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 新学期が始まり、夏休み前に受けた模試の結果が発表された。高偏差値の生徒のみが貼り出され、若葉ちゃん含め偏差値稼ぎ要員の特待生達の中に、例のふたりと同志当て馬はしっかりと食い込んでいた。凄いな~。

 若葉ちゃんは模試の結果を嬉しそうに見ていた。良かったね。

 みなさんのおかげで、瑞鸞の体面が保てております。感謝、感謝。



 そしてその後にやってくるのが次期生徒会長、副会長選挙だ。

 これでとうとう友柄先輩は引退してしまうと思うと、また寂しさがこみあげてきた。

 選挙といっても立候補者も多くないし、大体は前生徒会役員の生徒が当選するので、それほど白熱するものでもない。

 今回もほぼ下馬評通りの結果になった。

 新しい生徒会長は友柄先輩ほどのカリスマ性はないけれど、そこそこのリーダーシップを発揮しそうな2年生の先輩で、副会長はメガネをかけた真面目そうな先輩だった。普通、こういう場合は副会長ポジションは腹黒メガネと決まっているのだけど、今度の副会長はメガネはかけていても裏のないただの実直メガネさんのようだ。

 そして同志当て馬も1学期に友柄先輩に言われていた通り、1年生から生徒会入りすることが決まった。




「では体育祭の競技参加者を決めまーす」


 新生徒会発足後の一番最初の大きなイベントは体育祭だ。新役員達は慌ただしくて大変だろうと思うけど、すでに前期のノウハウを持っている人達が多いから平気なのかな。

 私も、高等科での体育祭は初めてだから少しドキドキする。ボロを出さないようにしないと。でもこのクラスは体育祭に熱い生徒がいないからミスをしても大丈夫そうだ。


「じゃあ次、選抜リレー」


 佐富君の進行で、参加者を自薦他薦で次々に決めていく。全員必ず最低でも一種目は出ないといけないので、楽な競技は立候補者が多い。私は玉入れの常連だ。


「じゃあ次は騎馬戦」


 男子達の顔が一瞬強張った。しかし、伝説の騎馬戦皇帝はすでに引退宣言をしている。今回は中等科の時よりは全然楽なはずだ。


「皇帝が出ないなら…」


 男子達の中でも運動神経のいい子達がざわざわと盛り上がり始めた。誰が上に乗るか、どのクラスの誰が強敵かなどを話し合っている。


「水崎は絶対今年も出てくるだろうな」

「あいつは強いぞ。去年、最後まで残って皇帝とやり合ったからな」

「佐富、お前も出ろよ!」

「うーん、どうしようかなぁ」


 男子達は楽しげにやいのやいの言っている。この学院の男子は本当に騎馬戦が好きだ。

 なんとか我がクラスの騎馬戦精鋭部隊を選び、次の種目に移った。


「次は全学年の選抜生徒によって行われるダンスですわね。今年の演目はカドリールです」


 私が種目を読み上げると、何人かの生徒が私の顔をバッと見て慌てて逸らした。え、なに?

 ダンスは運動神経の悪い生徒の救済競技でもあるので、立候補する生徒達がすぐに出た。でもカドリールってどんどんテンポが速くなるけど大丈夫なのかな?


「あの…吉祥院さんはダンスに出ないんですか?」


 ひとりの男子が遠慮がちに手を挙げた。


「ええ。私はほかの競技に出ますから」

「…そうですか」


 その男子は残念そうな顔をした。え、なんでそんな残念そうな顔をしてるの?あれ?ほかにも同じような顔をしている男子がいる。どうして?

 ……もしかして、私と踊りたかったとか?

 まぁもちろん、お嬢様のたしなみとして私もカドリールは一応踊れますけど?

 シャルウィダンス?されたら考えないこともありませんが?


 ……今度こそ私のモテ期が来るのかもしれない。




 私は二人三脚にも出るので、その練習に参加することになった。相手は生駒さんだ。


「私、麗華様にご迷惑かけないように頑張ります!」

「こちらこそよろしくね」


 掛け声をかけながら校庭をとっとこ走る。速さより転ばないことが重要なので息を合わせるために何度も練習をすることが大事だ。

 校庭ではほかに、体育祭の花形競技であるリレーなどの練習も行われている。

 運動神経に自信のある蔓花さんが走っていた。さすが速い。外部生にも俊足がいるようで、競うように走っている。いいなぁ、足の速い人達って。

 そこへ女の子達のきゃあっ!という黄色い声がして、見るとトラックを走る鏑木と円城がいた。速い!

 鏑木は今回、騎馬戦に出場しないかわりにリレーと短距離走に懸けているらしい。物凄い速さだ。しかしゴール直前で円城に抜かされてしまった。


「秀介!もう一本!」

「え~っ」

「行くぞ!次!」


 円城は休む暇もなく付き合わされている。体育祭バカが親友だと大変だな。

 私は休憩も終わり、また二人三脚の練習を再開した。




 体育祭の練習ですっかり足が筋肉痛だ。

 そんな話をしながら友達のみなさんと廊下を歩いていたら、アホウドリの鳥男君こと、桂木少年がやってきた。


「あっ!暴力女!」

「あら、アホウドリの鳥男君。中等科生が高等科になんのご用?」

「お前には関係ないっ!」

「あ、そう」

「麗華様になんて口の利き方を!」


 相変わらず生意気な奴だ。


「麗華様、アホウドリというのは?」

「この子のあだ名ですの。私がつけました」

「あらぴったりですわ」


 私の取り巻きがほほほと笑った。

 すると鳥男君が顔を真っ赤にして


「うるさいっ!お前なんか、お前なんかネジネジあたまのくせにっ!」

「ネッ、ネジネジ?!」


 あ…、目眩が。


「麗華様!」

「麗華様!お気を確かに!」


 ネジネジ…。私のロココがネジネジあたま…。


「なんて失礼な!麗華様の髪はそこまでねじれていないわ!」

「そうよ!このアホウドリめ!」

「…よろしくてよ、みなさん」


 面と向かってこの髪型に暴言を吐かれたのは、たぶん初めてなので、動揺してしまった。


「所詮はおバカさんの言うことですもの。私は全然気にしませんわ」

「さすが麗華様。心が広いわ」

「ほほほ」


 私はバカは放っておいてそのまま通り過ぎて行った。バカは後ろでぎゃあぎゃあと叫んでいたけれど。



 ……あいつ、後で絶対報復する。


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