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Letters of lovers

 冬




 "拝啓 フレイ・デューター様


 おはようございます。先週末にパドアールに到着しました。ばたばたしているうちに、あっという間に一週間が過ぎました。手紙が遅くなってごめんなさい。


 パドアール地方会計府の人は皆さん親切です。女性職員が来るとは思わなかったのか、最初はびっくりされました。

 とりあえずは、私の仕事の割り振り及び部下になる人の仕事の把握からです。部下といっても三人しかいないので、何とか回せるとは思います。


 こちらは冬でも南方の海が近いせいか、そこまで寒くはありません。王都はいかがですか? それでは簡単ですがこれで。


 追伸 次回からは普通にフレイさんと書くと思います。ちょっと畏まってしまいました。


 マレット・ウォルタース"




 "拝啓 マレット・ウォルタース様


 おはようございます。フレイです。

 えーと、会計士試験勉強の為の専門授業を受けはじめました。エルグレイ塾長は「君なら大丈夫じゃろ」と言ってくれますが、実質あと11ヶ月なんですよね。まあ宣言した以上は、頑張ります。


 住居とかは既に手配済みと聞いていたので特には心配していないですけど、食事がちょっと違うと聞きました。ちゃんと食べられますか? 何ならこっちから必要な物送ります。


 王都は寒いですよ。昨日雪降りました。リーズ姉にどやされて、俺も雪かきをしてました。まだ手が冷たいっす。


 それでは簡単ですがまた。


 フレイ・デューター"




******



 some letters were gone



******


 春




 "マレットさんへ


 先程外を見ると、渡り鳥が王都の城壁から旅立っていきました。あれは季節の変わり目の合図ということらしく、そろそろ春がやってくるようです。


 会計士試験勉強難しいっす! 今は税法をやっているのですが、場合によっての税率の違いがパターン多過ぎで、頭の中がしっちゃかめっちゃかです。他の塾生もヒーヒー言っています。


 ああ、そうだ。

 うちの執事のロクフォート覚えてます? あいつ、この前デートしてきましたよ。奥さん亡くしてからずっと恋愛に背を向けてきたのに。「とにかく一歩前進だ、喜ばしい」とブライアン義兄(にい)なんか泣きそうになってました。まじで涙もろすぎですよ、あの人......


 確か俺も知ってる背の高い花屋の子です、はい。


 あ、ぼちぼち私塾行かなきゃ。ではまた。


 フレイ・デューター"



 "フレイさんへ。


 マレットです。お手紙ありがとうございます。こちらは一足先に春になりました。この前、職場の人とお花見をしてきましたよ。楽しかったですが、フレイさんが隣にいたらもっと楽しかっただろうなと思うとちょっと残念でした。


 そのお花見の席で恋愛のことが話題になり、フレイさんのこと少し話しました。皆さん「遠距離恋愛かあ」と唸っていました。やっぱり難しいのでしょうか? でも私、フレイさんのお手紙読む度にあなたが側にいるような感じになるんです。


 だから大丈夫だと思います。


 ロクフォートさん、奥さん亡くされていたのですか。かっこいい執事さんですよね。いい恋になりますように。


 税率の部分は繰り返し暗記するしかないんですよね。あんまり助言出来なくてごめんなさい。地道な努力を続ければ、きっと報われますよ。


 また手紙書きますね。


 マレット・ウォルタース"



******



 some letters were gone



******


 夏



 "フレイさんへ



 パドアールからお送りします、マレットです(笑)

 すっかり夏です。南方のせいかこちらの気温は高いですが、海からの潮風があるので湿度はそれほどでもありません。建物も通期性が良いからか、高温になりづらいようです。王都の方が暑かったですね。


 去年のこの時期は確か"勇者様に学ぶ簿記!"の最終講義をしていた記憶があります。あれから一年が経過して、ずいぶん私も私の周りの環境も変わりました。勿論いい方に、です。


 離れていてもこうして好きな人がいて、自分がやりたいお仕事に恵まれているというのはいいことだな、と休日の午後にこのお手紙を書きながら考えています。


 王都ではそろそろ神舞祭の準備が始まっている頃ですね。去年はフレイさんと見ることが出来て、とても楽しかったです。あのことを黙っていたので少し心苦しかったですけど。


 私が王都に戻るまで約半年ですね。後半戦なのかしら? それでは。


 マレット・ウォルタース"



 "マレットさんへ


 こんにちは。パドアールの方が涼しいんですか? まじ羨ましいですよ。


 最近イルエッタさんに誘われて会計府の籠球チームに混ぜてもらっています。週一くらいでやってるんですけど、段々専属選手みたいに扱われてきて「フレイ君、あなたがいるなら優勝も夢じゃないわ! 今度の秋の大会に向けて合宿やるから来て頂戴!」と言われ、慌てて断りました。


 でもハイベルク家まで勧誘にきちゃったんですよ、あの人。結局リーズ姉が対応して、すごい言い合いになりました――俺はリーズ姉の陰で隠れてました(泣)

 怖いっす、あの人(泣)


 勉強の方はまあまあです。論文試験用の問題解いたりし始めました。実践的な勉強に入った段階かな、ここからどれだけ上げていけるかですね。


 あ、神舞祭にソフィーとその友人達と行ってきます。何だかあんなことあったから気まずいですが友人には変わりないし、ぶん殴られたままお別れは多分良くないので。勿論、変な気なんかないですよ!?


 あと半年か。後半戦も頑張りましょうね。


 フレイ・デューター"



******



 some letters were gone



******


 秋



 "マレットさんへ


 おはようございます。そちらも秋ですよね。意外にマレットさん食いしん坊だから、食べ過ぎたりしてませんかと心配です。いや、嘘、冗談ですよ!


 この前ブライアン義兄(にい)にハイベルク家の養子にならないかと聞かれました。デューター家より家格は上だし、いろいろ助けてやれると。ありがたい申し出ですが、丁重にお断りしました。俺、自分の力で歩いて行きたいので。


 最近の勉強は過去問を解いたりしています。試験傾向を掴むというのかな。それで解らない箇所をテキスト開いて復習です。何となくいけそうな気はしていますが、やるしかないですよね。結果が全てだし。


 一年なんてあっという間だ、と自分に言い聞かせていましたが、やっぱり会えないと寂しいですね。でももうちょっとなので、我慢します。合格証書持って、笑顔でマレットさんに会えるように。


 待っています。


 フレイ・デューター"



 "フレイさんへ



 ほんとに長いですよね、会えない時間というのは。こちらの生活もずいぶん馴染みましたが、馴染んだ途端にさようならかと思うとちょっと不思議です。でも舞い落ちる木の葉を数えていると、それが王都へ戻る時間の流れのように見える時があって、やっぱり楽しみです。


 こちらは秋になり果物が美味しいです。油断すると太りそうなので気をつけています(汗)再会した時に幻滅されたくないし......


 試験、ほんとに追い込み時期ですよね。体を壊さないようにして、出来る限り詰め込んで下さいね? 直前まで努力出来た人が勝つ試験ですから。


 フレイさんが頑張っている事を手紙で読む度に、私はパドアールで何が出来たのかなと思うこともあります。あなたに会える時に胸を張って会える自分でありたいな。


 あと三ヶ月、お互い頑張りましょう。風邪引かないで下さいね。


 それでは。


 マレット・ウォルタース"



******


 1 year has gone since Maret left for Padirl...



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