343.雀と弓
さて、飯も食わずに学園長達と話し合ったが、流石に終業の鐘が鳴ったら開放された。
学園長は真空に拘った話が多かった。
どうやら魔力は空気や物質に宿るという学説が一般的で真空中に魔力は存在しないという常識だったらしい。
専用実験棟まで建てる話が出たのは驚いた。
銭が在るな、魔法学園。
そのまま図書室へ向かった。
ドアーを開けると。
「いらっしゃい~♪」
司書たんの鈴の様な声で心が癒される。
ミソッカスと共に、鉢巻少女隊がマグを持って練習をしていた。
エミリーも、マルカも居る。
「オットー様。今日は午後からの実習が無くなったので全員集まっております。」
「チッ。」
「オットー様、私めに何か落ち度が?」
くっくロビンが居やがった。
サンピン勢ぞろいだ。
「やあ、かわいいお嬢さんたち。筋が良いねえ。」
前髪が暴走モードだ。
鉢金の少女達が少し引いている。
何でこんな野獣を学園は放置しておくんだ?
今度、学園長に相談しよう、良い実験体が居ると。
「皆、随分と熱心だな。」
「あ、はい、皆。基本の回転は出来る様に成りました。」
「そうか…。では、次の段階に進もう。」
呼吸を整え覚悟を決める。
「はい、じゃあ二人組み作って!」
素早く野獣になるアレックスの鳩尾に拳がめり込む。
「アレックス、お前の相手は俺だ。」
「ぐふっ、オットー。拳が見えなかった…。」
俺が本気出せばこんなモノだ。
本のジャングルに沈むアレックス。
「よし、では、ロビン、エドとデーニックを見てやれ。残りは下級生と組んでくれ、出来る様に成ったら交代だ。」
「俺達もやるのか?」
意外そうな顔のカール。
「カール、人に教えるコトによって自分が知らないコトを知るのだ。コレも訓練の内だ。」
司書たんもロリロリも参加してマグの中を二人で廻す訓練に入る。
やはりミソッカス共も初見で魔法使いに合わせるのは戸惑っている様子だ。
多くの魔法使いと訓練させるのは正解らしい。
マルカやエミリーだけだと魔力の補充は負担が掛る。
気絶したアレックスを叩き起こして訓練に参加させた。
ウザイがコイツも訓練させないと死にそうだ。
死亡フラグ満載だからな。
アレックスは嬉しそうだ。
セクハラするなと捻じ込んでおいたが、少女の肩に触れる手が嬉しそうな顔だ。
フェルッポは遠慮がちだな、DTっぽい初々しさが在る。
カールとジョンは恐らく姉妹が多いのか別に何も思わないらしい。
リア充め、滅びろ。
訓練しながら考査表を纏める。
やはり魔法の習得は差が出る。
A班、B班は何か魔法の基礎でつまずいた儘の者が多い様子だ。
C班のメンバーは性格による影響であろう。
細かいことが苦手なのかもしれない。
メシマズになる傾向か…。いや、順序を守らないダケかも。
たぶんコツを掴んだ者は習得が早い。
既に2人ほどの技量が初めの頃のB班に手が届く。
D班は精神的に魔法の操作が長続きしない者が多い。
頭痛や疲れを訴える者も居た。
サーチしてみたが、内部に問題は無い様子だった。
しかし、疲労状態になると頭部の丹田が上手く動いて無い状態だった。
前頭部の何かに魔法を操作する器官が在るのかもしれない。
ソコが成長すれば魔法使いに成るのであろう。
エルフの細い冠を思い出す。
アレを解析すれば強制学習装置に応用できないであろうか?
寝ている間に…。なんかそんな枕があったな…。
今度イネス教授に会った時に聞いてみよう。
鐘が鳴り時間に成った。
解散を宣言して考査表を収納する。
家路に向かう鉢巻少女隊。
マルカは笑顔だ。
司書たんも。
やはり俺の女達は何時も笑っていて欲しい。
何時までもだ。




