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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
93/207

開戦

http://www.nicovideo.jp/watch/sm31137036

【FGO】Epic of Remnant / EXTRA 通常戦闘【BGM】

MD215年 8/5 12:00


 正午。

 六つの太陽が中天にかかり、世界を明るく照らす。

 その中でも一際際立って目立つ、黒い太陽を天照はハワイの水面の上で眺めていた。


「黒の太陽、地球上に満ちる黒の霊力を吸収し続けその身に蓄える穢れた太陽」


 天照は憎々しげに太陽を見つめながら、その長い黒髪は海風に吹かれ、靡く。

 そんな彼女の髪が一段と強く風に吹かれると、彼女の後方に巨大な下半身は蠍、上半身が人型の黒い巨大ロボットが海面に着地する。

 そのロボットは無数にある脚の一つ一つが水面に触れてはいるが海に沈む事は無く、アメンボの様に浮かび上がっていた。


「おっと、黄昏るのを邪魔したか? まあ黄昏るって時間でもねーが! ガハハハ!」


 ハワイ沖に軽薄な声が響き渡る。

 山坂、人類保護計画のトップ、管理者を名乗る三名の内の一人。

 他人の不幸を喜び、自ら以外の優秀な存在を嫌う……人間の下劣な部分を集めた男。

 そんな男の登場にも天照は顔を一つも歪ませる事無く、無視を決め込む。


「ふん、無視ってか? 今更そんなささやかな反抗してもお前の立場は変わらんのだがな、つーかこの間永村に躾されてたってのにまだそんな態度取るのか」


 山坂は自分を無視する天照が気に入らないのか、嫌味を存分に吐き出す。

 だがそれでも天照は動かず、彼女と山坂の乗る機体の間には風の音だけが鳴り響いていた。


「……ちっ、てめー今回の作戦の内容は頭に入ってるんだろうな」


「あら、管理者様居たの~? 天ちゃん気づかなかった~、作戦の事ならバッチよバッチ~、って返事でどう?」


「なるほど馬鹿にされてんジャネーノ!?」


「それに気づくとかマジ流石人類最高の頭脳パないわね~!」


「へへっ……照れらぁ」


「褒めてないわよ」


「えぇ……」


 暫くして、沈黙に耐えられなくなった山坂は天照に今回の作戦について確認を行う。

 すると天照はわざとらしい軽薄な態度で山坂に返し、山坂を小馬鹿にする。

 だがその言葉を真に受けたのか、山坂は指で鼻を擦る。


「っとこんなアホな事をしている場合ではない、そろそろ時間だ、準備を始めろ」


「本当に良いのね? 他の場所や生態系にどんな変化が起きるか、それに中に居るもう一人──」


「今更だな、地球を一回更地にするのが僕等の仕事なんだ、大体この程度で死ぬんなら田崎は管理者には相応しくない男だったということよ」


 そんな話をしていた二人だったが、山坂は時間に気づき天照へ指示を飛ばす。

 すると嫌味っぽい顔をしていた天照の顔が懐疑的な顔へと変わる。

 これから行う行為への不安がそうさせているのだろう。


「やれ」


 だが山坂はそんな彼女の言葉を遮り、実行命令を下す。


「……後で恨まないでよね!」


 山坂からの命令が下り、少しの間を置いた後天照は両手を胸の前に持っていくと見えない玉を抑えるような形を作る。

 天照が手を構えると、両手の間の空間に少しずつ白い霊力が集まっていき次第に小さな光の球が形作られる。


八咫鏡やたのかがみよ、我が意思に応え、光を束ねよ!」


 そして小さな球は天照の言葉によって少しずつ手の間から前に進み、海面に浮かぶ。

 それはまるで蛍の光の様に小さく儚い光だった。

