餌をくれる奴と出会ったら
https://www.youtube.com/watch?v=RWWE85mqiGo
アリスサウンドアルバム Vol 31 ランス10 決戦 Disk 1 04 ふしぎエリア
MD215年 11/14 06:43
「ウ、ウ、ツイ、タ!」
「………………はえ~」
ロシアに来てから三日目、前日に出会った不思議な少女ターモに案内を任せ、二人は核が落ちて荒廃した歪なロシアを旅し……。
ついに目的の場所まで到着した……筈だった。
「……のう、ここって」
「あぁ、何かの施設……か?」
「ココ、ターモ、ノ、イエ!」
「家、ねぇ……」
田崎と芽衣子の二人を出迎えたのは、ぼろぼろに朽ちた白塗りの門であった。
門の上にはロシア語で名前が書いてあったが、歯抜けが多く名前を読み取ることが出来ない。
また門の奥には同じく白塗りの二階建ての豪邸が立っており、外壁の一部などが壊れている様子が垣間見えた。
「ウ、オク、エサクレル、ヤツ、イル」
「餌をくれる奴? 親ってことかのう」
「親なら親って言わねえか、普通」
「ウ?」
首を捻るターモに、二人は顔を見合わせながら互いに首を捻り、最終的には中に進んでいくターモに付いていくことにした。
「しっかし中も大分ボロボロだな」
「ふぅむ……」
館の奥に進んでいくターモの後ろで、二人は爆発か何かで崩れた様な内部を観察しながら歩いていた。
「ま、経年劣化かね」
田崎はそう言うと、あまり興味なさげに先へ進んでいく。
だが芽衣子だけが一人、何かを考えながら歩いていくのだった。
そんな風に三人が歩いていると、道中階段を下り、長い通路の先にある扉の前でターモが立ち止まった。
「コ、コ」
「こ↑こ↓?」
「いや、真似せんでもええから」
扉の取手を掴むと、ターモが扉を開いた。
その先から淡い光が溢れ出た。
「おぉ……?」
田崎は眩しさに手を翳しながら中へと進むと、視線の先にあるものが見えた。
「筒? 何じゃ、筒の中に何か……ってげぇっ!」
扉を抜けた先で立ち止まっていた田崎の後ろからひょっこり顔を出した芽衣子はそれを見て悲鳴を上げた。
彼女たちの視線の先には透明な円筒の中に、大きな脳味噌が浮かんでいたのだ。
「おや、お帰りなさいターモ」
「ウ、タ、ダイマ」
室内の何処からか陽気な声が響いた。
それと同時に円筒の内部でごぽりと水泡が浮かび上がる。
「その人たちは……おや、おやおや? おやおやおややややややYAYAYAYA!?」
「え、ど、何処から喋ってるんじゃ!? っていうか誰が喋ってるんじゃ!?」
「うわー……マジか」
突然響いた声に驚き慌てる芽衣子と対照的に、田崎は眼前の脳みそを引き攣った顔で眺めていた。
「NINGENじゃあないですかぁ! まだ生存していたとは驚きですねぇ!」
「あー……ターモ、なんだこいつ?」
「ウ、シラナイ、イロイロ、オシエテクレタヤツ」
「色々教えてくれたねぇ……おい、そこの円筒脳味噌」
「YAYA? もしかしてミーに言ってます?」
部屋の奥の台座の上、淡い光で照らされる脳味噌を田崎はターモに食われた右手の先端で小突いた。
「お前以外の何処に円筒の中で浮かんでる脳味噌があるんだよ」
「HAHAHA、確かに確かに! して、ミーに何用です?」
「テンションたけぇな……」
部屋の角に据え付けられたスピーカーから出る声のテンションの高さに田崎は若干引きながら、口を開いた。
「お前、何なんだ?」
「何というのは何です? ミーの名前? それとも存在理由? または──」
「あぁ鬱陶しい! 全部だ全部! お前という存在が何なのか名前も含めて全部!」
「アー、OKOK。 その質問に相応しい答えを検索中……………………該当」
抑揚のある声が一転して、無機質なボイスへと変換される。
「検索結果は一件です、私はこの図書館の検索用に二三五〇年に作成された人工AI、イボンコです。 CVは──」
「いや声まではいらん、しかし人口AIか……お前中国製?」
「ん~中国、実に千年ぶりに聞く単語です。 しかし残念ながら不正解、私はロシア製です。 人権意識とか薄い国でしたので、共産国ですので」
「そっちか~、確かに人工的に作った脳味噌を若返り液の中に浮かべて検索エンジンにしようなんてするのはそのどっちかだよなぁ」
イボンコと名乗った脳味噌は、田崎の返答に頷く代わりに円筒の中で水泡を幾つも作り出した。
「ホホホ、ご明察ですNINGEN様。 何かしらの事情で機械の体を操っておりますが、その先に本体が居るのはミーにも見えております」
「覗き見とは趣味が悪いな」
