表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しき修羅の愛  作者: 日向満家
本編
26/61

26話

      二十六


      夫


 大体、昔も今も、私は沙月に対して何をしてやれただろうか。昔は何もできなかった。

では、今は? 確かに彼女の母親の治療費は出している。ただそれは金を出しているだけだ。現状として沙月に対して私は、その役割を負っているだけに過ぎない。

 どうすれば沙月のためになる行動ができるだろうか。どうすれば沙月の支えになれるだろう。どうすれば沙月を愛していると言えるのだろうか。私に出来ることはなんなのだろう。これほどまでに、私は何もできない人間だっただろうか。

 考えるしかない。残り時間はどんどん少なくなっている。



      妻


 小走りでいつもの駐車場へ向かう。運転席の窓を軽く叩くと、丸刈りの男が軽くこちらを一瞥し、親指で後部座席の方を指した。車に乗ることなく話せるのがベストだと思っていたので、開きそうもない窓を見ながら、苛立ちが募った。

 しぶしぶ後部座席の扉を開けると、そこにはいつも通り大柄な方の男がいた。二人とも服装が前と同じだ。少しにおいがしてきそうな気もする。沙月は車内には入らないまま、毅然として言い放った。

「知ってるでしょ、今は夫がいるの。あなたたちには付き合えない」

「だから今までは様子を見てたんだけどな。もうそろそろ我慢できなくなってきた。安い給料で何日も働きづめだ。俺達だってご褒美が欲しいのさ。大体お前だってそんなこと言いながらもここに来たってことは、求めてたんじゃないのか? 俺達をさ」

 丸刈りの男が運転席から身を乗り出しながら、そう言う。その顔には嫌な薄ら笑いが浮かんでいた。

「違うわよ。直接話さないと何するか分からないじゃない。あなたたちは」

 沙月は憤慨した声でそう言った。

「とにかく、しばらく無理だから。今もすぐ戻らないといけないし」

「分かった、分かった。俺達だってあんたの旦那とトラブルになったら東城さんに叱られちまう」

 そう聞いた沙月はほっとして、相手の気が変わらない内に車の扉を急いで閉めようとした。しかし、スライドドアを勢いよく閉めている途中に、後部座席にいた方の男の大きな手が、それを止めた。そのまま 沙月の手をガッと掴む。

「ちょっと。何でよ。今日は帰してくれるんじゃないの」

 沙月の声が思わず上ずる。

「すぐに済む」

 沙月はそのまま車の中に引きずり込まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