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 中等科の卒業式。

 これは初等科の時と違ってなかなか感慨深いものがあるなぁ。

 だって来月には高等科に主人公が入学してくるはずなんだもん。いったいどうなるんだろう。

 今までは小さなトラブルは結構あったけど、私にとっては概ね平和な学院生活だった。でもこれからはわからない。いっそこのまま鏑木が優理絵様とくっついてくれたら楽なのに。

 愛羅様を通じて、優理絵様に鏑木をアピールしてみようか。鏑木のアピールポイントが全然思い浮かばないけど…。

 そういえば葵ちゃんや桜ちゃんも今日が卒業式だって言ってたな。私と同じくエスカレーター式の桜ちゃんと違って、葵ちゃんの受験は傍で見ているこっちまで苦しかった。“無事合格しました”っていうメールが着た時には、心底ホッとした。

“麗華ちゃんの鉛筆と鉢巻のおかげだよ”って、嬉しいじゃないか。

 私も家でハチマキをして勉強したよ。そのまま家の中をうろうろしていたら、家族にギョッとされたけど。「そんなに思いつめなくていいのよ」ってお母様に心配されたけど、これは受験勉強の雰囲気作りだから、全然追い込まれていないのに。

 むしろ追い込まれていたのは、大好きなホットチョコレートの飲みすぎで、少しだけふくよかになったおなか周りだけだ。連日通ったのはさすがにまずかった。

 フラフープを復活させて、なんとか凌いだけどね。



 卒業生答辞は鏑木がおこなった。ストーカー気質で体育祭大好きの騎馬戦馬鹿だけど、我が学年では一番優秀らしい。

 こういうのって普通、生徒会長がやるものだと思っていたんだけどな。めげるなよ、同志当て馬。

 壇上で答辞を読み上げる姿はさすが堂々としたものだ。女子生徒だけではなく、男子生徒もうっとりだ。騎馬戦で不動の強さを見せつけた皇帝は、男子の心も鷲掴みらしい。

 騎馬戦引退宣言をした皇帝には、一時期弟子入り志願者が殺到していた。その中にはあのズタボロ1年君もいた。次代の騎馬戦皇帝は自分だという、大いなる野心を持っているそうだ。いいなぁ、揺るがないバカっぷり。しかし瑞鸞男子はどれだけ騎馬戦が好きなんだ。

 その皇帝は弟子をすべて断った。曰く「技は教えられるのではなく、盗むものだ」と。

 弟子入り志願者達は「はいっ!」と感動に打ち震えていた。バカだ。瑞鸞男子はバカばかりだったのだ。これは大変だ。

 いつも隣にいる円城が、その時は少し離れたところに立っていた。あれはきっと、自分はこのバカ達とは関係ないという、意思表示だったに違いない。

 そんな鏑木が読む答辞の中には絶対に騎馬戦の話も盛り込むと思ってたのに、全くなかった。鏑木の中等科の一番の思い出なんて、絶対それだろうに。守ったな。



 式が終わって外に出ると、お兄様が!

 今年は忙しいから来て欲しいと頼むのは遠慮したほうがいいかな~と迷っていたんだけど、そんな私の気持ちを察したお兄様から行くよって言ってくれたのだ。

 だから我がままついでに、その時はうららを持ってきてねともお願いした。

 約束通り、お兄様はうららの交じった素敵な花束を持ってきてくれた。

 忙しいのにありがとう、お兄様!お兄様の大学の卒業式はこれからだから、お礼にぜひ私も駆けつけましょうと言ったら、笑顔でお断りされてしまいました…。なぜ。


 お兄様の花束のほかに、ピヴォワーヌの後輩達から代表のお祝いのお花と、なんと璃々奈の手下達からもお花をもらってしまった!そして璃々奈は自分が持っていた花束を私ではなくお兄様にあげていた。おいっ!


「貴兄様、来年の私の卒業式には百合の花を持って見に来てくださいね!璃々奈の花ですわ!」


 百合の花を自分の花というのは、皇帝が怒るのでは?

 ほら、璃々奈が大声で言うから、振り向いちゃったし。


「璃々奈の花というと、彼岸花かしら?とってもお似合い」

「なに言ってるのよ!あれはユリ科ではないわ!私の花はマドンナリリーよ!」


 うわっ、図々しい。


「う~ん。来年は僕も働いているからね。約束は出来ないなぁ」

「ええーーっ」


 璃々奈の卒業式には私が花束持ってお祝いに駆けつけてあげるよ。璃々奈にぴったりの花、ロリーポップを持ってね。


「璃々奈は鏑木様にお祝いのご挨拶をしなくていいの?」

「もちろん、今から行くわよ」


 鏑木は大勢の女子生徒達に囲まれて、握手会だ。

 璃々奈は青い薔薇のブリザーブドフラワーの花束を持って、手下と共に鼻息荒く輪の中に突進していった。

 振り向きざま、


「ああ、ついでに麗華さん、卒業おめでとう」


 と言い残して。

 ツンデレさんだなぁ…。


「璃々奈とすっかり仲良くなったんだね」

「そうでしょうか?でもバカな子ほど可愛いといいますからね」


 うんうんと私が頷くと、お兄様も「…そうだねぇ。バカな子ほど可愛いねぇ」と同意してくれた。

 今回はお父様もお兄様にしっかり対抗してお祝いの花束を持ってきてくれた。「蘭の女王カトレアだ。麗華にぴったりの花だ」と自慢げに。

 どうせ隣のお母様あたりに教えてもらったんだろう。ぽんぽこ狸の発想とは思えない。私、自分の父親を侮りすぎ?


 あ、美波留ちゃんがデジカメ持って円城の輪の中に入っていった。あら~。

 そしてその後ろで同じくデジカメを持った委員長が…。委員長、玉砕?!委員長、中吉を過信しすぎたのではないかしら?

 鏑木や円城の写真を撮るのに一段落した芹香ちゃん達が、一緒に写真を撮ろうと誘ってくれた。「麗華様のお兄様もご一緒に」って、もしやそっちが目当てか?!

 それでも仲良しの女子達ときゃあきゃあはしゃいで写真を撮る。

 残念ながら男子生徒からのお声はかからなかったけど。私に憧れを抱いている男子はいないのか?遠慮しなくていいんだよ?今なら握手も付けますが。

 ……まぁいい。私の恋愛運はきっと高等科で花開くのだから。凶みくじの呪いは今日でおさらばだ!



 でも私は幸せ者だなぁ。こんなにたくさんの人達にお祝いしてもらって。

 高等科でも、そしてその後も未来でも、この幸せが続くといいなぁ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 単純に幸せを描いてるのに、どうしてこんなにも面白いのだろう。良い。
[気になる点] お兄様の同意が意味深過ぎる…
[良い点] お兄様が麗華のことちょっとバカにしてるのが、なんか本当にほっこりくる。 良い卒業式だった。
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