116.無詠唱魔法
話をしている間に第一訓練場についた。
皆が並んで前回の考査を受けている。
俺は前回の考査受けていない。
順番待ちに並ぶ、教授が来て考査が始まる。
どうやら石弾を飛ばす魔法の様子だ。
足元先の土を固めて目標に飛ばす魔法だ。
”ソドム”と言う魔法らしい。
なるほど…。土魔法で固めた石を飛ばすのか…。
「次!!…。ああ、キミか。合格にしておくが…やるのか?」
俺の順番になってテンションが下がる教授。
「オットー行きます!!」
「あーはい。」
「フン!!」
真空チューブを形成して目標をロック。
足元先の土を圧縮して混ぜ団塊にする。
均一にしないと途中で崩壊してしまうからだ。
摩擦と圧縮熱で高温になり赤く光りだす。
多量の赤外線が放出されている様子だ。
マグマ化したらしい。
ガスが発生し始めたので。そのまま真空チューブ内を手前から開放する。
亜音速程度で目標に命中して目標の鉄柱が運動エネルギーで曲がる。
「生徒オットー、アレは何だ?」
「えーっと岩を作る過程で攪拌、圧縮攪拌しすぎて摩擦熱で溶岩化したようです。」
「そうか…。まあ、良いだろう。合格だ。火を消せ。」
目標周りに飛び散った溶岩は周囲で炎を上げている。
どうやら可燃物が有ったらしい。
即席で積乱雲を作って雨を降らせる。
熱源が有るので上昇気流を作るのは容易い。
空に饅頭の様な灰色の雲ができポツポツと雨が降ってきた。
「おい、生徒オットー何をしている。」
「雨で火を消します。」
「なに?」
「”積乱雲”を作ります。雨で消すのでご安心下さい。」
「バカな…!」
呆然とする教授の前で局地的な雨を降らせる。
風に積乱雲が流されない様に。広がらない様にするのが難しい。
雨に当たりモウモウと水蒸気を上げる溶岩。
地面が濡れる程度で雲を拡散させる。
目の前には水溜りができたグランドが残る。
俺は少し濡れたが問題ない。
紳士は傘を差さない。
小雨じゃ、濡れていこう。
「鎮火しました。」
「そうか、生徒オットー、今の雨の魔法のレポートを提出しろ。」
何故かレポートの宿題ばかり溜まるな。
前のシールド魔法のレポートも書いていない。
そろそろレポート書くか?
「はあ?かなりいい加減なモノになりますが…。」
「なんだと?どういうコトだ?」
「原理が難しいのです。」
「解かった、読めるように書くコトを努力せよ。」
「了解しました。」
返答して後ろに引っ込む。
「では次の生徒。目標を変えて考査を行なう…。」
やれやれ、後ろにさがりフェルッポから借りたノートを読む。
今日の実技は”ストーンウォール”で石の壁を作る考査らしい。
なるほど、コレは得意だ。
トーチカ並の、いや、ブンカー並の強度を出せる。
楽勝だ。
「ではコレより一列に並んでストーンウォールの魔法を使い石の壁を作れ、大きさは自分の体が充分に隠れるコト。作ったらその場で座って待機。攻撃するのに耐えたら合格だ。」
「「「はい!」」」
何時もの壁を作る。
教官がソドムの魔法で岩をぶつけていく。
何個か壊れて失格に成っている生徒が居る。
しかし、伏せているので岩の破片を浴びるだけだ。
俺の石壁は問題なく弾き返した。
たかが岩弾どうと言うコトは無い。
「考査は終了した、壊れなかった生徒は合格。石壁を片付けて解散とする。壊れた生徒は次回再考査だ。」
「「「「はい!ありがとうございました」」」」
随分と早く終わったな。
流石教授、アレだけ岩弾飛ばしたのに呼吸も荒れてない。
アレックスとマルコ…。いや、ミソッカス共の岩壁は全て生き残っている。
ジョンが岩壁を崩す。
そうだ。片付けなければ。
俺は腰を落とし正拳突きを行なう。
「ふん!!」
壁にヒビが入る。拳の跡が付く。
腰の回転がコツだ。
「ふん!!ふん!!ふん!!」
ムカついたら壁を殴る。
そのために鍛えた筋肉もある。
全ては立ちはだかる壁を突き崩す為に全力を尽くす!!
「ハアッ!!」
最後の頭突きで音を立てて崩れ去る壁。
木端微塵になった。
潰れた豆や打撲を強化ヒールで直す。
周りを見ると呆然と立ち尽くす級友達。
おい、手が止まっているぞ?
ゆっくり歩きベンチで休憩する。
見渡すと訓練場内部は随分と片付いてきた。フェルッポが壁を壊せなくて困っている。
「兄さん壊れないよ…。」
「弟よ…。頑張りすぎだ。」
「そんな事言ったって…。」
やれやれ仕方ないな。声をかけよう。
ゆっくり向かう。
「フェレッポ。どうした?」
「あ、オットー。頑張ったら壊れなく成ったんだ…。」
「ほう、ソレは良いことだ。どれどれ」
サーチする。なるほど、粒子が良く詰まって結合している。
意外と悪く無い。お札のファイヤーボールぐらいでは破壊できない。
「おお、凄いぞフェルッポ。コレは俺でも壊すのが骨だ。」
「え?やった!僕凄いじゃん。」
「おいおい弟よ、そんなモノこんな所に作ってどうするんだ?」
喜ぶフェレッポと呆れるマルコ。フェレッポは意外と土の属性が有るのかもしれない。
いや、幼少の時、粘土や泥で良く遊んだダケかも知れないが。
土質に何か理解が有るのだろう。
「よし、解かった。フェルッポ。面白いコトを教えてやる。言うとおりにしろ。」
「え?オットー何?」
「まずこうやって。壁を横に肩幅より少し開いて腰を落とせ、片手のひらを壁に当てろ。肩の高さが良いな。肘は伸ばすな。」
フェルッポの前でポーズを取る。
ソレを見て真似するフェルッポ。
ちょっと姿勢がズレてる。
「ああ、足一つ分前に出て。手の平は肩の中心にして、足の中心も合わせて背筋を伸ばして。アゴを引いて。おお、そうだ。その感じを忘れるな。」
「オットー。い、意外と辛いよこの姿勢。」
「ああ基本の形だ、筋肉が足りないのだ。鍛えろ。だがソレは今は関係ない。反対側の手の平を腹の下、親指が臍に触るように軽く押さえろ。」
うん、良い形だ。空手の型に近い。
「よし、顔を壁の手のひらに向けて目を閉じろ、腹に当てた手のひらに魔力があるハズだ。暖かく感じる場合も有るが。自分の魔力を廻すつもりで。カップの中を思い出せ。」
「何か暖かい。」
「いいぞ。壁の大きさが手の平でイメージできるか?合図をしたらその壁が砂になり粒になり崩れるのをイメージして腹の魔力を通せ。そうだな…。大きな鐘が響くイメージだ。準備できたか?」
「うん。何となく壁が解かる。」
「では息を吸い込んで、吐きながら、行け!!」
「はっ!」
呼吸もタイミングも合った。
魔力もイメージも良い。
フェレッポの壁は砂の様に崩れ去った。
目を開け驚くフェルッポ。
拍手をしながら誉める。
「おめでとうフェルッポ。無詠唱で魔法を使ったぞ。」
「やった!!やったよ!兄さん!!」
「よし!では図書室へ向かおう。」
振り返ると残りのミソッカス共が新たなる壁を作って待っていた。
「オットー、教えてくれるんだろ?」
前髪を触るムカつく壁。
殴りてぇ。