「ミーの全てを見ているのだから、むしろ安い対価かと思いますホホホ」
「あの~……」
イボンコを睨みつける田崎に、脳味噌は軽口を返す。
そんな折、田崎の肩を柔らかな指先が二度突いた。
「ん?」
「よくわからんのじゃが……とりあえずこいつがターモがさっき言ってた餌をくれる奴でいいのかの?」
「ふむ、そういやどうなんだターモ。 こいつがその餌をくれる奴か?」
「ン」
ターモは二度、首を横に振った。
「チガウ、タブン、スグクル」
「来る?」
「あー彼らですか、もしかしてANATA達ターモに入れ込みました?」
「あ?」
「だったらお勧めはしません、スグサマ、ゲラウト!」
何言ってんだこいつ……と呆れ顔を浮かべていた田崎は、その後ろから足音が近づいていることに気づいた。
「おぉっと遅かった様ですね、暴力沙汰は勘弁なのでミーはこれで撤退、生きていたらまたお会いしましょうヒューマン」
「あ? あ、おい!」
イボンコはそう言うと、円筒が置かれた台座の床が開きそのまま収納されていく。
咄嗟にそれを掴もうとするが、強烈な電流が田崎の体に走り、床に弾き飛ばされる。
「ぐおっ!」
「む、お主大丈夫か?」
「アイツ、サワル、ビリビリ」
「みたいだな……」
弾き飛んだ田崎へ芽衣子は駆け寄ると、上体を起こし左手を見る。
その手先は黒く焦げており、かなりの電流が流れたことが想像できた。
「おう化け物、今帰ったぞ!」
「へへっ、兄貴今日もお疲れ様でやした……ってあぁ? 誰だお前等」
そんな二人の前に、モヒカン姿で世紀末チックな服装をした男が二人現れる。
モヒカン二人は体の至る所に黒ずんだ血痕を残した格好をしており、一人ずつ釘バッドを所持していた。
「ウ、コイツラ、アンナイ、シタ」
「案内ぃ?」
案内と聞いた途端、小柄なモヒカンが釘バットでターモの横っ腹を打ち抜いた。
「…………ウッ!!」
「だぁれがお前にそんな事命令したよぉ! 俺たちはお前に肉を狩ってこいって言ったんだぜぇ!」
殴られたターモは小柄故の体重の軽さでか、壁に打ち付けられそのまま床に落下した。
「ウ……ゴメン、ナサ……」
「謝る元気があるならよぉ、今すぐ肉を狩ってこい! このゴミ屑漁りの化け物が!」
ゆっくりと倒れたターモに近づきながら、モヒカンは罵倒を続ける。
「ウ、ウ…………」
「おいおい其処までにしておけ弟よ、こいつに案内された馬鹿どもが今にもこっちに殴りかかってきそうな表情してるじゃあねえか」
「へ、へへ、すまねぇ兄貴ぃ、こいつの顔見るとついイライラしちまってよぉ」
「全く困った可愛い弟だ、まぁこんな化け物なら何度殴っても構わんが!」
モヒカン二人は倒れたターモを指すと、腹を抱えて笑い始めた。
「お前達、幼子に何という事を!」
「あ?」
「幼子ぉ? おいおい、この化け物の事かぁ?」
「ヒャハハ! 兄貴、こいつ等きっと馬鹿なんだぜぇ!」
「こんなゴミでも何でも食う生きてるゴミ箱みてぇなのはなぁ、化け物って言うんだよぉ!」
モヒカン達は更に下品に笑い出し、一頻り笑うと二人は強く釘バットを握った。
「そしてよぉ、お前達は……そんな化け物に騙されてここまでまんまと連れてこられた餌ってこったぁ!」
二人は田崎へ同時に飛び掛かり、釘バットを振り下ろした。
「小僧!」
釘バットは同時に田崎の頭部に直撃する。
「まずは」
「一匹目ぇ!」
田崎の頭部からは青い血が流れ、二人は深々と刺さった釘バットを抜こうとし……それが抜けないことに気づく。
弟と呼ばれたモヒカンは田崎の胴体へ左足を乗せ、無理やり外そうとするがそれは微動だにしなかった。
「あ、あれ? 兄貴ぃ、俺の武器がぬけねえよぉ」
「お、俺もだ弟よ……!」
「その程度か」
「!?」
「て、てめぇ、生きて……!!」
田崎は釘バットの隙間から、強く両者を睨みつけた。
「どんな理由があろうと、子供に手を上げる奴は最低だ。 よってお前等はここで始末する」
「ヒギギギギギギギギ! あ、兄貴ぃ!」
「アババババババババ! し、痺れるぞ弟よ!」
「稲妻/Lightning Bolt!」
室内に、閃光が奔った。
強烈な光に目を閉じたターモと芽衣子が次に目を開けた時には、室内には炭化した二つの塊が田崎の前に残るだけだった。
「……屑どもが」
という罵倒が、最後に室内に響いた。
新年あけましておめでとうございますなので初投稿です。
PQ2全く進んでなくてすまない…普通にソシャゲのイベントやってたよ…へへっ
ロージアの蛮族 赤緑
クリーチャー:人間
3/3
「肉と、それから卵だ! 食うぞ!」
「ガッテンだ兄貴ぃ!」
────今日の戦果




