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愛の手紙を寄越されるモブ? 

『__1年2組、バスケット部門、3位入賞おめでとう。』


あれから数時間後、全てのプログラムを終え始まった表彰式。広大な敷地を有する学園が誇る最大の施設、武道館に集まる全校生徒達の前で表彰されるはクラス代表の伊達正樹。 一年で入賞するのは学園創設以来初でその快挙を主に一年の教職員達や熱血漢の学年主任が大いに讃えている。


万雷の惜しみない拍手が伊達に向けられる。中には黄色い歓声も聞こえてくる、さながら救国の英雄(ヒーロー)の様に...... いつまでも鳴り止まぬ拍手喝采に賞状を授与するお偉いさんが咳を一つし諫める。


『えっ、えーと次、3年__』


その後を続く順位発表にも拍手が鳴り響くのだが伊達ほどではない、みんなの視線は頂点を冠する壇上に上がる3年の生徒ではなく、一人の生徒に向かれている。 この瞬間、学年のアイドルから学園のアイドルに変るのであった__  





「ね、ねぇ瀬徒君...... ちょっと良いかな?」


無事、伊達のデビュー式.....もとい表彰式が終わり放課後。 伊達はハーレム達を伴い打ち上げに行った。瀬徒も誘われはしたのだが取り巻きからの冷酷無比な視線を浴び首を横に振る。これでホイホイ付いて行く奴がいるのなら見て見たい。どうやらクラスでの打ち上げではなくハーレムと過ごすことを決めた様だ。彼を狙う女子からの落胆とする表情や男の嫉妬に狂う姿は記憶に新しい。


そんなことを思いながら夕日が赤く照らす廊下を歩いてると背後から声を掛けられる。それも自身の名前を添えて__  


「えっと......何かな?」


そう答えると一際顔を紅潮させ、モジモジとする。その朱色は今もなお二人と廊下を照らす夕日を凌駕するほどに......


「あの、コレ!」


すっと渡されるのは一通のハート型のシールで封された手紙、所謂ラブレターって奴だろう。幻想的なシチュエーションも相まって漫画のクライマックスを飾る場面を連想させる。


「えっコレってまさか__」 


学年の日陰者として嫌われては無いものの薄気味悪がられてた自分にようやくお日様が微笑んでくれたのか? もらいなれてたラブレターもこの一通だけはとても価値がある様に思える。


「伊達君に渡してください!」


「__えっ?」


つい素っ頓狂な声を上げてしまう。気分は一気に急降下、対する彼女は言い切ったことに対して満足感を露わに微笑んでいる。


「直接渡せばいいんじゃ無いかな?」


つい意地悪を言ってしまう。腹いせのつもりというなんとも小心なのだが、それほど期待裏切られたことがショックなのだろう。


「うぅ......だって周りの女子怖いし恥ずかしいし......瀬徒くん仲良いでしょ?だから渡して欲しいの!」


なるほどやっぱり俺は親友枠らしい、伊達という光を際立たせるための影に過ぎない。影が濃いほどに光っていうのは輝くもんだ。


「うーん、休み明けでも大丈夫か?」


流石にこの日ばかりは部活がないのだろう、活気溢れる掛け声もなくただ静かな廊下に響く。


「うん!ちゃんと渡してくれたらそれでいいから!」


「......わかった。それで名前教えてもらってもいいかな?」


同じ階で何度かすれ違ったことがあるから恐らくは同級生だろう。あんまし目立たなそうな薄幸そうな顔つきだが美少女の面影もある。 ちゃんと綺麗に整えたら化けそうな程に。


「四方要!一年三組です!  趣味は料理とお裁縫です!好きな食べ物は納豆!嫌いな食べ物は貝類!伊達君を好きになった理由は__」


さっきまでの印象とは違い口を開けば滝の様に流れる彼女の情報。人が変わったかの様に捲し立てる彼女に引き気味になる。 茜色の空もその真っ赤に染め上がる顔に嫉妬してしまうほどに......。


「あの......そういうことは伊達にでも言った方がいいですよ?」


つい臆して敬語になってしまう。彼女もハッと気付き、ゼーハーとした息を整えこちらを恥ずかしそうに見る。


「あははは......そうだよね ......なに言ってんだが私。」


頭をぽりぽりと掻きながら居た堪れなそうに此方を見る。 何だが微妙な雰囲気。 その静寂も心地の良い者ではなく互いにヨソヨソしくなる。


「まぁ取り敢えずは渡しておくから安心してくれ」


「う うん。じゃあ宜しくね?」


もう用事はないと言わんばかりにクルリと踵を返す彼女の後ろ姿を眺める瀬徒、その瞳には疲労が宿っていた。


「何だかこういうの増えそうな気がするなぁ......よくラノベで見る親友枠の大変さが身に沁みるよ」


彼女から寄越された伊達への恋文を極力汚くしない様に鞄にしまう。渡すのは振替休日を挟んだ明けに。ハッキリしない彼の態度もこれを契機に向き合ってくれるのか? ハーレムという関係に投じるは石ではなく紙、石なんかよりもそれはずっと重く鋭く痛みも伴うだろう。そこに広がる波、それは友達である瀬徒も人ごとではなく__


これから訪れるだろう彼絡みのトラブルに久しく感じてない胃の痛みを感じながら、夕日が沈む夜の方へと歩くのだった。











メッセでの激励の言葉有難うございます。あとがきから失礼しました。遅くなってごめんなさい。水木はどうしても遅くなりそうです。

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