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帝国の人質として連れて来られた王女は、敵国の皇太子によって聖女の力に目覚める  作者: 清川和泉
第3部 幸せのために

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第50話 力強い鼓動

ご覧いただき、ありがとうございます。

更新が数日開きまして申し訳ありません!

「……実は、わたくしの実家のバーラ侯爵家は古来から魔法使いを多く輩出している家門なのです。残念ながら、わたくしにはほとんど魔法の才能は受け継がれませんでしたが」


 リリーは意を決したように続ける。


「先ほどの白光は、我が家に伝わる文献に書かれていた創造の力と特徴が一致いたしましたし、その力を使用できるのは女性のみと記述がありましたので、クレア様がお使いにになられたと推測をいたしました」


 リリーの話によると、理由は不明だが魔法の光は大方「青色」であるようだ。


「創造の力とは……どのような魔法なのでしょうか」


 と言っても、その名称から安易に想像することはできた。


「今、この場所で申し上げるのはいささか不安なのですが」

「ならば、完全に人払いをしよう」


 アーサーが軽く右手を上げると同時に何処からか黒の装束を身につけた、以前アーサーにクロと呼ばれた男性が現れた。


「はっ」

「……先ほどの光の件だが、他言無用にするように」

「御意」


 クロは表情を変えずに、ただ淡々とアーサーの指示を待っているようだ。


「それから、私の指示があるまで人払いを頼む」

「御意」


 なんの感情も含まれない淡々とした口調で告げると、次の瞬間にはクロの姿は消えていた。


「確かな史実が載っている文献はほとんど残っていないのですが、創造の力は正確にいうと魔法ではありません」

「魔法では、ない?」

「はい」


 リリーは何故か少し憂いを秘めた瞳で、クレアに視線を向けた。


「魔法は体内の魔力を利用して使うもの。ですが創造の力は……」


 どうやら、この先の言葉を紡ぐのをリリーは躊躇しているようだ。


「どのような内容でも構わない。打ち明けて欲しい」

「はい。承知いたしました」


 リリーはクレアを真っ直ぐに見つめた。


「創造の力は、『負の因子』を利用して発動するものと聞き及んでおります」


 聞き慣れない言葉に、思わず固まってしまう。


「負の因子?」

「はい」


 リリーの話によると、負の因子とはつまり、人が日常的に感じた様々な負の出来事が心に蓄積されたものだそうだ。


「負の出来事……」


 負の出来事とは、「人から暴言を浴びせられる、満足な衣食住を提供してされない、人として尊重されない、虐げられる」等であると、リリーは遠慮がちに説明をした。

 やけに具体的なのは、もしかしたら彼女に意図があってのことなのかもしれない。


「それって、まさに私がこれまで受けてきたことですね……」


 クレアは呟くと、涙が込み上げてくる。

 同時に、これまでクレアが理不尽な目に遭わされていたのは、その負の因子とやらを溜め込ませるためなのではと思い至る。


 瞬間、クレアの心中に脱力感と怒りが渦巻いた。


「まさか、私がこれまで虐げられてきたのは……このためだったの……」


 おそらく皇帝は全てを知っていたのだ。クレアに理不尽な想いを抱かせて長年負の因子を溜め込ませ創造の力を使わせる。

 それこそが皇帝の狙いだったのではと思った。


「人のことを、一体なんだと……」


 脱力して座り込みそうになるが、気が付いたらアーサーにそっと手首を掴まれてその胸に抱きしめられていた。


「クレア、申し訳ない」

「アーサー様……」


 アーサーの胸元に埋もれる形となり、彼の力強い鼓動を感じた。

 その鼓動の音は心地が良く、抱きしめられてることによりアーサーの体温が全身に伝わってくる。


 絶望感で支配されそうになった心に、温かい温もりが広がってくるようだった。


「君は全く悪くない。悪いのは俺の父である皇帝とブラウ帝国、皇太子である俺だ」

「アーサ様は悪くありません! ……悪いのは……」


 皇帝だと思うと言いたかったが、アーサーの父親である皇帝のことをそのように言うのは憚られた。


「俺は皇太子だ。この国の問題は俺の問題でもある。それに……」


 その先の言葉は、あえてなのか紡がなかった。


 そしてアーサーからそっと離れると、アーサーの背後に立つリリーと視線が合った。彼女はとてもにこやかな笑顔を浮かべており、たちまちクレアの顔は熱を帯びたのだった。


(人前で、しかもリリーさんの前で恥ずかしい……)


 穴があったら入りたいと思ったが、先ほどまで絶望に打ちひしがれていたのに今は不思議と心は軽かった。


 そしてリリーは、クレアの着衣の乱れを直すと改めてクレアと向き直った。


「クレア様。実は、わたくしがクレア様の力に気がついたのは白い光を見たからだけではないのです」

「そうなのですか?」

「はい。実は、最近になり実家から創造の力について書かれた書物を取り寄せ調べたのですが、それにはきっかけがあったのです」

「きっかけ……」


 クレアは考えを巡らせてみると、ふと以前イザベラが紛失したという「占星術の本」が思い当たった。

 あの時は気に留めなかったが、思えばあの本を捜索している時に、白光が出現する時と同じ胸が熱くなる感覚を抱いたのだ。


「もしかして、イザベラ様の本は私が創造したのでしょうか」


 リリーは小さく頷いて返事を返した。


「件の本をイザベラ様に返した後、焼却炉係の者に改めて聞いたところ本はすでに燃やされてしまっていたそうなのです」

「……そうだったのですね」


 やはりと確信に変わった。


「ですから、幼い頃にお祖母様から聞いた魔法のような力が関与しているのではと思い至ったのです」

「そういうことだったのですね……」


 リリーによると、創造の力はクレアが「イメージしたもの」がそのまま現れるという至ってシンプルなものである。


「ただ、物品だけではなく、たとえば目に見えないもの、自然現象等も変化させることができるそうです」


 要はクレアが強くイメージしたものやことが出現するのが、創造の力だそうだ。


「それは……とても凄いと思う反面、怖いです……」


 クレアの身体は小刻みに震えてきた。すかさずアーサーがクレアの左手を握り心地の良い体温を感じる。


「大丈夫だ」

「アーサー様……」


 二人が見つめ合い始めたからかリリーは「それでは失礼いたします」と声を掛けてから中庭から去って行った。


「俺が君を守る」


 その言葉に思わずクレアはアーサーの愛することはないという言葉を思い出した。

 だが同時に、「愛する資格を得たい」と真摯にクレアに言ってくれたことも思い出す。


「ありがとうございます、アーサー様」


 二人はしばらく見つめ合っていたのだった。

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