316.洋裁2
ふう、採寸も終わり艶めかしく横たえる母娘。
「すまんな。腹が減ったのだが何か有るか?」
「今、暖めますね。」
立ち上がるイレーネの後姿で直に臨戦態勢になる。
「あっ」
台所でゆっくり食べた。
身形を整え店番をしていると娘が帰って来た。
「ただいま戻りました。」
不信そうな娘の顔。
匂いを嗅いで更に険しくなった。
「準備は良いか?」
「あ、はい。明日の午後には全て揃います。」
「そうか…。早いほうが良いのだが。」
「ベスタさんの都合はどうでしょか?」
「指名依頼を出せば問題は無い。明日の昼過ぎに店に来よう、ギルドで指名を出せ。」
「はい、解りました。」
「娘、」
「はい、トリーニアとおよび下さい。」
「娘。この店を続けるため、エンリケの意志を継ぐ為の大事な旅だ。気を抜くな。敵は己だと知れ。」
「はい!」
「おぼこおかえり。」
「ブラン、母さんは?」
「寝てる。」
「そう、あたし。頑張る!」
「がんばれおぼこ。」
抑揚の無い声で応援するブラン。
尻尾も耳も動いてない。
「あんたねえ。」
「準備が間に合えば明後日の朝には出発だ。良いな?」
「遂に行くのですね…。」
奥からイレーネが出てきた。
「おかーさん。」
「おかあさま」
「大丈夫です…。トリーニア。必ず帰るのですよ。」
「はい、お母さん。」
抱合う母と娘、ちゃっかりブランも参加している。(パタパタ)
”う、なんか花くさい…。”
呟く娘。
おかしいな、クリーンの魔法は掛けたハズだ。
服も注文できたので。
代金を払って。
店を出た。
イレーネは固辞したが、”また改良版を作ってもらうコトになるので”と言い受け取ってもらった。
コレで服は問題ない。
後は、装甲部分だ、未だ日が高いが今日はカレーの日である。
早めに帰ろう、帰る足も軽い。
そうこうするうちに学園に戻ってきた。
校門を潜り寮に向かうとフェルッポが寮の窓から手を振っている。
振り替えす。
叫ぶフェルッポ。
「オットー、サロンに行こうよ!」
まあ、食事前のお茶ぐらい良いだろう。
時間はある。
手で”了解!”の合図を送る。
部屋に戻っても仕方がないので。
クリーンの魔法を何度か掛け、ブーツの泥を落とし。
青隠者姿でそのままサロンだ。




