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81.祝杯。

席に誘導される。

こじんまりした広間だ。

何故か家の中央食堂を彷彿とさせる。

長テーブルに俺はお誕生日席だった。

ギャルソンがメニューを指し出したずねる。

「祝杯のクランのお名前は何としますか?」

イキナリ聞かれて焦る、いや、貴族は焦らない。

焦るだろ?クランなんて何も決めてない。

アレックスに目線のレーザービームを送るが受信不良で、おどけた笑いが帰ってくるだけだ…。

くっそ!!コイツ役に立たない。

適当に答える。

「ああ、そうだな。”放課後図書室研究会”だ。結成祝いの為の集まりだ。」

「はっ。かしこまりました。食前酒をお付けしますか?」

「ああ、頼む。軽いもので。」

「はい、ではメインは?」

困った!!どうする?俺!!魔法の言葉を紡ぎ出す。

「お任せで(棒)」

「はっ、承りました。では食前酒から。」

ギャルソンが合図するとスグに赤ワインのお湯割りが出てきた。

食堂の給仕が素早くグラスに注いでゆく。

全てのグラスが行き渡るとギャルソンが目で合図を送ってくる。

もちろん意味は分からないが頷く。

「では、ココにこのクラン。”放課後図書室研究会”の発足を宣言する。」

皆がグラスを掲げる中、何故かギャルソンがメモメモしている。

思いつきで答えたが困った、一人ぐらいフルプレートの会員が居そうな名前だ。

乾杯の後グラスに口を付けるメンバーの中。

「はっ!!ココは?」

ロビンが復活したようだ。声を掛ける。

「おはようロビン昼飯だ。」

「え?ココ。ドコ?」

「お前の好きな上級食堂だ。」

「しかも、クラン部屋だよ?」

一杯飲んだダケで顔の赤いフェルッポ。

「クラン!!誰が。いつの間に!!」

「オットー・フォン・ハイデッカーの名に置いて宣言されたクラン”放課後図書室研究会”だよ。コレで学園の正式なクランだ。会員は盟約に従い義務と責任を負う。」

グラスを飲み干したアレックスが言う。

そんな話はしらんぞ?

「そ、そんな!!」

「ロビン、コレは決定事項だ。文句があるなら発起人に言え。たぶん、決闘で勝てば覆せる。」

マルコがなんかいい加減なコトを言う。

まあ。決闘で決着を付けるのは実にゲームらしい。

「そうだぞロビン、男は地位も名誉も女も腕で勝ち取るのだ。文句が在るなら掛って来い。」

拳を見せると何故か男泣きするロビン。

「くっあんなのにどうやって勝てるんだよ!!狼の方がマシだ!!ごめん!!トリーニア。僕は非力だ。」

おお。ロビン正解だ。狼ぐらいなら素手で殺れないと話にならない。

お前も鍛えて熊ぐらい殺れるようにしてやる。

でもなんでエンリケの娘なんだ?

母イレーネの方がイイ女だろ?

まあ、趣向の問題なのでスルースキルを使う。

同時に給仕が皿を持って来た。

「お口合わせでございます。」

給仕が皿を置く。

「トマトと燻製肉のブルスケッタでございます。」

平皿に薄く切って焼いたパン、その上にトマトの角切りがオリーブオイルでテカッている。

干し肉(塩漬け)の脂身を刻んで加熱して油粕を取り。

出来たヘットにニンニク微塵切りを加え加熱。

そのヘットをスライスしたパンに塗りトーストしているようだ。

刻んだトマトに油粕と香草を加えてオリーブオイルで和え置いたものがパンの上に乗っている。

塩と油と炭水化物だ。

デブの大好物だろ?

不味いワケがない。

しかし、二杯では足りないな。

まあ、前菜が大盛りなんて見たコトが無いが…。

くっコロとロリは優雅に食べている。

オリエンタルロリは壊れたゴーレムの様にぎこちなく手を動かしている。

マイト先輩もだ。

ロビンは…。外って置こう。

「前菜でございます。」

皿が下げられ次の皿が出てくる。

緑色の半円形のドーム、白いソースとハーブの種が掛かっている。

「豆のムース、クリームソース掛けでございます。」

うーん、豆の味がするがイマイチ薄味だ。

「スープでございます。」

相変わらず次の皿が出てくるのが速い。

「豆と野菜のスープでございます。」

王国の定番メニューだ。家でもよく出る。

豆と野菜のごった煮だ。

刻んだ干し肉で出汁を取って豆+適当な野菜を入れる、この国の味噌汁の様な存在だ。

何時かこの世界で味噌を作って味噌ラーメンを食べたい。

なお、この国で言う”肉の無いスープ”とは出汁の無い野菜の水煮のコトだ。

あれは塩気も無いので凄く不味い。

「白身魚のマリネです。」

ワイン酢&オリーブオイルに刻みタマネギと香草を漬けたソースが白身魚の三枚おろしの素揚げに掛っている。

いや、軽く衣があるので、小麦粉か澱粉がまぶしてあるのかもしれない。

相変わらずパサパサの白身だ。

何の魚なんだろう?


