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161 宴

分割したら、妙に短くなってしまいました。


すいません。まだキーボードの調子が悪くて……(ノД`)・゜・。



 こうして俺の最後の抵抗もさらっと排除され、粛々と進められる既成事実化。


 ときは、陰暦の四月末――グレゴリオ暦では、おそらく六月中旬ころ。


 遅い日没(たぶん十九時すぎ)にあわせてはじまった祝言は、合杯 ☛ 御色直 ☛ 宴会とながれるようにサクサク進む。


 どうやら今回のゴリ押し結婚式は、相当前から入念に準備・予行演習等をしていたらしい。

 どうりで要人誘拐なんて凶悪犯罪があっさり成功したわけだ。



 御色直からもどってきたネーチャンは、白無垢の花嫁衣裳から白麻の地に七宝やナデシコ・ユリなど夏の花々が金銀の糸で刺繍された小袖に赤紫色の打掛姿で再度着席。


 

 新婦がもどったのを機に、出席者の前には朱塗りの膳がつぎつぎに運ばれ、座敷内は料理で埋めつくされていく。

 

 鯛・イセエビ・(はも)海鼠腸(このわた)・焼き鳥……こっちの世界にきてからはじめてお目にかかる贅をきわめたごちそうの数々に、かろうじて残っていた反抗心もふっ飛んでいった。



 配膳が終わると、両家親族の紹介があり、例の謎のオランダ人フレデリック・ヘンドリックは、元・豊前中津藩主の奥平昌高おくだいらまさたかというご隠居さんだと判明した。


 

 それにしても、新郎側親族は池田慶宗(ツンデレ)ひとりだけ。

 新婦側は父親の島津斉彬と祖母の弥姫、曾祖叔父のフレデリックじいさんの三人。


『薩摩七十七万石』といわれる外様ナンバー2の大藩と、二十八万石の御家門大名の婚礼にしては異様なくらいの超ジミ婚だ。



 それについては、義父となったばかりのオヤジから、


「以前、容保殿は、勝手向きが苦しいため婚礼は辞退したいと言うておったゆえ、できうるかぎり簡略化し、身内だけのささやかな祝言にしたのじゃ!」と、ドヤ顔で言い渡された。



 こうして、なしくずし的に突入した宴は、酒量が増えるにしたがって和気あいあいとした空気に変わっていき、いつしか両家の面々が親しく杯を交わしあう懇談の場へ。


 そんなのどやかな風景を歯がみしながら眺める俺の横では、豪華な衣装に身をつつんだ花嫁がものすごい速度で料理を摂取しつづけている。



 ……てか、新婦って、ふつう胸がいっぱいになっちゃって、モノなんか食えないんじゃないか? 


 しかも、その合間合間にはコレラについて熱く語ってくるし。

 

 しかし、下痢だの嘔吐だの言いながら、よくメシが食えるな?


 オヤジゆずりのその図太い神経……ホントうらやましいぜ。



 そして、至近の親族席では、池田の前に陣取ったバアサンが、なにやら懇々と説教をたれており、今回いきなり騒動に巻きこまれた被害者(池田)はガックリうなだれて、そのご高説におとなしく耳をかたむけている……と思ったら、正座したまま爆睡しているようだ。


 また、そのとなりでは、調子づいたナリさんとじいが互いに差しつ差されつ盃を酌み交わし、もうひとりの江戸家老は久光似の義兄と妙に真剣な面もちで話しこんでいる。


 末席では、端座する大野をおおぜいの薩摩藩士が取り囲み、「ささ、一献」攻撃を仕かける。

 大野のオッサンキラースキルはいまだ健在らしい。


 

 

 ――――でも、このとき俺は想像もしなかった。


 こんなカオスな祝宴を、後年、自分が慟哭とともに回想する日が来ようとは――――

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