王都へ2
ドアが開いて馬車の中から降りてきた人を見てびっくりした。金髪碧眼のとても可愛いらしいお人形さんみたいな7~8歳くらいの美少年と美少女だった。
(うわぁ、あんな美少年と美少女見たことないよ! 可愛いー!!)
「僕達を助けて下さってありがとうございます」
「ご無事で何よりで御座います」
少し離れた所にいると、騎士さんと美少年が話しているのが聞こえた。馬車が壊されているからどうするって話をしている。ライチの再生……は口外禁止! って言われているしな。私の錬金スキルで直そうかな。
「あの~、お話中すみません。良ければ馬車を直しましょうか?」
「はっ? 直す?!」
騎士さんにとっても驚かれた。まぁ、確かに私が直せるとは思わないよね。美少年にも驚かれたのでにっこりと答えておいた。
「えっ? 直せるんですか?」
「はい、錬金スキルで直せると思いますよ」
「申し訳ないですが、頼んでも良いですか?」
「はい、ではこちらで座って待っていて下さいね」
座る所がないのも申し訳ないので、私は飛ぶこたつを出してそこに座って貰う事にする。
「これは一体何ですか?」
「これはこうやって座れるんですよ。下がふわふわなので痛くもないですよ」
「わぁ、凄い! 本当にふわふわだ!」
「本当ですわ。ふわふわで気持ちがいいですわ!」
『ハル、手伝うぴよ?』
「ううん、大丈夫だよ。錬金スキルで直しちゃうよ~。ライチありがとうね」
『わかったぴよ』
馬車を走れるようにしっかりと思い浮かべる。
「錬金!」
馬車が光り、光が収まると馬車が直っていた。しかしここで問題があった。馬がハイオークにやられていた事に気が付いた。馬車直してもダメだったよ……。とりあえず、さっき美少年と話していた騎士さんと話をしてみる。
「えーっと……馬車直してもダメでしたね」
「そ、そうですね……すっかり気が動転して忘れてました。申し訳ありません」
「それで、この後どうするのですか?」
「あの方達を歩かせる訳にもいかないし……どうするかまだ考えている所です」
「ん~、助けがいるようでしたらどうにかしますけど?」
「えっ?! 何か出来るのですか?!」
「さっき出したこのこたつは空を飛べるのですよ~」
「はっ?」
「飛ぶトレントの木材で作っているので飛ぶ事が出来るのですよ~」
騎士さん達全員に驚かれた……。いやいや、空飛べるでしょ?
『ハル、それは普通の人はびっくりしちゃうくまよ~』
「えっ?! そうなの??」
『そうぱんよ。普通は飛べないぱん』
「だ、だって飛ぶトレントの木材だよ?!」
『それでも普通は飛ばないぴょん』
「えぇぇぇ!?」
まさか普通は飛ばないだなんて知らなかった。みんな教えてよぅ、全然知らなかったよ!?
『ハル、試しに飛ばしてみたら良いとおもうぴよ』
「あっ、ライチ良い事言う! よし、試そう」
あっ、でもあの美少年と美少女は高貴な方達っぽいんだよね。一緒に座ったらだめじゃない?! 一応聞いてからにしよう。
「えっと、試しに浮かせてみますか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! だったら一度降りて頂く!」
(ですよねー! 危ない事あったら大変ですからね)
騎士さんが一度降りて貰うように頼んでいる。確かにこうやってみると、飛ぶとは思わないよね。テーブルだし、床はふわふわの毛皮だし。
「お待たせして申し訳ない。降りて頂いたので試して貰っても?」
「はい、じゃぁ少し浮かせますね」
ひぃろ達もしっかり乗っている。浮かせるだけだから乗らなくてもいいのだけどね。座って少し浮かせると、全員とっても驚いた顔をしている。普通はあんなにびっくりするのね。
降ろすと、美少年と美少女がとても興奮している。乗りたそうにしているけれど、騎士さんの許可がないと乗せてあげられないのだよね。王都までだったら飛んで行けば結構すぐに行けそうなのだけど、これからどうするのかなぁ。
騎士の方達が相談している。飛ぶこたつを広くしたら全員乗れるんじゃないかな。と思っていたら美少年から声を掛けられた。
「あの、僕も乗ってもいいでしょうか?」
「私も乗ってみたいです!」
「えっと、それは護衛の騎士さん達に聞いて頂いた方が良いかと思いますよ。今は浮かせていないので、座って頂いて大丈夫ですよ」
そういうと席を立った。ひぃろ達も小さくなって私の両肩、フード、頭に乗って貰った。
「あの、あなた達が僕達を助けてくれたんですよね? ありがとうございました。ぼくはカイル、こっちは妹のルリアです」
「私はハルと言います。こっちは獣魔のひぃろ、ベリー、タルト、ライチです」
「とっても可愛いですわ!」
「ハルさんは僕達とそんなに年が変わらなそうなのに旅をしているのですか?」
「えぇ。冒険者をしながら世界を見て回っているんです」
