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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
東京侵攻編
49/207

青森へ出たら

MD215年 5/29日 16:37


 3名と一機が地下道に入ってからおおよそ一時間後、彼等は地下道を抜け地上に出ていた。

 地上は廃墟が無数にある以外は殆ど函館と変わらず、だが何処か函館とは違う雰囲気を醸し出していた。

 そんな中アデルとアレーラは見知らぬ地へ出た事で、興味津々といった形で周囲を見渡していたが、山坂だけは一人肩で息をしていた。


「ま、まさかあんなにゴキブリが多いとは……精神的に堪えたぜ」


 山坂はそう言うと、両手に構えた銀色の拳銃二挺を腰のホルスターへと納める。


「ハハハ、偉そうな口調で俺達に付いてきた割にだらしないな? 管理者様よ」


 その山坂の様子に、アデルは後ろから近寄ると声を掛ける。


「うるせぇよ! ちょっと生理的にびびっただけだ!」


 山坂は膝に手をつきながら、顔だけアデルへと振り返る。

 その表情はやはり辛そうだ。


「口で強がってもその顔じゃあ怖くねえな? しかしあんな虫が嫌いだとか随分軟弱なんだな管理者様は」


 山坂の反応にアデルは笑いながら返すと、山坂を詰る。

 その言葉に山坂の表情がげんなりしたものへと変わる。


「いや、逆に何でお前等はあれに慣れてるんだよ……お前達のそういうところが僕は怖いです」


 山坂とアデルがそんな会話をしていると、上空から羽ばたきの音と共にペスが山坂の前方へ着地する。


「周囲の索敵終了しました、敵性反応周囲10キロ圏内には存在しません」


 山坂はペスへと顔を向け、言葉を掛ける。


「うむ、ご苦労……周囲に村や魔族が居そうな拠点とかは発見できたか?」


 その問いにペスは首を縦に振ると振り返り、自身の後ろ……南東を指し示した。


「はい、青森県むつ市があった地点に小規模ではありますが村を発見しました」


 山坂はそれを聞くと、息が整ったのか姿勢を正し背中に背負った登山鞄からタブレットを取り出し地図を開く。


「うむ、地理的に海を泳いで行ったんでも無い限りはお前等が探している男はその近辺を通っているはずだろう」


 そして地図を確認しながら、アデル達が追う男の行動経路を予測する。


「とりあえずそのむつ市までは行くか、情報収集の観点からも北海道以南の文明レベルを目で見ておくのも大事だからな」


 山坂はそう言うと、鞄にタブレットを再び仕舞う。

 その発言を聞きアデルは左手に握った右手を打ち付ける。


「よっし! んじゃ次の行き先はそのムツシってにさっさと行くか!」


 そしてアレーラの方を振り向くと、右手を振って町を眺めていたアレーラを呼ぼうとすると山坂がそれを止める。


「気が早いなお前……流石に今日直ぐに行軍なんてしねーぞ?」


 その言葉にアデルは意味が分からないといった顔で山坂へと振り返る。


「あぁ? 何でだよ、行き先分かったんだろ?」


「そりゃ分かったが時間が時間だ、これから陽も落ちてくる、地理も把握してない上に見通しの効かない夜に移動なんて普通しないのは分かるだろ?」


 山坂に諌められ、アデルは納得したような顔をする。


「確かに……すまん、気が逸った」


「ってわけで今日はこのまま使えそうな廃墟の中調べて、お前等はそこで野宿だな」


 アデルは納得しそうになるが、お前等はという単語に違和感を感じる。


「しょうがねえ、そうするか……ってお前等は? あんた……あぁいや管理者様はどうすんだよ」


 アデルの問いかけに山坂は腕組をすると。


「脳味噌筋肉かと思ったが割と良い所に突っ込むなお前、まあ僕の事は気にするな、この体のことはな」


 アデルはその言葉に疑問を感じ、更に追求しようとするが。

 山坂はその追求を避ける為か一人で歩き出す。


「おらおら、さっさと寝床確保しないと寝れないぞてめーら」


 そしてそのまま廃墟の町へと一人で消えていってしまう。

 その場にはペスとアデルだけが残り、二人は顔を見合わせる。


「行っちまったな、追わなくてもいいのか? 管理者ってのは大事な役職なんだろ?」


「私はあくまでも管理者を補助する立場ですので……管理者達の行動に口を出す権利は持ち合わせていません」


 アデルはペスへ尋ねるが、ペスは諦観が篭った声でアデルへと返す。


「ふーん……とりあえず、野営場所確保するか」


「それが最も懸命かと、山坂様が仰った様にそろそろ陽も落ちます、あまり夜に行動するのは危険ですので」


「だな、おーいアレーラー!」


