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279.四日目7

日が傾き始め影が長くなると…。

遂に最後になる宿営地に到着した。

何も無い…。

と言うか遥か彼方に煙が上がっている。

恐らく炭鉱か精錬の煙だ。

空気が冷え始めたので低く広く谷を覆っている。

目的地の谷の入り口を見下ろす状況だ。

「何もありませんね…。」

ラカスの感想だ。

周囲には古い切り株と新しい切り株が並んでいる。

その荒涼とした禿山が何処までも続いている。

恐らく伐採したのだ。

炭鉱や鉱山は多くの木材や物資を必要とする、落盤防止の坑道内の支保、燃料としての木材。

そして精錬の為に使う木炭だ。

鉄を取るのに鉄が要るのだ。おかしな話だ、鉄を掘るにも作るにも木材が要る、ソレを全て周りの山や森で調達しているのだ。

「やはりな…。」

目の前に広がる荒野を見て確信する。

「何がですか?オットー様。」

オシリスキーが訪ねる。

「以前、猟師頭が狼や熊はもっと北の山の方にしか居ないと言っていた。人が森を切り開いたから南に下ってきたのだ。」

「なるほど…。」

「おおかみさん、フフフフ。」

「困ったな…。」

「何がですか?」

遠く山の斜面に既に土砂崩れが起きている箇所がある表土が流出しているのだ。

どうしようも出来ない。

「うむ、まあ良いだろう。恐らくあの丘の上が宿営地だ。使える物が在るか確認しよう。」

小高い丘の上に一本の大木が残されている。

こういう場合は旅人の目印に残されている場合が多い。

「はい、では偵察に行ってきます。ラカス行くぞ!」

「はいはい。」

オシリスキーとラカスが先行する。

丘の稜線で手を振り回すラカス。

”問題無い”では無く、来いと言う合図だ。

「何か有ったらしい。ベスタ付いて来い。」

「はい!」

馬車から飛び降りるベスタ。

「教授何か有ったら合図の魔法弾を空に打ち上げます。撤退して下さい。」

「おい、生徒オットー、男子生徒はどうなる?」

「なに、皆、貴族の男です。討ち死には覚悟の上です。家族への最後の姿の手紙をお願いします。」

「いや、まて生徒オットー、ソレは色々オカシイぞ?」

護衛を冒険者達に任せベスタと共に周囲を警戒しながら丘を登る。

ラカスが岩の陰から下を見ている。

「何か有ったのか?」

「申し訳ありませんオットー様。アレをごらんください。」

ラカスの指差す先には木の柵に囲まれた丸太小屋に小さな畑、そして沢から引いた水場が有った。

畑には収穫した跡がある。

オシリスキーが周囲を捜索しているが住人を見つけられないらしい。

「人家だな…。」

「はい、無人の様子です。」

「単純に留守なのだろう。」

「どうしましょうか?周囲に水場が有りません。水をお借りするしかないのですが。」

「住人が居ないのでは…。困ったな。」

アレはかなりの労力を払って作った物だ。

所有者の許可が要るだろう。

周囲の荒地には焚き火の痕跡が有る。

恐らく宿営地はあそこだろう。

管理人が要るのか…。

有料かも知れない。

「とりあえず馬車をあの場所まで前進させよう。」

馬車に前進の合図を送る。

冒険者を先頭に進む馬車。

ベスタと俺は丘を下り広場に向かう。

やはり柵の外の広場は長年、宿営地に使われていた物だった。

ラカスは丘の上で周囲の監視をしている。

オシリスキーが捜索を終えて報告に来た。

「小屋は無人ですか最近、と言うか朝まで使用した形跡があり戸締りはしていないので住人は遠くに行く予定ではない様子です。」

「そうか…。小屋と畑の広さから大人数は住んで居ない。恐らく食料の確保も出来ない。物資の調達が必要だ。町まで一日の距離だ、住人は買出しに出ているのかも知れない。」

「そうですね…。特におかしな所も有りませんでした。」

「よし、では。ココは恐らく宿営地だ。有料かも知れんがココにテントを張ろう。」

「オットー様、実は。この先に牛馬用の水飲み桶が有りました。ゴミ捨て場も在ります。」

「なるほど…。そちらが本命だな。」

冒険者が先頭に馬車がやってきた。

丘の上のラカスに”合流せよ”の合図を送る。

駆け下りてくるラカス。

全員が揃うと状況説明だ。

「この小屋は個人の住宅の様子で住人は留守だ。この先に宿営所がある様だ。ソコを今夜の宿にする。」

「「「はい」」」

馬車を進ませると。

整地された広場に到着した。

薪小屋とトイレが設置してある。

恐らく管理者が居るのだろう。

一段下がった所に周囲に柵で囲まれた広場が有る。

牛馬用の水を湛えた桶と馬を繋ぐ横木もある。

屋根だけの吹き曝し馬房らしきものは有ったが使われていない。

と言うか飼葉を乾燥させる小屋になっていた。

かなりの人数が泊まることが出来る広場だ。

恐らく木の切り出しの為に整備したものだろう。

その割りにテント用の台木は無い。

役目を終えて撤去したのかも知れない。



看板が立っている。


-------------------------

使用料について


商隊は馬車の数と人数に寄る。

巡礼者は、皆に祈祷を行なう場合は無料。

旅行者、又は官吏は要相談。


馬車1台につき  銅貨1枚。

大人      小銅貨1枚。

子供   2人で小銅貨1枚(但し人数は切り捨て)


薪 1束  銅貨2枚。

飼葉1桶  銅貨2枚。


水は無料。(無駄にしない事。)


夜は騒がないこと。

見張りは皆で協力して行ないましょう。

ゴミはそれぞれ、決められた場所に捨てましょう。


トイレの清掃は管理者で行ないますが、綺麗に使いましょう。


水場の保全とマナーを守り綺麗で快適な旅に心がけましょう。

-------------------------



なるほど…。

管理人が居るのか。

恐らく小屋の住人だろう。

管理人は留守のようだ。

困ったな…。

だが、日没まで時間がある。

戻ってくるだろう。

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