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有能でイケメンクズな夫は今日も浮気に忙しい〜あら旦那様、もうお戻りですか?〜  作者: 秘翠 ミツキ


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九十九話〜家族団欒〜



 翌日ーー

 今日は遂に結婚式が執り行われる。

 場所はグラニエ国が誇るベアティチュード大聖堂で、その規模は招待客や警備の兵士等を合わせると千人にも及ぶ。

 招待客はブロンダン家の親族や古くから懇意にしている家、ユーリウスの知人や友人、仕事関係者、後は皇帝や后妃、アンセイムといった王族達も参列をする。

 更に招待客にはブロンダン家と懇意にしている他国の貴族も招待しているという。

 

 一方でエレノラの招待客といえば父や弟、元家庭教師として働いていたコルネイユ侯爵と夫人、クロエと彼女の夫くらいだ。その差が凄過ぎる。

 始めに挙式の規模を聞いた時、暫く何を言われたのか理解が追い付かず固まってしまった。そして改めて住む世界が違う事を実感してしまった。



 一通り支度が終わったエレノラは、椅子に座り用意されていたコップの水で喉を潤す。

 まだ挙式前だというのに準備だけで疲れを感じている。


 ふと以前クロエから言われた「ブロンダン家は君が思っている以上に権力があるという事だ」あの言葉を思い出し、今更ながらに緊張してきた。


 この数ヶ月、結婚式を挙げるにあたり立ち居振る舞いなどのマナーを学んだ。

 講師からは細かな箇所は指摘されたものの「よく出来ています」と褒めて貰えた。

 更に挙式後は、本格的に将来の公爵夫人としての教育やマナーを受ける予定だ。

 ユーリウスに自分の気持ちを打ち明けた時から覚悟はしていたが、少し不安も感じている。


(本当に私に務まるかしら……)


 珍しく弱気の自分に一人苦笑した。



「若奥様、フェーベル伯爵様とそのご子息様方が無事ご到着されたとの事です」


 身支度を整え控え室で待機していると、先程お使いを頼んだボニーが戻って来た。


「またミル様も無事ボルネ夫人へお引き渡し完了致しました」


「ありがとう、ボニー」


 まだ薄暗い中から一緒に身支度を始めたミルは、丁寧にブラッシングされた後に首元にチョーネクタイを付けた。そしてボニーにミルを託しクロエに預けに行って貰った。本当は一緒にいたいが、流石に肩にモモンガを乗せた花嫁はまずいだろうと思い参列するクロエにお願いをしておいた。




「エレノラ、久しぶりだね」


「お父様」


 暫くして控え室を父や弟達が訪ねて来た。

 相変わらず手紙は頻繁にやり取りをしていたが、こうして顔を合わせるのは約一年振りとなる。


「姉様! ご無事ですか⁉︎」


 父の後ろから現れた直ぐ下の弟オーブリーは、エレノラの姿を見ると一目散に駆け寄って抱き付いてきた。


「オーブリー、久しぶりね。元気そうで良かったわ。リュシアンもこっちにいらっしゃい」


 少し遅れて部屋に入ってきた二番目の弟リュシアンにも声を掛けると、リュシアンもまたエレノラに抱き付いた。

 二人共に少し見ない間に大きくなったと嬉しくなる。


「姉様、ドレス綺麗ですね」


「リュシアン! 綺麗なのはドレスじゃなくて姉様だろう⁉︎ 今直ぐ訂正しろ!」


「え、でも、こんなキラキラしたドレス見た事ないからやっぱり綺麗だよ」


「ドレスなんて姉様の美しさの足元にも及ばない」


「兄様は好きじゃないの? 僕はこのドレス好きだよ」


(ふふ、この微妙に噛み合ってない感じ、懐かしいわ)


 挙式前で柄にもなく緊張していたエレノラだったが、久々の家族との再会で気持ちが大分和らいだ。


「それよりお父様、道中は大丈夫でしたか?」


 予定では遅くても昨日には到着している筈だった。それがかなりギリギリの到着である事からして、何かトラブルでもあったのかもと心配になる。


「はは、実は道中荷下ろしが大変そうなご老人がいてねーー」


 話を聞き終わり苦笑する。

 実に父らしい理由だった。

 要するに、道中困っている人達に次々に遭遇し助けていたらギリギリになってしまったという事だ。


「若奥様、そろそろお時間です」


 暫し家族団欒の時間を過ごしていたが、どうやら挙式が始まるようだ。

 エレノラは気を引き締め、もう一度姿見で自分の姿を確認すると控え室を出た。




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