第23話 ダンジョン配信、本格始動!
1週間後。
零那はいつもの山伏装束姿でそこにいた。
黒髪の長いポニーテール、凛々しい眉、法螺貝に錫杖。
虹子がじっと零那を見つめてきている。
「なによ」
「いやあ、お姉さま、今日も綺麗でかっこいいなって……。宝塚の男役より素敵。お姉さまが男の人だったら良かったのに」
「いやあそうお? えへへへ」
零那は嬉しくて顔がほころんでしまう。
最近、褒められるのがちょっと快感になってきた。
パチンコで当たり引いたときほどじゃないけど。
「あと羽衣ちゃんも! かーわいい! 山伏なのにこんなにかわいいなんて!」
虹子の言う通り、我が妹ながらかわいいわよね、と零那は思う。
そう、羽衣も今日は山伏装束なのだ。
身長150センチもないちっこい身体、白い法衣に錫杖。
法螺貝もきちんと持っている。
ただ、小柄な身体に法螺貝は大きく見えて、そのアンバランスさがさらに可愛さを増していた。
今日はふわふわの長い髪の毛を一本にまとめているが、それはそれで似合っていてすごく可愛らしい。
零那から見ても美少女だと思う。
さらに、頭の上には頭襟と呼ばれる黒くてちっちゃい帽子のようなものをつけている。
天狗とかがつけている、あれだ。
魔除けの効果がある帽子である。
羽衣の小さな頭にちょこんと乗っていて、それがまた奇跡的に似合っている。
真面目な顔をして立っている羽衣を見て、虹子ははしゃぎまくっている。
「きゃー! かわいい! かわいい! 抱きついちゃいたいくらいかわいい!」
わかる、と零那は思った。
羽衣は褒められまくって顔を赤くしている。
でも、表情はむすっとしたまま。
照れまくってどんな顔をしたらいいかわかってないのだ。
うーん、ほんとわが妹はかわいい。
ちなみに、虹子はというとこちらもいつもの格好。
防刃チョッキに魔導銃を腰に二丁ぶら下げている。
中くらいのリュックを背負い、首にはスマホをぶら下げている。
「じゃ、ドローンを飛ばすよ」
虹子がスマホを操作すると、地面に置いてあったトンボほどの大きさのドローンが宙に浮いた。
「一応何台か予備はあるけど、けっこう高いんだから間違って壊さないでよね」
「高いっていくら?」
零那が聞くと、虹子が答える。
「一台20万円くらいする。モンスターの攻撃とか勝手に避ける機能付きだし」
「けっこうするのね……」
パチンコで20万円稼ぐとすると大変だ、うっかり法術を命中させて壊さないよう気をつけよう。
「さあてじゃあみんなで出発しよう! みんな、イヤホンもつけたね? それで視聴者のコメントが倍速で聞こえるから! 配信盛り上げるために視聴者とコミュニケーションとっていくんだよ! じゃあ、スタートォ!」
虹子がスマホをタップすると、コメントが次々と音声として流れてくる。
〈お、始まった〉
〈こんにちレインボー!〉
〈待ってた〉
〈こんにちレインボー〉
〈こんにちレインボー!〉
「こんにちレインボー! 虹子だよー! さあ、今日は告知通り、今話題の山伏探索者、三日月零那さんとその妹さんの三日月羽衣ちゃんがゲストです! この三人でダンジョン配信やっていくよー!」
元気に挨拶する虹子。
イヤホンで倍速のコメントが次々に読み上げられる。
耳が痛いくらいだ。
あとで音量調節しよう。
っていうか、こんにちレインボーってなに。
〈すげえ、美人姉妹だ!〉
〈ほんとに山伏〉
〈法螺貝持ってるwww〉
〈超強いんでしょ?〉
〈特SSS級だもんな〉
〈ちょっと待って、妹ってまさか?〉
〈未成年だから匿名だったSSS級の修験者だったりする?〉
〈特SSS級とSSS級、姉妹だったのか!〉
〈超楽しみ!〉
〈零那ちゃん、最高にイケメン〉
〈妹ちゃんロリっ子だぁ! 探索大丈夫なの?〉
〈やばい、今からワクワクが止まらない!〉
こうして、三人のダンジョン配信が始まった。




