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第106話 チャーハン完成、そして王女様の登場!

「これをお皿に盛ればいいんですか?」

「あっ、そうなんですけど……小さなボウルのような深い形状の器はないですか?」

「ボウル……少々お待ちください」


 料理長は調理器具の入れられた棚から、お椀サイズのボウルを出してくれた。


「ちょっとしたドレッシングを作ったり、刻んだ食材を入れたりするものですが……まさかこれに入れて食べるんですか?」

「いえ、そういうわけではないです。チャーハンをこの小さいボウルに詰めて、お皿にひっくり返すと――ほら!」

「おおお、なんと美しい……! 素晴らしいアイデアですね!」


 僕はその場にいた人たちにチャーハンを振る舞い、再度同じ要領で足りない分のチャーハンを作っていく。

 ごはんを入れてからの炒め作業のみ、ほかの料理人に代わってもらった。


「うまい……! 食材の味と油が程よくごはんに絡んで、無限に食べられそうだ」

「食材を細かく刻みすぎでは?と思いましたが、なるほど、たしかにこれはこのサイズ感だからこそですね……」

「ガツンとくる香ばしさがあるのに、焦げているわけでもパサついてるわけでもない。これがあの醤油という調味料の力なんでしょうか。不思議です」


 第一弾のチャーハンを食べ始めた料理人たちは、みな驚き感嘆の声を上げている。

 もちろん、料理長も。


 ――思ったより人数が増えたし、おじさんとフィーユ様、メイドさんたちの分はあとで作って持っていこう。


 第2弾のチャーハンを配り終え、僕も食べようとスプーンを手にしたそのとき。


「カタリアナ殿下、お待ちくださいっ! そのような場所に行かれては――」


 パタパタと走る音とともに、メイドさんと思われる女性の声が聞こえてきて。

 そして突然、キッチンのドアが勢いよく開かれた。


「この素晴らしい匂い! ねえ、もうフェリクが来ているのでしょう!?」


 カタリアナ殿下と呼ばれたその少女は、キラキラと目を輝かせキッチンを見回す。

 彼女が持つ美しい水色の髪と瞳、驚くほどに整った美しい容姿は、ほかとは明らかに違う空気を放っていた。


 ――こ、これがカタリアナ王女……。


 カタリアナ王女のあまりに唐突な行動に、キッチンは静まり返り、その場にいた料理人たちはみなぽかんと我を忘れていまっている。

 ――もちろん、僕もその1人だったが。

 その静寂は、王女様によって破られた。


「あなたがフェリクね! とてもいい匂いがするわ。私を差し置いてずるいじゃない。いったい何を作っているの?」

「――え、ええと。チャーハンという、ごはんを炒めた料理で……」

「……これね? ねえ、私も食べてみたいわ」


 えええええええええええええ。


「殿下は先ほどお食事なさったばかりではないですか!」

「いいじゃない少しくらい。だってこれ、とってもおいしそうよ?」

「そ、そういう問題では――」


 どうやらカタリアナ王女は、とても自由なお方らしかった。

 一緒にやってきたメイドさんが必死で戻るよう説得を試みてみるが、まるで響いていない。


「で、でもこんな、王女様に召し上がっていただくほどの料理では……」

「わたくしはこういうのがいいのよ! フィーユにもらった、手づかみで頬張るあのおこげサンド、あれは最高の料理だわ」


 ああ、王様王妃様ごめんなさい……僕の料理のせいで王女様が庶民の味を覚えてしまいました……。

 というかフィーユ様も上級貴族の娘なのに!

 いや、おこげサンドはうまいけども!!!


「えっと……あの、差し上げても?」

「……申し訳ありませんが、殿下が口にできる料理は、デリが管理している専用キッチンで作ったもののみとなっております」


 ……ですよねー。


「こんなにおいしそうな料理が目の前にあるのに、食べられないなんて。そんなのあんまりだわ……」


 カタリアナ王女は、じわっと涙をにじませる。

 が、一応自分の立場を理解しているのか、無理に食べようとはしなかった。


 ――はあ。まったくしょうがないな。


「では、今日の夕食をチャーハンにするのはいかがでしょう?」

「本当!? ねえ、それならいいでしょう!?」

「……そうですね。元々何かは作ってもらうつもりでしたし、それならば」

「約束よ、フェリク。楽しみにしてるわね!」


 カタリアナ王女はそう言うと、作業台に置かれたチャーハンを気にしながらも、メイドさんを連れてその場を去った。

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