 その後、アデルはアレーラへと声を掛けると使えそうな廃墟を見つけそこで野宿をするのだった。

 そしてその日、結局山坂は野宿場所へは現れなかった。


─────────────────────────────


 翌日、アデル達が目覚めて岩パンと水筒に納められた水を飲んでいると山坂が現れる。

 アデルは山坂の事を心配していたのか、何処へ行っていたのか尋ねるがお前には関係ないの一点張りで突っぱねられてしまう。

 そんな状態で、3名と1機はむつ市へと移動を開始したのだった。

 むつ市へ移動する間もアデルはめげずに山坂へと声を掛け、コミュニケーションを取ろうとするが山坂はそれを突っぱねる

 それを朝昼と繰り返した日の晩に、アデル達はむつ市外縁へと到着した。


「やっとそれっぽい場所に着いたか、これで赤毛のアホに絡まれなくても良くなるな」


 山坂は外縁へ到着すると開口一番にアデルへの不満を漏らした。


「そんなに照れなくてもいいだろ管理者様よ~」


「照れてねえよ!? むしろ鬱陶しいんだよ!」


 うんざりした顔でアデルへと返すと、山坂は周囲を見渡した。

 山坂達の周囲には畑が広がっており、畑には何人か農作業を切り上げて帰ろうとしている村民達の姿が見て取れた。


「ふむ、現地魔族どもか……」


 山坂は後ろへ振り返り、アデルとアレーラを視界に納めると二人へ告げる。


「うむ、ではお前達の本分を成し遂げるが良い」


「えっと、どういうことですか?」


 アレーラは不思議そうな顔をしながら山坂へと尋ねる。


「僕は魔族とは会話したくないのでお前達が行くのだ、海外ならいざ知らず同じ日本なら現在まで生きてきたお前等の方がスムーズに会話も出来るだろうしな」


「あんたここまで着いてきてそんな事言うのか……」


 アデルは呆れた顔をするが、山坂は真面目な顔で返す。


「当たり前だろうが! 僕はあくまでもペスの動向を見に来たのであって、お前達の情報収集任務を手伝うためじゃあない」


「はぁ……」


「と言う訳で本来の仕事を果たすが良い」


 そういうと、山坂は親指で後ろを指し示しアレーラとアデルの二人を急がせる。


「おら、早くしろ、あいつ等仕事終わりか知らんが村に戻ろうとしてるぞ」


「しょうがねえな……アレーラ、行こうぜ」


「あ、はい!」


 急かす山坂にアデルは溜息を付くとアレーラと二人で村人達の方へと走り始める。


「ワハハ、そうだ! この僕の為に働くのだ!」


 情報収集の為に走っていく二人を、山坂は笑いながら見る。


「確かにあの二人なら私や山坂様が行くよりは怪しまれずに情報収集が行えるとは思いますが……もう少し良い伝え方があったのでは?」


 そんな山坂にペスは直立不動の姿勢で問いかける。


「……お前、最近調子に乗ってないか? 機械風情が人格でも得たつもりか? 黙って仕事してればいいんだよお前は」


 ペスの言葉に苛立ったのか、山坂はペスの顔も見ずに悪態を吐く。


「差し出がましい発言でした、申し訳ありません」


「お前という機能は僕達には必要なものだが……お前という個は僕達には必要ないんだ、それを忘れるなよ」


 山坂はそう言うと、腕組をしながら右足をパタパタと動かしアデル達が聞き込みを終えるまで不機嫌な顔で立っていた。


─────────────────────────────


 山坂とペスが言葉を交わしている少し前、アデルとアレーラは村人達に話を聞くことに成功していた。


「は~、あんたら北の地下道通ってここまで来たんか……そりゃご苦労様じゃのう」


 その農民、妖狐族の男性はアデル達が何処から来たのか答えるとそれに驚き、笑顔を見せる。

 妖狐族は顔が狐である為、その笑顔は肉食動物が捕食を行う寸前に見せるものに近いがアデルはそれに臆さず笑顔を返す。


「あの、それで私達人を探してるんですけど……」


 とアレーラはベルを攫った男とベルの顔が描かれている二枚の紙を妖狐族の男性へと手渡す。

 妖狐族の男性はそれを少し眺めると、背後の仲間であろう農民達へその紙を見せる。


「ふぅむ……どうだ? おれぁ知らねぇがお前等見たことあるか?」


 仲間の農民達は手渡された紙を交互に渡しては見ていく。

 一人、二人と知らないと言った顔で残りの仲間へと渡していくが途中、一人のオークが声を上げる。


「おぉ、これならおでしっでる」


「ほんとですか!?」


 アレーラが思わず声を上げると、そのオークは頭に被った三度傘を少しずらし汗を拭うと頷いた。


「ほ、ほんどだ……ごれ、ごのあいだ村の中を通っていった伊織様だ」


「あー、これ伊織様かぁ……そういえばそれっぽく見える気もするなぁ」