「凄いですね! あっ、あの、ギルドカードを見せて頂いても良いですか?」
「凄いですわ!」
「良いですよ」
ギルドカードを見せてあげると、ゴールドのギルドカードにとても驚いていた。
「わぁ、凄いっ! A級の冒険者なのですか?!」
「えぇ、先日A級に上がったのですよ~」
「とっても綺麗なカードですね」
カイル様とルリア様とお話をしていると、騎士の方達もちょっと驚いた顔をしている。
「えっと、私の名前はセイと言います。お名前を伺っても? それと私にもギルドカードを見せて頂いても良いですか?」
「私はハルです。こっちは獣魔のひぃろ、ベリー、タルト、ライチです。ギルドカードはこれです」
私のギルドカードを良く確認したセイさんは、少しほっとしたような顔をしていた。そういえば、自分証明の為にも先に見せれば良かったんだと今更ながら思う。
「ハルさん、出来たら王都までカイル様とルリア様を乗せて貰えませんか?」
「私達も王都へ行く所だったので構いませんよ。飛ぶこたつを広くして全員乗せて飛びましょうか?」
「とぶこたつ?」
「あっ、すみません。そのテーブルの事です」
「広くなんて出来るのですか?」
「飛ぶトレントの木材がまだあるので出来ますよ。安全に関しては風魔法で風除けしているので大丈夫だと思いますが。心配だったらセイさん達が先に乗って試してみますか?」
「ハルさんを疑っているわけではないのだが、お願いしても良いだろうか」
もう一つ飛ぶこたつを作る事にしようかな。騎士さんが5人いるから今の飛ぶこたつの倍の広さは欲しいかな。その間にお茶して待っていて貰っても良いのだけど、食べ物出して平気かなぁ。
「あの、もう1つ作るので少しお時間を頂きたいんです。みなさんにお茶とお菓子をお出ししても大丈夫ですか?」
「お気遣いありがとうございます……」
セイさんが悩んでいると、カイル様とルリア様のお腹がくぅ~と可愛く鳴いた。恥ずかしそうにしているカイル様とルリア様がとってもとっても可愛い!
コンロを出して、お茶を入れる。毒見に私が飲んで、騎士の方にも少し飲んでもらう。それからカイル様とルリア様にお出しした。お菓子も同じように毒見をしてから出した。
「ハルさん、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
きちんとお礼を言えるカイル様とルリア様は良い子だね。そして可愛いっ! 良い子だと色々してあげたくなっちゃうね。
「美味しいっ!」
「こんな美味しいお菓子初めてですわ!」
「ふふ、気に入って頂けて良かったです」
そう言うと、飛ぶこたつを作る為に少し離れて素材を出していく。飛ぶトレントの木材、毛皮、綿の実、風の魔石を出して飛ぶこたつの大きいバージョンで、風の膜も張るように思い浮かべる。
「錬金!」
材料が光り、光が収まると飛ぶこたつ(大)が出来ていた。まずは試してみようと振り返ると、全員驚いた顔をしていた。なんでだろう?
「ちょっと試運転してみますね」
「だったら私も乗せて貰っても良いだろうか? 確認をしたい」
「はい、大丈夫ですよ。乗ってください」
セイさんと他の騎士さんも1人乗せてから座って準備をして、ゆっくりと浮かばせる。
「おぉぉ!」
動かすのに木の上まで浮かせてから少し飛ばしてみる。
「どうですか?」
「全然風も来ないし、安全だな。これは素晴らしい! これはどうやって飛ばしているんだ?」
「私が魔法で操作していますよ。このテーブルがあるので、お茶しながら移動が出来るんです」
「そ、そうなのか。それは素晴らしいな」
少し飛ばして問題がないのを確認してからゆっくりと下に下りる。飛ぶこたつから降りると、騎士の方達で話し合っている。
「ハルさん、凄いですね! ぼくも乗ってみたいです!」
「私も乗ってみたいですわ!」
「今騎士さん達が話し合っていますから、それを確認して大丈夫だったら乗っても良いですよ」
しかし、そんな事をやっている間に薄暗くなってきた。これは野営どうするんだろう?? 暗い中飛ぶのは危険な気がするし、困ったなぁ。
「ハルさん、全員を乗せて王都まで飛んで貰って良いだろうか?」
「はい、良いですよ。でも暗くなってきたので野営しますか?」
「そこなんだよな……暗くなって飛ぶのはやっぱり難しいよな」
「そうですね、安全に飛ばしますが何かあったら困りますし……」
そういう事で野営をする事になった。しかし、野営をする準備がないみたいなので私のテントを貸す事にして、私はご飯の準備をしようかな。広い範囲にシールドを張って安全を確保してからテントを設置する。
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明日は王都へ着きます。
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