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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
南極編
156/207

その名は、クレケンズ

https://www.youtube.com/watch?v=nzGNiHzrLAU&index=77&list=PLY1EpKfWRnw-hvSkr5ESQKaNX6Q8le9ck

『2-15 - 魔王』NieR Replicant&Gestalt OST


MD215年 11/02 09:00


 卵型の装置に火が灯る。

 装置は甲高い音を立てながら、ベッドで眠るアリスに繋がれたケーブルから緑色の空気の様な物を吸い上げ始めた。

 それはゆっくりと棺桶の中に吸い込まれていく。


「さて、上手く行くと良いんだが…」


 装置の無事な動作を確認し、山坂は息を吐いた。

 そして、寒さで体を震わせた。


「ったく、魂が正しい体に移動するためには体温も極力下げる必要があるのは構わないんだが……何もこんな場所にしなくても」


 露出していた顔をスーツで包むと、山坂は周囲を見渡し……少し暗い気持ちになった。

 彼らの周囲には基地の面々と彼らを襲っていたショ=ゴスが氷像となって乱立していた。


「とりあえず、後は──」


「魂の移譲が終わるのを待つだけ、だね?」


 その声に、山坂は直ぐに銃を引き抜いた。


「誰だ!!」


「…………」


 だが、声からの返答は無い。


「ショ=ゴスの生き残りか……? ちっ、こんな事なら──」


「事前に実験棟一帯を焼き払っておくべきだった?」


「てめぇ! 何処だ!!」


<正面です、音声は正面……巨兵から発せられています>


 周囲を見回していた山坂に、AIが助言を与える。

 山坂はすぐに手持ちの銃を装置の奥……巨兵へと向けた。

 巨兵は相変わらず運搬用エレベーターの上で鎮座していたが、一つだけ違う部分があった。

 目に光が灯っていた。


「巨兵……動いてるのか!?」


「その通り、正確にはまだ起動準備中だけどね」


「っ……誰だ!」


「はは、酷いなぁ……僕の声忘れたのかい?」


 実験棟全体に響く声に、山坂は首を傾げた。


「あー……料理人の中野君?」


「いやいやいや、誰だいそれ」


「中野君は中野君だろ! いい加減にしろ! って……まさか、その返し方は……!」


 顎に手を当て、暫く考えた後に出た答えに謎の声は困惑した返しをする。

 その返し方に……山坂はある人物とのやり取りを思い出し、愕然とした。


「まさか、まさかお前は…………クレケンズ!!!!」


「やっと思い出してくれた様だね、久しぶり……山坂君」


 声が彼の名を告げると同時に、山坂は拳銃の引き金を引いていた。

 鷹が鳴くような音と共に雷鳴が弾け、巨兵に直撃する。


「無駄無駄、こいつには概念処理がされてる。 僕と一緒に研究していた君になら意味が分かるだろう?」


 だが巨兵には焦げ跡一つ残らず、それは不動のままだった。

 唯一、灯っている目だけが視線を山坂へと動かしていた。


「しかし久しぶりの再会にも関わらず熱烈な反応だね、そんなに嬉しいのかい?」


「屑野郎! 答えろ! どうして、お前が生きている!!」


 だがそんなことには全く動じず、山坂はゆっくりと歩きながら巨兵へ銃を放ち続ける。

 彼の瞳には、ありありと相手への憎悪が浮かんでいた。


「どうしてって、いきなりだね……そんなに僕が生きてることが不思議かい?」


「不思議じゃあなく、不愉快なんだよ!」


 何発も稲妻を放ち続ける山坂だったが、巨兵にはやはり傷は付かない。

 忌々しげに巨兵を見上げながら、彼は銃のエネルギーを補充する。


「それはすまないね、だが僕にも僕の都合というものがある」


「都合? お前の都合って奴はいつもそうだな、他人の事などお構いなしでお前の勝手な理屈や理由を押し付ける!」


「それは君にも言えた事だ、ノイチェの事を普段どれだけ──」


「お前があいつの名前を呼ぶな!! お前が……お前のせいで、彼女は死んだんだぞ!!」


 ノイチェという名前が出た瞬間、山坂は激昂した。

 二丁拳銃を構え、巨兵の頭部へ狙いを定める。


「君が邪魔さえしなければ、そもそも起きなかった事故だ」


「馬鹿を言うな! 時間に干渉する実験なんぞ失敗するに決まっている! あれは俺が止めなくても起きていた事故だ!」


「だが彼女は僕への協力を選んだ、彼女の意思を尊重するべきだとは思わなかったのかい」


「実験で死ぬことが彼女の望みだったわけじゃあねぇ! 彼女に少しでも危険性について話したのか!? 知っていれば協力なんぞしなかった筈だ!」


「したさ、した上でノイチェは──」


「あいつの名前を呼ぶなって言ってんだ!!」


 稲妻を放つ。

 今度は先ほど放ったものとは何もかもが違った。

 それは木の幹から枝が広がるように幾つかの稲妻が分かれて飛び、巨兵以外の物を破壊した。


「……実験棟ごと破壊する気かい? 君は良いかもしれないが、後ろの彼女たちの事を気に掛ける位はしたらどうだい」


「お前が今すぐこの世から消えれば、気にかけてやるさ……!」


 天井から小さな瓦礫が実験棟に落下した。

 山坂や、後ろで眠っているアリスの上にも幾つかの小片がパラパラと落ちる。

 だが山坂はそんな事は御構い無しに、稲妻を再び放つ。


「やれやれだ……では要望通り消えるとしよう、そろそろ魂の移譲も終わる頃だろうからね」


 声の主がそう言うと、突然施設全体が振動した。

 

