11.日向side
あぁ!早く帰りたい!
私は帰りのホームルームで担任の長い話を聞きながらイライラを募らせていた。
必死に編み続けたおかげで、マフラーはもう最後の仕上げをするだけで完成する。
早く帰って完成させてしまいたいのに!
担任を恨めしげに睨み付けたところで、ホームルームが終わった。
「よっしゃ帰ろー!」
勢いよく立ち上がると、葵に腕をつかまれた。
あーもう急いでるのに!
「葵?どしたの?」
「あ、えっと…私も一緒に帰っていい?」
ほんとは走って帰ろうと思っていたけど、そんな不安そうな顔をされたら仕方ない。
「うん。いいよ」
そう答えて、一緒に帰ることにした。
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「あのね、日向…」
「ん?」
帰り道で、葵が何かを言いかけて止める。
しばらく黙っていたけれど、やがて決心したように口を開いた。
「日向、クリスマスにマフラーを好きな人へ贈るって言ってたでしょ?」
「あぁ、あれね。うん!もう今日で完成だよ!」
私が誇らしげに言うと、葵は少し眉を下げて悲しそうな顔になる。
「そう…。よかったじゃない。渡すの頑張ってね」
「うん!」
そう言ったところで、私の家が見えてきて、葵と別れる。
さあマフラーを作らなきゃ!
「ただいまー!」
靴を脱ぎ捨てて、真っ直ぐ自分の部屋へ飛び込むと、マフラー作りに取りかかった。
「できたっ!」
最後の仕上げだけだったので、10分程度でマフラーは完成した。
「うふふ、お姉ちゃん喜んでくれるかな~♪」
完成したマフラーを抱きしめ、これを渡した時のお姉ちゃんの顔を想像する。
うわぁぁ~、楽しみ!
あ、そういえば最近マフラー作りばっかりで全然お姉ちゃんと話してなかったかも…
まあでもそれも今日までだし!
明日からはまたいーっぱいお話しないとね♪
「ふあぁ~、最近まともに寝てないからすっごい眠たいや…」
私はお姉ちゃんとのクリスマスを思い浮かべて幸せな気持ちで眠りにおちていった。
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うぅ~ん…
なんだか温かい。お母さんにだっこされてるみたいな感覚…
でもそんな心地よさとは対照的な悲しそうな声が聞こえてきた。
なんだろう…聞き覚えのある声…
……さよなら?
誰に言ってるのかな?すごく悲しそう…
でもしばらくするとその声は止んで
あれ、夢だったのかな…?
私は再び深い眠りについた。