 オークの声に、残りの農民が挙って男の顔が描かれた紙を見つめると互いに頷きあう。


「伊織?」


 アデルは聞き覚えの無い名前に疑問の声を上げる。


「あぁ、こりゃ伊織様じゃねえかな」


「伊織様って言やぁあれだ、ソーリ様の筆頭侍様だろう?」


「ソーリ?」


「筆頭侍?」


 そして二人は聞き覚えの無い単語に同時に首を傾げる。


「何だ、あんたら知らないのか」


 二人が首を傾げる様子に、農民の一人が声を掛ける。


「まあこの人達は北のあの通路を通ってここまで来たって話だから知らんくてもしょうがなかんべ」


「北の道を通ってきた!? は~……命知らずも居ったもんじゃのう」


 農民達がアデル達が何処を通ってきたかの話で盛り上がる中、アデルは割ってはいる。


「あー、色々とその話はしたいんだがその前に色々教えてくれないか? その伊織って人やソーリって奴について」 


「おぉ、ええでよええでよまず伊織様についてだがなぁ」


 そして、10分ほどが経ち──


「なるほど……色々ありがとう、助かったよ」


「ありがとうございました!」


 とアデルとアレーラは農民達へと頭を下げると、山坂とペスの元へと戻っていく。


「おー、兄ちゃん達も人探し頑張ってなー!」


 二人が戻っていく中、農民達は二人へと手を振り応援するのだった。

 そして二人が戻るとそこには不機嫌な顔の山坂とその背後に佇むペスが待っていた。


「おーい、色々調べてきたぜ……って何であんたそんな不機嫌な顔してんだ?」


 アデルが山坂の顔に気づき、質問する。


「誰があんただ! 管理者様だろうがボケ! それより情報は集まったのかよ」


 と罵詈雑言が飛んでくる。


「え、あの……」


 いきなりの罵詈雑言に二人は驚くが、アデルは報告を優先する事にした。


「あ、あぁ……とりあえず調べてきたぜ」


 そしてアデルは農民から聞いてきたことを話し始める。


 ・ベルを攫ったのは伊織と呼ばれる侍である。

 ・伊織はソーリと呼ばれる人間の部下であり、筆頭侍という要職に就いている事。

 ・ソーリと呼ばれる人間は東京を治めている人間であり、このむつ市にまで支配の手が伸びているということ。

 ・そして伊織はこのむつ市を更に南下して、東京まで帰ると村人に話していたと言う事。


「……以上の四点がさっきの村人から聞いた情報だ」


「なるほど、村人から聞きだした話にしては上出来だな」


 話を聞き終わると、山坂の苛立っていた顔も少しは落ち着いたのか普通の顔に戻っている。


「はい、それでその……ベル隊長を助ける為に南下したいのですが……」


 とアレーラは怯えながら山坂へと伺いを立てる。


「あ? 何で俺に聞くんだ?」


 その問いかけに山坂はきょとんとした顔で答える。


「え? だってその、貴方がこれからどうするかを決める権利を持ってるんじゃないんです、か?」


「そんなもん俺が持ってるわけないだろ、ってあぁそうか、そこら辺決める前に出発したのか」


 と山坂は出発時のことを思い出し、手を打ち鳴らす。


「いいか? 何度も言うが俺はただ同行してるだけだ。 これからどうするのかはお前等が決めろ」


「ってことは、あんたに一々今後のやり方について確認を取らなくてもいいってことか?」


「別に構わんぞ、やばそうなら俺は逃げるし 後あんたじゃなくて管理者様な」


 山坂は呼び方についての指摘を行うと、アデルの言葉を肯定する。

 そしてアデルとアレーラは顔をお互いに見合わせると頷きあう。


「よし! なら今後の方針は決まったな!」


「はい! このまま南下して、ベル隊長を助けに行きましょう!」


「「おー!」」


 アデルとアレーラは同時に右手を天空へと突き上げる。

 ひそかにペスもそれを行うと、山坂から冷静な突込みが入った。


「おう、頑張れよ ところで物資の補給や移動方法について宛はあんのか? どう考えてもこっから東京まで徒歩での移動は無理があると思うんだが」


 そして、二人は拳を突き上げたまま暫し固まるのだった。

 それを見た山坂は、今後の事を考えて不安になるのだった。



イースⅧをやっていて遅れたわけではなく仕事があったりMTGの大会があったりFGOのシナリオをやっていたりで要するに遊んでいただけなのを此処にご報告いたします 投稿ペースは不定期ですが一週間に一話は上げる方針は堅く守ります(鉄の誓い)


次:移動方法を確保したら投稿します


ニトクリスちゃん目当てでガチャったらランスロットとデオンちゃんが出てきて困惑したので初投稿です

叔父マンどーすっかなー、俺もなー

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