「ぬ、くっ……なんだ!?」


<地下から熱源反応、何かが来ます>


 地鳴りを伴いながら、振動が地下から徐々に近づいてくることを山坂は理解した。

 それはまるで大量の水が迫ってくるかのような感覚を思わせた。


「てめぇ、何をした!」


「僕は何もしてないさ、強いて言うなら君が一昨日やったかな?」


「一昨日……やった……? まさか!」


 一昨日の出来事を思い出す。

 地下、洪水、発電機、龍脈……。


「ショ=ゴスか!?」


「ご明察、流石は僕と共に研究をした人間なだけはある。 もうすぐ彼らが此処に上がってくる」


「このタイミングでか……!」


 山坂は咄嗟に後方を確認する。

 ベッドの上では未だアリスが眠っており、魂の移譲自体は何の問題もなく実行されていた。


「お前がショ=ゴスを操ってるのか!? 止めさせろ! こんな状況で装置に何かあったらどうなるか分からないお前でもあるまい!」


「それはお断りさせてもらおうか、僕にも僕の都合があると言っただろう?」


 山坂は大きく舌打ちをし、巨兵から飛び退いて距離を取った。

 数秒後、巨兵が乗る運搬用エレベーターが斜めに浮かび上がった。


「来たか……!」


 その隙間から見えたのは、まず黒いタールの様な液体だった。

 それは隙間から滲み出るように地面に広がると、次に広がった部分から爬虫類の腕を生やして這いずる様に動き始める。

 ショ=ゴスは床に十分に広がると、次に広がった部分に無数の目を産み出した。

 まるで生まれたての雛が周囲を見るかのように、外への興味を持っているかのような知性を山坂に感じさせた


<基地深部より大量に後続が迫っています、撤退を推奨>


「仕事を完遂するまでは逃げられるか!」


 山坂はベッドで眠るアリスと棺桶を守る様に立ち、銃から稲妻を放つ。

 ショ=ゴスは一瞬、目を瞬かせると即座に蒸発する。


「オラオラオラオラオラオラァァァ!」


 銃を乱射し、基地が破壊されるのも厭わないという勢いでショ=ゴスを駆逐する山坂。

 だが……。


「ははは、頑張るね山坂君。 だが……無限に増え続ける彼らにどこまで対処できるだろうね」


 巨兵を載せているエレベーターが、一際大きく浮かび上がった。

 その後は一瞬だった。

 ダムが決壊したように止めどなくショ=ゴスが溢れ始め、抵抗虚しく山坂はあっという間にショ=ゴスに包囲された。


「くっ……」


 三百六十度、何処を見渡しても不気味な粘液が山坂を見ていた。


「詰みかな?」


「屑め……こいつ等で俺を殺すつもりか? 自分で殺しに来る度胸もねぇか?」


「殺す? 君を? ふっ、ははは、ははははは!」


「何がおかしい!」


 山坂の問いに、クレケンズは笑った。


「いやいやごめんごめん、君の言うことがあまりに面白くてね」


「何……?」


「君を殺すつもりなんか元から無いさ、むしろ僕は君に協力してほしいんだよ」


「断る」


「即断即決は相変わらずだね」


 クレケンズの呼びかけに、山坂は即座に首を振った。

 だがクレケンズはそんな返答すら予想通りと言う風に言葉を続けた。


「だがこれはノイチェ……彼女に関する事だと言ったら?」


「…………何だと?」 


「少し興味が沸いたかい?」


「言ってみろ、聞くだけなら聞いてやる」


 山坂が答えると、クレケンズは嬉しそうに笑った。

 そして同時ににじり寄っていたショ=ゴス達も動きを止めた。


「彼女のサルベージを行おうと思っている」


「無理だ、ノイチェは体と魂ごと細切れになった状態で時間の世界に取り残されたんだぞ?」


「そう……当初は僕もそう思っていた、だがこの千年の間の実験でようやくその糸口を掴んだのさ」


 クレケンズの声色が、徐々に狂気を帯び始める。


