合千金。


 フェネがそれを懐にしまおうとした時、モノコがものすごく早く手を掴んだ。えっ、はや。


「ちょっと、フェネさん? 何をしてまして?」


「何って、旅のお金は私が管理してる」


 モノコも旅の一員になったから、このお金は皆の共同財布みたいなもの……って思ってたけどモノコは違うのかな。


「それに関して少し納得できません。今回の取り分を厳密に分けるべきですの」


「はぁ」


 フェネがいかにも面倒そうな顔して、ため息吐いてる。


「ワーラットの駆除の報酬は金貨10枚。これはヴィヴィさんの活躍で終わって、私とフェネはほぼ何もしていません。なので8枚、1枚、1枚で分けるべきです。問題はユニコーンの角の報酬の金貨100枚です。角を折ったヴィヴィさんの功績はありますけれど、その後の処置をしたわたくしのおかげで問題回避できたと考えます」


 モノコの言う通り、ユニコーンの角はきっちり回収したけど、その後医者に根回しして応急処置を施した。医者には元から折れてた……って言ってた気がするけど多分気のせい。


「よって金貨100枚の内訳はヴィヴィさんが40枚、わたくしが50枚、何もしていないフェネさんを10枚で分けるべきと考えます。正直フェネさんは10もないと思いますが、これが最低限の譲歩です。ですからわたくしに合計で金貨51枚渡してくださいな?」


 おぉ……なんともたくましいお嬢様。私はお金なんて気にしないから、こんなの考えたこともなかった。


「なんて言ってるけどヴィヴィどうする?」


「私は構いませんよ~。モノコの言い分は何も間違ってないので」


「……分かった」


 フェネは革袋から金貨をざっくり渡してる。モノコはそれを一枚一枚しっかり勘定してます。なんか生きてる世界が違う感がある。


「商会の人間だからお金に執着するんだね」


「あらあら。金銭関係はトラブルの元でしてよ、フェネさん? それとも獣人の方はお金管理が雑なのかしら。残りのお金もわたくしが管理してもよろしくてよ?」


「私欲に溺れた貴族がどうなったか、歴史で学ぶといい」


「うふふ、でしたら代わりに貧しい獣人の寓話でも聞かせてあげましょうか?」


 またバチバチしてるー。いい感じに仲良くなったと思ったらトラブル起こすのは、尊いの反発? ともかく間に入って仲裁。


「そこまでです。事情は分かりました。2人はお腹を空かせているんですね。なら、私の驕りでご飯を食べに行きましょう」


 空腹は理性を失う。これ、経験談。


「まぁ。ヴィヴィさんはお優しいですのね。わたくし泣きそうです」


「……ま、食事に行くって約束だったしね」


 なんとか空気が変わったようで安心。この2人は炎と風みたいで油断ができない。一刻も早くてぇてぇを教えて浄化しないと。





 とりあえず近くにあったレストランへと足を運びました。木造で薄暗い店内。ポニテのウェイトレスの乙女が笑顔で出迎えて……うっ、尊い……。


「何名様ですか?」


「百合1つ……あ、でもお姉さんも含めて2つでも……」


「3名で」


 フェネにぴしゃりと遮られたー。なんか最近私の扱いが雑になってない?


 店の奥に案内されて丸いテーブル席へと座る。微妙な時間だからか店には尊いが不足してる。野郎ばっか。目の前の尊いを見て癒されよう。


「あぁ? だからぁ、これ注文したやつと違うってぇ」


「ご注文の通りですが……」


「俺はこっちを頼んだんだ。あと、水に髪の毛入ってる。これどうしてくれんだ?」


 うっわ、聞くに絶えない雑音が耳に入ってくる。店で騒ぐのは元より、あんなに尊いポニテのお姉さんにそんな罵声言える? 私だったら来世の先まで後悔する。


 無言で野郎に近付いて銃を具現化させる。


「こんなにてぇてぇなお姉さんが聞き間違うはずないだろ。今から魔物の餌になるか、金を置いて店を出るか、選べ」


「だっ、誰だおまえ。治安ギルド呼ぶぞ!」


「OK。魔物の餌になりたいらしい。ゴブリンに食わせてやる」


「ひいぃぃぃぃ!」


 野郎は臆してお金を置いて逃げていった。ふん、反抗しない相手にしか強気になれない小物め。


 黙って席に戻ると周囲からパチパチと拍手が。野郎の拍手なんて嬉しくないけど。


「ヴィヴィ。荒事はやめて」


「銃は発砲してなーい」


「治安ギルド呼ばれてたら困るのはヴィヴィだったよ……相手があんなだったからよかったけど……」


 それでも乙女が困ってるなら無視なんて絶対できない。


「ヴィヴィさん。前々から思っていましたが、やはりあなたはとても素晴らしい方と存じ上げます」


「百合信仰に命賭けていますから」


「すばらしい……。あのような野蛮な者に対して迷いなく動く……。わたくし、とても感銘を受けております。ヴィヴィさんがいれば低俗な輩は全て消え去るでしょう」


 モノコもついに百合信仰の尊さに気付いたかな? これはよい傾向。


「えぇ? モノコ様、ヴィヴィを信じるの?」


 フェネはまだ百合信仰を疑っているの?


「品のない者が正しい道理などありません。同情の余地はないですの」


「……いつか痛い目見ても知らないよ」


「これでも目利きには自信がありますから、有益な人物かどうかは分かります」


 モノコがにっこり微笑む。フェネには口が悪くなる時はあるけど、ちゃんと話は聞いてるし相手を選んで話してるのかな。門番の時の対応もそうだけど、口が達者というか……。


 どちらも癖つよつよですが、百合信仰は乙女なら問わないので必ず改宗させてみせます!

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