プロローグ的なお話
【田崎光の場合】
俺は前世を最悪な状況で終わらせた。
俺の前世は、大学を卒業するまでは順風満帆だった。わりと整った顔をしていたおかげで、もてたしスポーツも勉強も困らないくらいにはできた。しかし、その自分の持って生まれたものにあぐらをかいてしまったのが、きっと良くなかったのだと思う。
社会人になって、同じ会社の後輩を指導したら好かれてしまい、その後輩がストーカーになった挙句、おれは彼女とデート中にその後輩に刺されて殺されてしまった。
そんな恐怖体験と後悔と恨みを背負った俺が再び生を受けたのはいいが、なんで前世の記憶を持って生まれてしまったんだ!!!
俺は神というやつがいたら、殺してやりたいと思った。記憶さえなければ何にも怯えずに生活することができたのに!!!
女に殺された俺にとって、世の中で一番怖いものは「女」だ。
しかし、自分で言うのも何だが、今世ではよりにもよって女性から好かれる顔にプラスして余計な家柄まで付いてきた。
家柄は上をみれば大したことは無いのだが、日本でも有数の商社の社長の三男として生まれてしまったため、女からみれば美味しい獲物としてターゲットにされてしまう位置にいた。
そう、だから俺は幼稚園という集団生活がはじまった段階で、クラスの人気のある連中とは距離を置き、親しい友人は女子から嫌われるタイプの人間だけにした。前髪を長くのばし、あまり容姿がわからないように工夫して、メガネもかけた。もちろんメガネはメガネ男子好きが好きそうなものは選んでいない。
そんな努力の結果、俺が中学校を卒業する頃には、女子と一日も話さないのが普通という日常がデフォルトとなった。
そんな俺に言い寄ってくる女子はもういない。そう確信していた。俺の婚約者様と出会うまでは。
【藤宮椿の場合】
私は前世を最悪な状況で終わらせた。
私は前世はオタクとして過ごし、乙女ゲーム、漫画、アニメ、ネット小説、ネットゲームにハマる基本家の中で過ごす女子として生きていた。
そんな私は22歳という若さで死んだのには訳があった。
私は、前世タバコを吸っていたのだが、寝タバコというしてはいけない行為をし、おまけに一人酒でよっていたため、そのまま成仏することになった。
そうして、なぜか前世の記憶を持って生まれてきた。
しかも、前世とは異なり「美人」に分類される容姿を得ただけでなくご立派な家柄までついてきた。
私は前世では一度も神様なんて信じたこともないし、神なんてクソだ!なんて思っていたけど、本気で神様とやらに感謝した。
前世ではまったく経験しなくて後悔したことをすべてやると決意し、毎日勉強もスポーツも頑張った。そのおかげか、中学を卒業するころには学内で「藤宮椿」といえば知らない人はいなくらいまでの地位を確立し、優等生として先生からも同級生からも頼りにされる存在となった。
私の今世は前世と違って順風満帆だと確信していた、自分の婚約者に会うまでは。




