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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
中国編
193/207

宣戦布告されたら

https://www.youtube.com/watch?v=yha5sl_2CWc&list=PL4z6jREWaZnPoO_wNRoQBi3KDdPTTTLGI&index=9

VyVy

MD215年 11/22 18:12


 エクィロー。

 時の果てを関するその施設は選りすぐりの人類千名と、それを管理する管理者の三名によって運営されている。

 対魔族殲滅の要にして、人類復興の鍵でもあるその場所は現在慌ただしさに包まれていた。


「どうしたよォ、揉め事かァ?」


 警報の音で昼寝から目覚めた山坂が、永村へ独房から通信を送った。

 永村はそんな通信には目もくれず、計器の確認を行っている。


「そこは、あぁ……でももう済んだんだ、もう少し早ければ見れたのによぉ。 って言う所だろうが!」


「はいはい、今は本気で忙しいから手伝わないなら消えてね~」


「……今行く、何があった?」


 いつもは気の抜けた顔をしている永村の表情が、今回は一変していた。

 それに気づいた山坂は椅子に掛けたままの白衣を手に取りながら、真面目な表情で尋ねる。


「マンジェニがロシアから消えた」


「移動した……ってニュアンスじゃねえな? 消失したのか?」


「そうなるね、私が見ていた限りでは突然反応が消えた形になる」


「田崎はどうした、現地で自慢の義体で遊んでた筈だが? 今回はあいつが遊ぶ番だったろう」


「あっちはペスに任せた、どうやら現地で思い出の品を見つけたらしいしね」


 ふ~ん、と興味のなさそうな返事を返しながら山坂もウィンドウに向かい合った。

 

「で、現状お前はマンジェニの行方探しか?」


「そうだね、タリブとの共鳴を使って探してるところだけど……他にも幾つか君に調べて欲しい点があるんだ」


「皆まで言わなくてもいい、太陽だな? だがこりゃなんだ? なんで5つの太陽が地上に引き寄せられてやがる」


「それがわからないから調べて欲しいって言ってるんでしょー」


「そう言われるとそうなんだが、こりゃ参ったなぁ!」


 山坂はいつもの調子で笑みを作りながら返すと、次の瞬間には真面目な顔付きでウィンドウに向き合った。


「…………なぁ」


「まだ作業初めて一分経ってないよ~?」


「いいから聞け、実際の所あと少しで地上制圧が出来る訳だが……計画は本当に実行するのか?」


「あ~、これ秘匿回線になってる?」


「もちのロン」


 永村は手を止めずに尋ね、山坂もまたそれに手を止めずに頷いた。


「君はどうなんだい山坂君、君は人類ラブって柄じゃないだろう?」


「質問に質問で返す間抜けかてめぇはよぉ~、そう言う所アタシ嫌い!」


「なら私も答えない~」


「ちっ……」


 二人の作業の手は止まらず、それどころか彼らの周囲に浮かぶウィンドウの数が一つ二つと徐々に増えていく。


「僕は好きにしたらいいと思ってる、お前の言う通り僕にとっての人類は一人だけだからな」


「そっか」


「お前はどうなんだよ、永村。 田崎は当然実行派だろうが」


「私は……おっと、どうやら雑談タイムは終わりみたいだよ」


「あん? てめぇ自分の答えを言わないとか────」


 あからさまな不満顔を浮かべた山坂は、永村が回してきた映像を見て言葉を止めた。

 

「…………地上の制圧が済んでない地点、残り何か所だった?」


「ロシアは全域が塵になったから中国、イギリス、オーストリアだね」


 ウィンドウには、二人の男が映っていた。

 一人は牛の頭部と人間の肉体を持つ、所謂ミノタウロスと形容される様な容姿の巨漢。

 もう一人は……かつて南極で声だけ表れた男であり、山坂がこの世で最も嫌悪する人物だった。


「クレケンズ…………!!」


「カムサの起動は許可できないよ山坂君、これ以上は本当に君を処断しなきゃいけなくなる」


「くそっ!」


「冷静になりなよ、彼を殺すのは何時でも出来る。 それよりも……」


 永村は冷ややかな目で、ミノタウロスとクレケンズが立つ場所を見ていた。

 二人から徐々にカメラを離していく。

 最初は黄金色の光を放つ地面にしか見えなかったが……カメラが離れていくごとにそれは単なる地面ではなかった事に彼らは気づいた。


「龍? ありゃ、龍か!?」


「こりゃ凄い……大きさもだけど長さも中国全部を覆える位は長いねこれ」


 二人はその威容に思わず息を呑んだ。

 巨大な頭部を映しきるには先ほど映っていた二人が映らなくなる程度までカメラを引かなければならず、顔が映った程度ではその龍の全体は1%も収まっていなかった。

 その黄金色の竜は、5つの球を顔の周囲に浮かべながら荘厳なオーラを漂わせていた。


「まずは────」


「「!?」」

 

