293.使徒墳墓教会1
さて、目的地の教会にやって来た。
墓地に囲まれた古い教会だ。
建物を見上げる。
薄汚れているが手入れはしている様子だ。
うむ、ゲーム通りだ。
ココにはバインバインのムッチリシスターが居てお祈りで傷を癒してくれる。
復活のアイテムが教会の地下墓地に隠されているが。
ソレにはダンジョンをクリアしないと…。
隠し場所が解からないという仕様だ。
ギルドで確認したが魔物が活発化しているだけでダンジョンは未だ発見されて居なかった。
ダンジョンが無いと地下墓地のアイテムが発見できない。
フラグが立っていない、港でムテキしてもドーモドーモだ。
それなら先に工口修道女を見るしかない。
移動ポーンでドアを開けたら工口修道女だ。
このダァーの向こうには工口イ女が居るのだ!!
大きな門の装飾されたドアーノブリングでノックする。
響く音。
「どうぞ、中に。」
よっし!女の声だ。
随分と若い声、コレは期待ができる。
重たいドアを開けると…。
中には子供達数人と祭壇の前に初老の司祭が居るだけだった。
声を掛けたのは薄汚れた少女だった。
「ようこそ。使徒墳墓教会へココは冥府の王へと導く者が集う教会です。司祭様は今お祈り中です、御静かにお待ちください。」
なるほど…。この子の声か…orz。
一礼して長椅子の最後尾で待たせてもらう。
皆、静かに低い声でお祈りが続くが…。
子供達は板に書かれた経文を読んでいる様子だ。
読み書きできるのか?
なるほど、この祈りは魔法的な要素が有る、魔力の発動が無いが魔力を込めれば何らかの効果はあるだろう。
「「ズドン!」」
全員が一斉に持っていた板で額を叩いた。
大きな音になったので一瞬びびる。
ソレからワンフレーズ毎に額を叩く。
えらくアグレッシブなお祈りだ。
お祈りが終わると順番に子供達が前に出て一人づつ祝福を受けている。
「死して安寧の睡眠を…。」
おい、良いのかその祈り。
全員が終わると、皆雑談をしている。
「こんにちは。ようこそ。使徒墳墓教会へココは冥府の王へと導く者が集う教会です。死者に正しい道を教え迷える魂を救います。祝福の寄進はあちらの壷にどうぞ。」
「冒険者のオットーと言う者だ。貴方がこの教会の司祭か?」
「はい、そうです。司祭のトントと申します。」
「修道女は?」
「はて?私はこの教会にて長いのですが、修道女が、居たコトは在りません。」
「そうか…。済まない。間違いだった様だ。」
コッチも未だフラグが立っていないのだ。
確かアイテムが売っていたハズだが…。
工口修道女が居ない教会なぞ居ても仕方が無い。
工口画像の得られないのだ。無駄だろう。
「司祭様。裏に収穫に行ってきます。」
落ち込んでいるとさっきの少女が司祭に話しかけた。
額が赤い。
「ああ、頼んだよ。怪我し無い様にね。」
よく見ると司祭の額も赤い。
「「「はーい。」」」
額の赤い子供達を見送る司祭。
随分と痩せた子供達だゲームには出てこなかったな。
「あの子達は?」
「はい、20年前から町で身寄りの無い子を預かっております。もう巣立った子もおりますが…。まだまだ町には手を差し伸べねば成らない子が多いのですが…。」
寄進の壷を見る司祭。
俺に寄進しろと言うことか。
言って居ないが目がそう言っている。
「そうか、生憎持ち合わせが無い…。」
「物でも構いません。命の収穫は冥府の王の使徒の大事な仕事です。」
「そ、そうか…。」
ソレは死神のコトか?
まあ、子供達を食べさせるのも苦労しているのだろう。
「そうか。寄進は出来んが、南方の干し木の実が有る。皆に振舞ってくれ。」
大袋一杯の干しデーツを収納から出す。
「おお、助かります。」
受け取る司祭の手、指輪が有り魔力を持っている。
「うん?その指輪は?」
「この教会に伝わる。この教会を起こした司祭が使っていた物でございます。何でも冥府の王との契約をして死者を蘇らせるコトが出来たと言う話です。」
「見せてもらっても良いか?」
「はい。どうぞ。」
手を差し出す司祭。
見るダケなら良いらしい。
サーチする。
サーチ結果
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道具:復活の指輪(赤ルビー)
効果:生物、物質を選ばず2時間前の状態に戻す。
(耐久度:58%)
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指輪の表面には細かい記述が有る。
ビンゴだ!今、墓の中に無い。
ゲームでは恐らくコイツの棺桶から指輪を拾うのだ。
「なるほど…。コレは魔法の道具だな。」
「はい、そう聞いております。しかし、使える者が居ないのです。」
「そうか…。譲り受けたいが…。この教会に必要な物だろう。」
笑顔で話す。
「はい、この教会の司祭に成ればお譲りいたします。」
冗談だと受け取ってくれたらしい。
「う~ん。実は司祭殿、俺は王都の学園の魔法使いで魔道具を収集している。主に現物でなくても良いのだが構造と効果を調べている。」
「はあ?」
「研究の為にこの場で指輪の写しが欲しい。」
「それは…。困りましたね。」
眉を潜め寄進の壷を眺める司祭。
「もう一袋ある。」
コレでデーツは売り切れだ。
「ありがとうございます。しかし、コレは。当教会の大切な物でございます。」
言葉では断っているが反応は悪く無い。
「後は梨ぐらいしかないな。」
随分と減った梨を木箱ごと出す。
「おお、ここらでは食べられない物ですな…。懐かしい。」
「そうか…。暖かい南側斜面だと生えるのでは?種を植えてみてはどうだ?」
「なるほど。ソレはすばらしい考えだと思います。」
「この場で返す。指輪を調べさせてくれ。」
「うーん。」
よし、もう一息だ。
「学問の為だ。恐らく、この教会の司祭が何を行なっていたのかが解るだろう。」
「うーーーん。」
「…。」
「うーーーーーーーん。」
「(ボソッ)うさぎの肉が有るのだが…。」
「はい!喜んで!!」




