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覚悟を決めて投げた高速シンカーBは不知火のバットに擦りもせずにキャッチャーミットに収まった。
「ストライク!バッターアウト!」
バットを振り抜いた状態の不知火は何が起こったのか分からずに憮然とした表情でベンチに帰っていった。周りで見ていた他のメンバーはよくわかったのだろう今のシンカーに対してざわついている。正直に言ってめちゃくちゃ心地が良い。
三重高のメンバーにも印象付けることができただろう。そして、こいつを餌に他のシンカーで討ち取る布石になる。不知火刃、こいつとはこれから何回もやるだろう。今回は1.1の引き分けだが次からはこんなに甘くいかないだろう。気を引き締めていかないと。
不知火刃side
高校生になって初めての対外試合。一打席目はホームランに打ち取った。特に特徴もない少し早いだけの左腕投手だと思っていた。しかし、二打席目、何なのだあれは、打席に立っていた俺はいきなりボールが消えたようにしか思えなかった。
ベンチに戻って周りにシンカーを投げられたと言われるまで球種さえ理解できなかった。三重のスラッガーの一人になると思い、実際結果を出してきた俺は自惚れていたのかもしれない。まだまだ俺の知らないすごい投手が三重にもいた。これだから野球は面白い。俺の後にいる打者も討ち取られ守備につく準備を始める。
主人公サイド
不知火の後のバッターはシンカーが頭に残っていたのだろう、バットを思い切って振り切れていない。俺と良二はそれを利用してさっさと三振に打ち取りベンチに帰る。
「ナイスボール、不知火に勝ったな!」
「だな!あそこまでうまくいくと気持ちいいな。」
「とりあえず一戦目はこの4回までで降板だ。残りの試合も投げてもらわなきゃいけないし休んでてくれ。おい!綾人!零の勝利を無駄にするなよ!」
「任せとけ!今日は7回までのあと3回を抑えるだけだし、なんとかなるさ!」
俺はみんなの頼もしい言葉を聞きながらキャプテンに手伝ってもらいアイシングをする。
「零のシンカーがうまく決まったな。スタミナもまだまだありそうだし、これからが楽しみだな。」
「ありがとうございますキャプテン。初めて試合で投げましたけど楽しくて楽しくてしょうがないです。」
本当にそうだ。一人で練習している時よりも何倍も熱くなれるし楽しい。マウンドに立ちたい思いが自分の中で強く大きくなっているのがわかる。
「それはよかった。次の試合も楽しみにしている」




