116話 問答と仲裁
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「こ、ここはどこだ?確か、いきなり羊の群れが出てきて襲われてもうおう終わりだって思ったのに」
「生きてたのか!良かった!」
「いったい何が起きたんだ?」
「夢でも見てたのか俺...」
悪魔公の仔羊のスキルで仲間を呼ばれて絶体絶命だった訓練参加者達は現在、ヘクターの座標転移のスキルで王の間へと帰還していた。
「皆様方、先程の羊は夢でもなんでもありません。私が転移させなければ全員死んでいたでしょう」
混乱していた場にヘクターのよく通る声が響き、参加者は静まり、話の続きを聞く。
「私の予想では羊相手に傷一つもつけられず敗北すると思っていましたが、存外人類もやるものですね。倒してはないですが、あそこまで追い詰めるなんて」
上から目線なのは置いとくとして、ヘクターは本当にこの事態を予想してはいなかったが、転移の準備だけはしていたので、今回は大事にはならなかった。
「今からまた仔羊の群れ庭への転移の準備を始めますが、最後急に群れが襲ってきたのは何故だと思いますか?」
ヘクターの問いかけに参加者達はザワつくが、皆「何でだ?」「知るかよ」と言った言葉が飛び交っていた。
そんな中、スイエルが手を挙げる。
「そこの天使族の方どうぞ」
「一定のダメージまで与えてしまうと羊が仲間を呼ぶ声をあげるのではないか?」
あの場でスイエルは一人だけ空中で他の羊が戦闘に乱入しないように状況を見て戦っていた。羊が倒れ込み、涙を流して鳴いた途端に、それまで全く仲間の羊を助けようとしなかった羊達が一斉に動き出したのを見て、推察したのだ。
「正解です。状況判断力が素晴らしいですね。あの羊単体では大した事はありませんが、最後の仲間を呼ぶスキルだけは厄介です。じゃあどうしますか?」
授業を教える先生みたいな態度で質問を投げかけるヘクター。それに答えたのはアザミだった。
「一定のダメージを満たすギリギリで最高火力を叩き込む」
「正解です。では戦い方もわかりますね。次からは失敗しないようにお願いしますね」
「ちょっと待ちなさいよ」
ヘクターがこれで羊対策は終わりだといった雰囲気を察してティターニアが待ったをかける。
「あんた達あの羊が仲間呼ぶ事知ってたんなら最初から言いなさいよね。そしたら、無駄に疲弊せずに済んだじゃないの」
ヘクターはもう一度仔羊の群れ庭へと転移させると言ったが、周りの参加者達はさっきの戦闘で大きな怪我は負っていないものの、明らかに疲弊していた。
「初めから答えを言ってどうなるんですか?魔族と戦う時、私はこんなスキルがあるから注意してくださいね。なんて言うバカはいませんよ。疲弊してもう戦えませんか?それならどうぞ退出してください。そんな根性なしを鍛えろとアリステラ様からは言われてませんので」
「ヘクター少し言い過ぎよ。控えなさい」
ヘクターの挑発ともとれる態度にシャーリーがなだめる。
「な、なんですって!黙ってこっちが大人しく従ってたら良い気になって!」
ティターニアは顔を真っ赤にして魔力を練り始める。他の参加者も武器を構え、いつでもいけるように準備をする。
「静まらんか!!!」
一触即発の空気の中、デノンハウザーが割って入る。
「ティターニア、王のお主がそのような態度をとってどうする。あの時、誓い合った想いは偽りか? 他の参加者達も落ち着かんか。 魔族の方よ、言いたい事はわかるがあまりこちらを挑発するような態度は控えて欲しい。儂らはまだ良好な関係とは言いにくいのだから」
「う、悪かったわよ。あの約束は嘘じゃないわ。カッとなってごめんなさい」
魔力を練るのをやめてティターニアはシュンとなって謝り、他の参加者達も武器を収める。
「ヘクター貴方も謝りなさい。アリステラ様から任された仕事をダメにしようとしたのよ」
ヘクターは何を謝ることがあるんですかといった表情をしていたが、アリステラの名前を出されると下を向いて考え出す。
「申し訳ありません。少し態度がきつかったですね。反省します」
共闘することを了承したとはいえ、以前人類と魔族の仲は良くないが、少しづつでも理解し合えればとデノンハウザーは目の前の光景を見ながら願った。
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