 光の球は天照の手から離れると上空へと舞い上がり、直ぐに見えなくなるかと思ったがその光は六つの太陽が中天にあっても尚認識する事が出来た。


「始まるか! 結束の力ってのを実際に見るのは初めてだが……楽しめそうじゃないか!」


「結束し……我が威を示せ!」


 天照の一連の動作を、光の球が舞い上がっていく様を見ていた山坂はとても楽しそうな声で叫ぶ。

 山坂が眺める中、光は更に舞い上がっていき……かなりの高さまで上昇すると突然球から光の帯が伸び、空中一体に張り巡らされる。

 それはまるで鏡。

 人間が自身の姿を見るときに使う、姿見そのものだった。


「管理者からの命令を復唱、『ハワイ全域を太陽光にて蒸発させる』!」


「おう行け行け! どうせ全部ぶっ壊すんだ、ド派手にやっちまえー!」


「神の怒り/Wrath of God!」


 巨大な鏡が上空に作られると、天照は右手を頭上に広げる。

 そして、ゆっくりと手首を海面に叩きつけるように曲げた。


────────────────────────────────────────


 まず最初に、地球上で異変に気づいたのはハワイからの距離が近いアメリカ。

 アメリカにあるサンディエゴにて漁をしていた漁師だった。


「なぁ……あっちの方、何か光ってねえか?」


 一人の漁師がハワイ方面を指差し、額に手を当てる。


「あぁ? お前またそんな事言って仕事をサボろうたってそうはいかねえぞ、三時までに荷揚げ終わらせないとベスボルが始まっちまう」


「いや、何もサボろうなんて思ってねぇって! ほら見ろって! あっち! すっげぇ光って──」


 もう一人の漁師は仲間の言葉を信用せず網から魚を降ろし続ける。

 そんな仲間にサボりを疑われた漁師は、仕事を続ける仲間の肩を叩きながらハワイの方を見ろと口を再び開くと、そのまま言葉を続ける事ができなくなってしまう。

 原因は二つある。

 一つは強風により彼と、その仲間が船から吹き飛ばされた事。

 そしてもう一つは、ハワイの海水を一瞬で蒸発させた事によって発生した急激な熱である。

 その風と熱はサンディエゴを通り過ぎ、アメリカ大陸の東端、マサチューセッツ州にまで届いた。


────────────────────────────────────────


「おーおー、凄いもんだな」


 山坂は巨大ロボットのコックピットでエアコンを最大で利かせながら、ハワイ沖を眺めていた。

 現在のハワイは強烈な太陽光が降り注ぎ、海水や地上に残っていたハワイの残骸を溶かしていた。

 その様は原初地球を何処と無く彷彿とさせ、山坂の口角が少し上がる。


「流石は長老エルダー級、結束の力を持つ女だ……いや男か?」


 両手を打ち鳴らしながら、山坂は内心冷や汗を掻いていた。

 もし、日本で初めてあの女と邂逅したときにこの力を使われていたらと。


「地球上に降り注ぐ太陽光線を結束……束ねる事でその熱を意図した場所に送り、全てを焼き尽くす」


 成る程、確かに太陽神の名を語るだけはある。

 そう山坂は頷く。


「更には塵の様な霊力を結束することで自身や庇護対象を護る……」


 無論この女が自らの領土で使うわけは無いとは山坂は思っている、あくまでも当時は推測からの考えであったが。

 結果的にその推測は合っており、山坂は卑劣な手段で捕縛に成功したが……。

 

「それでもゾっとするな、あの時本気を出されていたら……止めるのにうちの資源の何十%を使った?」


 そう考え、山坂は身震いする。

 資源の浪費にではなく、それに対して切れるある男に対してだ。

 もし天照を止める為に本当にエクィローの資源を数十%使ったすれば、今山坂はこうして地上で遊ぶ事は無かっただろう。

 即座に管理者会議が発生し、三神が起動していたのは間違いないからだ。

 

