274.四日目2
小屋の戸締りと火の始末を終えて馬車が出る。
「なんか…。屋外テントの方が手間が少なかったですね…。」
小さくなった小屋を眺めダーク少年が呟く。
「少年よ、屋根と床で寝るのは苦労が必要なのだ。」
ザーバが答える。
「う~ん、俺、野宿慣れてるから…。」
「まっ、手分け出きるから快適だったんぜ。」
ムロが気安く言う。
「人数が少ないと、もう手が回らなくて…、いい加減なモンだよ。」
リーダーも言う。
「食事とかね。」
「むっ、あたいの食事が不味いって言うのかい?」
「いえいえ、暖かければもっと美味しいと思いますよ。お嬢さん。」
「むっ!兄貴!!ムロがあたいのこと馬鹿にする。」
「「ハハハハ」」
足元は悪いが一歩ずつ進んでいく。
天気は良いので暑くなりそうだ。
途中の小休憩を挟む、登り坂が多くなってきた。
山裾を縫う様に街道が走っているのだ。
暢気な冒険者達だがGUIに映る光点の遭遇が多くなっている。
小さな光点だ。コチラには気にしていない様子。恐らくウサギか何かだ。
どうやら生物が多くなっているらしい。
今のところ小動物だがこのままでは大型肉食獣に出会うのも時間の問題だろう。
だが、問題はどうやって警告を与えるかだ…。
思案していると馬車の前にウサギが飛び出した。
色違いだツノが在る。
「ウサギだ、オットー様お任せ下さい。」
オシリスキーが申し出るが、ラカスが止める。
「ツノウサギです。山に居るヤツです慣れてないとちょっと無理です。」
「うさぎさん。」
「おい!ウサギ如きに!!」
怒るオシリスキー、確かにレベル1では無理かもしれない。
「オ。モーガン、ラカスに譲ってやれ、ラカス、得点の機会だ行ってこい。モーガンは支援をしろ。」
「「はい!」」
走る少年達の背を見送る。
「大丈夫でしょうか?」
39番のペルーラが心配そうだ。
「ラカスはなかなかやる様だ問題は無いだろう。」
アイツ短剣の二刀流だからな。
まさかウサギで死なないよね?
遭遇したツノ付きウサギはいきなりモーガンを強襲した。
「くそっ!何だ!!」
辛うじて剣で防ぐコトに成功した。
「モーガン!ソイツは真直ぐしか攻撃しない。落ち着いていなせ!」
飛び退いたウサギがモーガンを正面に捕らえる。
ソコに飛び込むラカス。
「なんでモーガンを目の敵にするんだ?」
「ツノウサギは弱い方を攻撃して怪我させて逃げる。」
一応弓をつがえたクーリョ。白髪オカッパ赤眼の弓使いだ。
モーガンを中心に飛び回るツノ付き。
ソレを追いかけるラカス。
「モーガン!取り押さえろ。」
「やってる!!くそ!蹴られた。」
「モーガン。叩き落して足で踏んで。」
炊事班班長のソレットが叫ぶ。
おっとりそうな外見だがエグイ事を言う。
「簡単に言うな!!」
叫ぶモーガン。
「簡単なんだけど…。」
呟くペルーラ。
「く、この!!」
くっコノオシリスキーの攻撃を難なくかわすツノ付き。
当たらなければどうと言うコトは無いらしい。
「モーガン攻撃するな。防御に専念しろ。」
ラカスが短剣を持ち替え叫ぶ。
「何をガッ。」
振り切って構えた瞬間の隙を付いてツノ付きの蹴りがモーガンの胴に入った。
モーガンがウサギの足を掴んでいる。
そのまま暴れるウサギを地面に叩きつける。
「手を放すな!モーガン!」
「俺に命令するな!」
ラカスの短剣がウサギと大地を貫く。
「よっし!やったぞ!!」
「おい、美味しいトコだけ持っていくな!俺が殆ど戦ってただろ!」
喜ぶラカスに怒るモーガン。
「よくやったモーガン。良い支援だった。」
手を叩いて褒める。
「はっ!ありがとうございます。」
畏まるモーガン。痛みを我慢している様子だ。
「できればこの旅で一人一つは獲物を狩らせたい。戦果は譲ってやれ。怪我は無いか?誰か手当てを。」
「掠り傷です。」
ぷるぷるモーガン。
「オットー様、戦果です。今晩のシチューです。」
得意そうにウサギを掲げるダーク少年。
「つのうさぎさん。」
「うむ、そうだな。今日はウサギのシチューだ。炊事班に渡せ。ラカス、怪我は無いか?」
「在りません。では、処理してきます。」
「はいはい、ケガ人さん。手当てしますよ~。」
10番の金髪ショートのシェールが救急箱を持って来た。
何故か嬉しそうだ。
”痛い!””痛くないよ~。””もうちょっと優しく。””大丈夫だよ~♪”
うむ、痛そうな手当てだ。




