223.心配事
節穴親父の店を後にする…。
銭は受け取った、もう直昼だ。
流石に金物屋を回る時間が無くなった。
路地からポーンで寮の部屋に移動する。
急いで制服に着替えてポーンで校舎前に飛ぶ。
よし、間に合った!!
校舎の周りを巡回しているガーズ達が硬直しているが気にせず校舎に入り教室に向かう。
”こ、忽然と現れたぞ!!””うへぇ、姿が消せるのか…?””くそっ!防ぎようが無いぞ!!”
うるさいなあ、焦るんじゃない。俺は昼飯を食いに来たダケなんだ。(授業を受ける気は無い。)
教室前に着くのと教授が出てくるのが同時だった。
「生徒オットー…。授業を…。いや、お前の企画の課外授業の担当に俺が成った。昼食後に教員室に来い。」
「はっ、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
「あと…。レポートを早く提出すること。」
「はっ。」
畏まって答えるが…。レポートか…。全く頭に無かった。
教室の中に入るとミソッカスとくっころさんが集っている。
「オットー来たのか?」
「授業に出ろよオットー。」
相変わらずツーブロックのマルコと金髪チビのカール。
「ああ、待たせて済まんな。」
「オットー様、こんにちは。」
神妙な顔をしたロビン以下サンピントリオも自首してきた。
何だ?今日は逃げないのか?面白く無いな。
「よし、全員揃ったな?では食事に行こうではないか。」
食堂に進むと食券の列にベスタが並ぶ。
全員大盛り+麺だ。すばらしいぞ!!
トレーを持って食堂の一角を占領する。
サンピン共とベスタがお茶の用意をしている。
「オットー、噂なんだが…。」
「なんの噂だ?マルコ。」
「お前が決闘するという話だ。」
おお、良かったどっかの貴族の決闘で俺の話は上がってないと思っていたが。
「ああ、そうだな決闘だな。」
校庭に来いと書いておいた。
日時は向うに任せてある。
「オットー大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫だろう。只のお遊びだ。」
「だと良いが…。相手は本気だそうだ。」
「そりゃあいい。俺も本気出せば良いだけだ。」
「オットー、死人はダメだよ?」
「ああ、勿論だ。アレックス。死人は出ないようにする。」
「なら…。良いが…。」
「カール、ジョンどっちに賭ける?」
「うん?賭けも張られているのか?」
「ああ、今のオッズは25:1オットーの方が断然上だ。」
「そうか…。ソレでは面白く無いな…。」
「おいおい、オットー。俺はオットーに賭けてるんだ。頼むぞ?遊ぶなよ?」
「そうだぞ。オットー。相手は本気だぞ?噂では名剣と鎧を手に入れたらしい。」
乳タイプ兄弟が抗議してきた。
「鎧と剣か…。」
正直この世界の鎧は…。王国では鉄の鎧が辛うじて在るだけだ…。
一部が鋼ダケだ。
恐らく浸炭技術が未熟の様子だ。
大きなモノは浸炭できない。
只の鉄の鎧だ。
斧でド付けば穴が開く…。人間ごと。
「うむ、忠告ありがとう、コレは司書さんの名誉が掛っている、本気を出そう。」
「そうだぞ。オットー。」
「門閥貴族なんぞに負けるなよオットー。」
「おいおい。カール、ジョン。オットーを炊きつけるな。」
「でも、近衛兵団が出てきたらどうするの?」
「まあ、大丈夫だろ?子供のケンカだ。親は出てこない。出てきたら戦争だ。」
「オットー。実は父上から止めさせろと手紙が来たんだ。」
「アレックスなぜ?」
「一応、オットーの家も王家の一員なんだ。相手もね。だから門閥同士の諍いは良くないって。」
真剣な顔のアレックス。
「名誉のためだ…。」
「そう、一応止めたよ?オットー。頑張って。」
タメ息を付くアレックス。
「ああ、アレックス、敵が増えても全て粉砕する、その力は有る。ソレが誰で在ろうともだ。」
「マルコ、無駄だったろ?僕達にオットーは止められないんだ。」
アレックスがマルコに語り掛ける。
「そうか、すまなかったアレックス。オットー。勝っても負けても面倒なコトになるぞ?」
「いや、すまない、アレックス、マルコ。そして皆。もう既に俺は面倒な世界に居るのだ…。」
この”ゲームの様な”と言う面倒な世界にな。
食事が終わり。
デーニックがコッソリと耳打ちしてきた。
「例の物が手に入りました。コチラです。」
皮袋の中に3個、小さな壷に蝋の封印入った物を受け取る。
「そうか、金は足りたか?」
「はい、十分すぎるほどです。3個買えました。お釣りはお返しします。」
「ソレは手間賃だ。取っておけ。使い方は?」
「壷を割れば臭いで集ってきます。蝋に火を付けると効果が高くなりますが時間が短いです。燃え尽きるまでです。」
魔物集めの臭い袋だ。
思わず口元が歪む。
「クククク。」
思わず口に出てしまう。
コレで魔物をトレインして一網打尽。
魔石と革天国だ…。
偽医者と偽鍛冶師と来たら。
もう本格的に冒険者しないとレベルが上がらないからな…。
何時までも”クラス:なし”の冒険者では他の冒険者のウケが悪い様子だ。
今朝の冒険者の反応で解かった。
実家の係り有る街道の掃除も出来る、将に俺に良しお前に良し。
誰も困らない。
「フハハハハ!!」
廊下を歩く生徒が遠巻きに見ている。
「オットーは怖く無いんだね。決闘。」
「そうだな、弟よ…。ああには成りたくないが…。」
うるさいぞ?フェンデリック兄弟。




