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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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その夢、見続けるか、見終えるか 三

「様子を見てみましょう」

「様子って」

 香澄は殺気こそ発していないが。貴志を本気で攻めたのは見てわかった。貴志は抵抗をするのかどうか、筆の天下を手に握るのみ。無手でもそれなりに戦える貴志ではあるが、七星剣を持つ香澄が相手では、分が悪そうだった。

「ってゆうか、死んだってどうしようもねえだろうがッ! なんでそんなに深く考えるんだよ、おめえは考えすぎるんだよ!」

 源龍は貴志のことをそれなりに見込んではいるが、甘さもあると厳しい見立てもしていた。そういったところには、苛立つものを感じていた。

(そういう源龍は考えなさすぎよ)

 と内心突っ込みながらも、羅彩女も黙っていられず。

「香澄、本気なの!?」

 と問う。貴志への刺突。自分は避けられたかどうかと思うと、肝が冷える思いだった。

 羅彩女の問いに、香澄は笑顔でうなずいた。

「笑ってんじゃないよ」

「いいんです」

 貴志が咄嗟に言う。

「ここで死ぬなら、所詮その程度のもの。さだめです」

「さだめって」

「本気で言ってんのかよ」

 とか言ううちに、香澄は鋭い刺突を繰り出し。咄嗟に貴志はかわす。

「ねえ、なんで止めないのよ」

 世界樹やマリーに言うが、誰も羅彩女の問いかけに応えない。

 ああ、もう。と思っても、自分の実力では香澄を止めることは出来ず。源龍の肩を掴んで。

「あんたが止めてやんなよ」

 と、言おうと思ったが。

 貴志の動きを見て、やめた。

 反撃こそしないものの、香澄の攻めを貴志はたくみにかわしている。

(自分の運命を試してんの?)

 貴志も貴志で人海の国の件でおおいに失望するところはあったにせよ、おめおめと自らやられることはせず。幾度も繰り出される七星剣の刺突をよくかわしている。

「やるわね、並の人ならとうに討たれてるわ」

「そういうつもりでもないけど、身体が勝手に動くんだ」

(なんだそりゃ!)

 話を聞き、源龍と羅彩女は内心突っ込む。

(やっぱり、自分の運命を試してんのね)

 突っ込みつつ。羅彩女はそう確信した。

 心の奥底で貴志は己の運命を試しているのだ。

 と思いきや。源龍は担ぐ打龍鞭の柄を強く握り締め、つかつか歩き出しながら。

 ぶうんと、唸らせた。

 源龍が戦いを目前にして黙っていられるはずもなかった。

「来るな源龍!」

 と貴志が呼びかけても、

「いいや、来るぜ。オレも香澄にゃ借りがあるんでね」

 などと言う、さらに、

「お前こそ、すっこんでろ」

 とまで言う。

「何を言うんだ」

「目の前でひかりもん見せられて、黙っていられるか」

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