「ずっと、ずっと彼女を救う事だけを考えてきた……君だってそうなんだろう? そうでなければ人間嫌いの君が、人類を救うなんて言う計画に加担するわけがない!」


「勝手に決めつけるな屑野郎、俺には俺の理由があって参加している」


「だがそれも彼女を助けるためだ、そうだろう!?」


「………………」


 あまりの剣幕に、山坂は押し黙った。

 もしくはクレケンズを哀れに思い、言葉が出なかったのかもしれないが。


「何とか、何とか言ってくださいよ……君と僕なら、彼女を救えるんですよ!?」


「……現実を認識しろ、屑野郎。 彼女は死んだ、二度と俺達の前には────」


「黙れ!! 彼女は、彼女はまだ生きている! どうしてそれが分からない!? 君になら理解できるはずだ!」


 問いかけに、山坂は答えなかった。

 ただ憐みの瞳だけが、巨兵へ向けられた。


「ふ、ふふ……そうか! まだ僕の実験成果を見てないからだ! そうに決まっている!」


「…………」


「直ぐに君にも見せてあげよう! 僕の実験の結果を!」


「!?」


 地響きが、室内に響き渡った。

 巨兵がエレベーターから一歩を踏み出したのだ。

 同時、ショ=ゴスが巨兵に踏みつぶされ水滴が飛び散る様にあちこちに飛び散っていく。


「さぁ……、装置とリーグを渡してもらいましょうか!」


「ちっ、動き始めたか! シトリー、魂の移譲は!?」


<終了しています、ですが撤退ルートが検出できません、チェックメイトです>


 後方をちらりと一瞥し、山坂は考えを巡らせた。

 左右前後、上下に至るまでショ=ゴス達に包囲され、更に奥からは巨兵が天井を崩しながら迫ってくる。

 そんな絶体絶命の状況で山坂は……笑っていた。


「へっ、追い込まれた時こそふてぶてしく笑うもんだ」


「さぁ、渡せ!」


「やーだよバーーーカ!! 死ね!!」


 そして、振り返ることなく装置を打ち抜く。


「…………!! 山坂ぁぁぁぁ!」


「ざまぁみろ! ぐおおおぉぉぉぉぉ!?」


 装置は跡形もなく蒸発し、それを見たクレケンズは巨兵の蹴りを山坂へと放った。

 中指を立てた瞬間、その蹴りは山坂に直撃し……彼は実験棟の壁を貫き、岩盤を貫通し遠くへ吹き飛ばされていく。


「はぁ……はぁ…………全く、彼には困ったものだ」


 クレケンズはそう言うと、巨兵はベッドで眠っているアリスを右手でゆっくりと摘み上げる。


「だが装置は何とか複製出来る、とりあえずはリーグと……本体が回収できればそれでいい」


 巨兵は胸部を開放し、無人のコックピット部分へアリスを収納する。

 

「さぁショ=ゴス達、リーグ・リーク本体を運び出すんだ。 諸君ら待望の地上へ出ようじゃないか!」


 クレケンズの言葉に、ショ=ゴス達は言語ではない唸り声の様な……だが、確かに歓喜の声を実験棟に響かせるのだった。






ソシャゲを増やしすぎてイベントを全てこなすことが出来ないので初投稿です

やべぇよやべぇよ…


試作型巨兵/Prototype,Hulk 青青赤赤緑緑白白黒黒


アーティファクト・クリーチャー


飛行、先制攻撃、トランプル、警戒、絆魂、破壊不能


試作型巨兵は戦場に出る際、-1/-1カウンターを五個載せて戦場に出る。


青赤緑白黒:試作型巨兵から-1/-1カウンターを5つ取り除く。 戦場にある全てのパーマネントを破壊する。


10/10


「予算に制限が無かったからやりすぎた……これを量産するのは無理だ」


「なら各色ごとにダウングレードをしていくしかないね」


「まぁそうなるか……だがとりあえず、今は完成を祝って飯でも食いに行くか!」


「あぁ、是非とも」


──開発者二名、ある日の会話

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