 龍が口を開き、話し始めた。


「礼を言おう──朕を目覚めさせた事、大儀であった──」


「なんだこいつ!? こっちを認識してんのか!?」


「みたいだね、頭の上の彼も手を振ってるよ」


「殺す!!!」


 笑顔で手を振るクレケンズの顔を見て、山坂の顔が即座に真っ赤になった。


「落ち着きなって……龍がまだ何か話すみたいだよ」


「朕を墜としたる鳥は失墜し──朕を止めたる者は居ない──故に、初代魔国中央総書記黄龍は此処に魔族の国家再興を宣言する」


「やだー、あたしそれ千年前に同じこと言ってる人動画で見たわ~」


「っていうか本人じゃない、あれ?」


「え、デジマ?」


 呆けた顔になる山坂を余所に、黄龍は言葉を続けた。


「そして、これは朕からの返礼である」


 黄龍の周りに浮かんでいた白い球が天高く舞い上がる。

 それはそのまま大気圏を突破し……エクィローのある月目掛けて球の内部からある物を発射した。

 先ほどロシアの大地から消えたマンジェニである。


「はぁっ!?」


「不味い、ペス、対質量防御を展開!」


『展開用意、3…2……間に合いません、衝撃来ます!』


 エクィローはこの日、初めて外部からの攻撃を受けた。

 それも自らが地球に向けて放った三本の矢の一つを返されるという屈辱付きで。


「ぐおおっ!」


「くっ、マンジェニが居なくなったのは奴が球の中に封印していたからか……! 山坂君、無事かい!?」


「俺はいい、カムサの被害は!? カムサは無事か!!」


『内部の被害を算定中…………』


「遅い、俺がやる!」


 山坂はキーボードを叩き始め、少しして安堵の溜息を吐いた。

 だが直ぐに次の衝撃が山坂の安堵を打ち砕いた。


「ちっ、またか! 五つの太陽オールサンズはどうした、防げないのか!」


『黄龍と呼称する個体が持つ球に引き寄せられているため、地球に落ちるのを防ぐのが現状の精一杯です』


巨大戦車ジャガーノートを地上に送り込め、少しでも妨害して態勢を立て直させろ! 異存はねえな永村!」

  

「異存どころか、もう選定は終わってる、順次転移門プランナーポータルで送り込むよ」


「上等!」


 マンジェニを射出した後、白い球はマンジェニに正面からぶつかり飢餓の神を押しつぶすように何度も何度も月面へぶつかっていた。

 その振動の中、永村は中国へ向け巨大戦車を十機程転送する。


「木偶か──小さいな」


「ガッハッハ、ワシが行こう! クレケンズもどうだぁ!?」


「僕は遠慮しておくよグラーバ、存分に……もう行ったか」


 クレケンズの言葉を最後まで待たずに、ミノタウロスは黄龍の頭から飛び降りていた。

 黄龍のサイズが中国の国土外縁部を全て覆える長さであるのに対し、グラーバと呼ばれた彼は身長3メートル程度の一般的な巨漢と呼ばれるサイズである。

 当然、大きさが10メートルを超える巨大戦車から見れば小人の様に小さい。

 だが……。


「力比べか、ワシ相手にはちと貧弱すぎるのぉ!!」


 両腕を打ち鳴らしながら、悠然と歩くグラーバに巨大戦車の一機が胸部に内蔵されたミサイルを数発発射した。

 白煙をたなびかせながら近づくミサイルを彼は片手で止めると、それを左から一回転しながら巨大戦車へ投げ返した。


「試合開始じゃあ!」


 ミサイルを放り投げると同時に、空いた右手で地面を殴りつけその反動でグラーバは飛翔した。

 其処からは一方的な破壊が起こっただけだった。

 黄龍への攻撃を行おうとしていた巨大戦車は一分も経たない内に全滅した。


「ガハハハ! 鉄屑を鉄屑に戻すだけならワシの動物達だけでよかったのぉ!」


 グラーバは笑いながら、自らの数倍の大きさがある巨大戦車の頭部を放り投げ、黄龍の頭部まで再び跳躍した。


「お疲れさまでした」


「おう、クレケンズ、お前は相変わらずじゃなぁ! たまには動かんと腰をやらかすぞぉ!」


「グラーバが僕の分の仕事も残してくれればいつでも働きますよ」


 右目に付けたモノクルを左手で位置を調節しながら、クレケンズは笑った。


「さ、黄龍。 今日の所は此処までで……」


「そうだな──朕もまた黄泉返りをしたばかりである、今宵の戯れは此処までとしよう」


 クレケンズの言葉に同意すると、黄龍は空中に浮かべていた体をゆっくりと中国の大地へ降ろした。

 そして頭部をゆっくりと大地へ寝かせると瞼を閉じ、眠り始めるのだった。


「……さて、まだ見てるかな山坂君」


 クレケンズは未だ自らを映している衛星へ向けて、顔を上げた。


「今日は此処までだ、其処にずっと引きこもっているつもりならこのまま僕達の勝ちにさせてもらう。 それが嫌なら……」


 と、そこで彼は言葉を切った。


「待っているよ、君たちの……いや、君の事をね」


 その言葉を区切りに、クレケンズとグラーバは黄龍の頭部から姿を消した。

 それを見ていた山坂の叫び声が、エクィローに響いた本日最後の言葉になった。



熱い感想の波に乗せられてやる気になったので初投稿です


黄龍/Zodiac Dragon 緑緑赤赤青青白白黒黒


伝説のクリーチャー:ドラゴン


飛行、警戒、二段攻撃、呪禁、絆魂

このクリーチャーが戦場に出た時、あなたは望むパーマネントを5つ選び、それらを追放する。

その後あなたは望むパーマネントを5つ選ぶ、それらの上に+1/+1カウンターを合計5つ望むように割り振ってよい。

その後あなたは望むプレイヤーを最大5人選ぶ、そのプレイヤーはカードを5枚引き、5点回復する。

その後あなたは墓地からパーマネントカードを5つ選ぶ、それらをあなたのコントロール下で戦場に出す。

プロテクション(あなたの対戦相手)


10/10


「朕が国であり、朕が法である」

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