「メインの鴨のローストです。」

皿に切り分けられたローストが乗っている。

こういう場合は丸ごと出てきてホストの主人が切り分けるのが重要なコトだがココでは省略されている。

ソースが掛っているが甘めの味でパンには合いそうにない。

皿の脇に小さいココットがあり中にレバームースが入っている。

コレでバケットパンを食べるらしい。

いや、脂身の少ない鴨肉にレバームースを乗せて食べるのを想定しているようだ。

鴨か…。あいつら意外と凶暴で頭が良いんだよな。

猟に出たとき何度も苦渋を味わった。

しかしあの世界の鴨程ではない。

”怪鳥ケワタガモ”はこの世界のドラゴンに近いらしい。

ただのケワタガモ猟師が数百人の兵隊を倒すなぞ。

ワイバーン程度ではないだろう。

恐ろしい世界だ。

俺はこの世界に生まれたコトを感謝している。

あの悪夢の様な”課長”が居ないのだ。


「デザートのカボチャのプティングです。」

あまり甘くないが問題は無い。

前のメインのソースが甘めだったからな。

カボチャの仄かな甘味が心地よい。


「王国製のお茶です。」


やれやれ、コース料理なのに何故か進行が早い。

くっコロさんとロリが戸惑っている。

やはり食事はゆっくり食べるものなのだ。

俺は早食いだけどな。

ココで俺が口を開くのがルールらしい。

皆の目がそう言っている。

「ふむ、皆にクランを宣言したが、このクランの理念スローガンは未定だ。何か良い案は無いか?」

「え?、魔法を覚える会合じゃないの?」

「フェルッポ。俺は今までに呪文の唱え方を教えたか?」

「そういえば無いな。でもスクロールは貰ったぞ?」

マルコが考えた後に話す。

「そうだ、アレは構成を頭に記憶させてキーワードで発動しているに過ぎない。俺は誰でも、どんな人間でも魔法が使える様にしたい。」

「魔法は特性を持った選ばれた人間しか使えないものだ。」

カールが言う。

まあ、そうだよな。

「そうか?俺はマルカを使って特性の無い者を魔法使いに育てた。この技を使って、広く魔法を人々に浸透させたい。その手法を編み出すのがこのクランの目的だ。」

魔法は火力で戦は数だよ兄貴。

正直、魔法が使えるユニットは多い方が良い。

手数が増える。

特に消耗品の”ロビンユニット”が沢山要る。

「無茶言うな。オットー。魔法は血に代って発動するのだ。魔力の無い者は魔法使いになれない。」

ジョン諭すようにはなす。

だが、マルカはワシが育てた。(ドヤ顔)

「もう既に。その常識は崩れた…。だが人々が納得する実証はされていない。まあ、良いだろう。当面は強力な魔法使いを育てる方法を編み出すコトでも良い。」

「フム、オットーは何時も何かを目的に考えて行動している様子だが、どんな目的なんだい?ああ、もちろんイヤなら答えなくても良いよ。秘密は誰にでもある。」

アレックスが微妙な表情だ。恐らく珍しく彼なりに真剣なんだと思う。

どうする?俺?ココで何かを話してもうそ臭くなる。しかし。誤魔化したくない。

俺の表情を読み取って皆が真剣な顔になる。

「アレックス、俺はこの先生きのこるコトしか考えていない。ソレが戦友の屍を積み上げ城壁とし、死肉を喰らってでも戦い勝利するコトだ。コレは俺の我侭な実験なんだ。」

悪魔が出てきたら総力戦だからな。

皆は何も言わなかった。

ただ、カールの呟き「戦争になるのか?」だけが皆の耳に届いた。

(´・ω・`)

正直、毎回料理のメニュー考えるのめんどくさい。

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― 新着の感想 ―
料理のセレクトが「オットー・フォンハイデッカーはゲーム脳」の良さのひとつ。 ヨーロッパ飯はいい。
[一言] 料理のメニュー毎回考えてんのすごいわ
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