「……ってことは、本気を出さなかった奴とそれを捕まえた僕マジ優秀ってわけでは?」


 等と顎に右手を添え、ほくそえむ山坂に突如振動が走る。

 その振動で山坂は体勢を崩し、操縦桿に頭部をぶつける。


「打ち消し呪文……!? 嘘、こいつ魔法も使え──」


「いってぇ!! くそ、何だって────なにぃ!?」


 打ち付けた額を擦りながら、天照の声に全方位モニターに顔を向ける山坂。

 その瞳に映ったのは巨大なミサイルのレンズだった。


「やぁ」


 思わず山坂はミサイルへ向け左手を挙げ、直後に爆炎が視界を包んだ。


────────────────────────────────────────


 オケアノス内部。

 オケアノスは全長八キロの巨体を有しており、その内部は口、食道、胃、ゴミ捨て場、人魚達の住むコワーラ、貯蔵庫、交易口、司令室、動力炉という順番に連なっている。

 その中にある司令室に、歓声が響く。


「やりました! オケアノスの妨害呪文、敵神体の行動を抑制! 同時に敵巨大生物への着弾、沈黙を確認!」


「浮かれないように、そのまま観測を続けなさい。 敵神体には間断なく砲撃と妨害呪文を」


「了承です!」


 歓声が響き、司令室に居た人魚達はモニターを見ながら隣の人魚と手を取り合い、天照が放った魔法をオケアノスが寸前で打ち消した事に喜ぶ。

 そんな浮き足立つ人魚達へマルフォスは諫言すると、手元にあった黒電話の受話器を取る。


「私です、調整班、トークンの準備は?」


「これはこれはマルフォス様、Kの準備でしたらいつでも大丈夫でございます。 随時増産を掛けている所ですので、今日だけで20体は産めるかと」


「宜しい、では炉は常にその状態を維持、八割をオケアノス制御へ回しなさい、残り二割はオリジナルの回収の為に資材保管庫へへ」


「オリジナルの、ですか? しかしオリジナルが居なくてもKの量産は……」


「口答えですか? コワーラにおける最高司令であるこの私に対して?」


 電話先に居る人魚は、その言葉で自分が何を口走ったのか知る。

 というよりも、電話先の相手の機嫌を。

 それに気づいた人魚は慌てて発言を訂正しようとするが、それが遅すぎた事をマルフォスの発言から知る。


「残念です、貴方は優秀だったのですが……ですが次の貴方は今の貴方よりも上手くやるでしょう」


「そんな、そんなマルフォス様……! 失言だったのは謝罪いたします、ですのでどうか──」


「炉にくべなさい、その後トークンを生成し今の職務に戻すように」


 懇願の言葉を述べる人魚を無視し、マルフォスは受話器を置くと伝声管に近寄り指示を出す。

 すると伝声管の向こうから了解の意を告げる言葉と、先ほどの人魚の悲鳴が聞こえてくる。


「では皆さん職務に戻りましょう、オケアノスを維持しコワーラを護る為に……ね」


「りょ、了承しました!」


 伝声管から離れ、ゆっくりとモニター席に座る人魚達へ振り向くとマルフォスは冷ややかな笑顔で告げる。

 その笑顔に人魚達は背筋を強張らせながら、指示に対して了承の意思を示すとモニターへと顔を戻す。


「……さて、それではオケアノスを久しぶりに起動するとしましょうか」


 マルフォスは司令室最上段にある大きな腰掛け椅子へと座り、モニターへ目を向けた。


「世界平和の為に」


 そのモニターには世界地図と、複数の赤い円が描かれているのだった。




ハワイ時間なので月曜日投稿みたいなものなので初投稿です

気がついたら書き始めて一年経っててびっくりしました、はえーすっごい

執筆力は成長しましたか…?(小声

出来ませんでした(大声


あっ、そうだ(唐突

僕の大好きなEVER17の舞台と同じ年で同じ日が5/1から5/6なので、皆も是非やってくれよな~

その際はネタバレは見るなよ!絶対だぞ!!!!!!!1111

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