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111 操り人形




 ベアト、この間からせっせと何を作ってるのかな。

 今もテーブルにむかって、メロちゃんといっしょに作業中だ。

 キリエお姉さんは見ちゃダメです、って言われてるから見てないけど、とっても気になる。

 気になるといえば、もう一つ。


「ジョアナのヤツ、フラっと出てったままだな……」


 昨日の夜、行き先も告げずに宿を出ていったっきりもどってきてない。

 レジスタンス時代からこんな感じだったな、そういえば。

 朝になるといなくなってて、夕方になると戻ってくる感じ。

 時には何日も留守にして、戻ってくる時は必ず有力情報を手土産てみやげに持ち帰ってきた。


「今回も、だったりして」


 そう、きっと今回も、有力情報を持ち帰ってくるはずだ。

 ホント、頼りになるヤツなんだよね。

 ジョアナがいるだけで、安心感が全然違う。


「キリエっ、ぼんやり窓の外見て、なにたそがれてんだい?」


 トーカにポン、と肩を叩かれた。

 そんなぼんやりしてたか、私。

 してたんだろうな。


「ちょっとね、考えごとしてただけ。そういやリアさん戻ってきたのかな」


「戻ってきたとして、軍が通るのは中央通り。ここからじゃさっぱり見えないね」


 目立たないように、と思って大通りから離れた宿を選んだけど、失敗だったかな。

 戻ってきたのがわかったところで、私たちになにが出来るワケでもないけどさ。


「なんにせよ、ジョアナ待ちだね。行動は、アイツが情報持って帰ってきてからだ」


「……ジョアナさん、ずいぶん信頼してんだな」


「そりゃ当然。アイツにはいろいろ助けられてきたから」


 一番信頼してる仲間って言っても、言い過ぎじゃないくらい。


「……あのさ、こんなこと言うと怒るかもしんないけど、年長者として一言だけ忠告させて」


「なにさ、真剣な顔で」


「あの人、無条件で信用しない方がいい。うまく言えないけど、嫌な感じがするんだ」


「い、嫌な感じ……?」


 なんだ、そのフワフワした理由。

 ジョアナのことなんにも知らないくせに、印象だけで信用するなだって?


「いくらなんでもそれは……。そんな理由じゃ納得できない」


「根拠だってある。発信機が仕掛けられてたベアトの首輪、ジョアナさんがプレゼントしたんだろ? 誰がいつ仕込んだのかわからない発信機、一番仕掛けやすいのは渡す前、一番怪しいのは渡した本人だ」


「根拠ってたったそれだけ? ベアトだって四六時中首輪をつけてたわけじゃない。目的がベアトの身柄じゃないなら、仕掛けるタイミングはいくらでも——」


「発信機はタルトゥス軍のブルムに読まれてたんだぞ? 仕掛けた時はどうだか知らないが、少なくとも今は、仕掛けた犯人とタルトゥスはつながってるってことだろ」


「……つまり、なにが言いたいの? ジョアナが裏切って、タルトゥス軍とつながってるって、そう言いたいの?」


「そこまでは言ってない。ただ、無条件で信頼するのはやめとけってだけ」


 ……言ってんじゃん。

 ジョアナが敵なわけ、タルトゥス軍とつながってるわけないのに。


「お二人とも、ケンカはやめるですよ……」


「……っ、……っ」


 ベアトとメロちゃん、いつの間にか作業をやめて、私たちの間に割って入ってきた。

 少し熱くなっちゃってたみたいだな、頭を冷やさないと。


「ケンカじゃないよ。話し合ってただけだから、心配しないで」


「ですけど……」


「メロちゃんも心配よね〜。二人とも、ちゃーんと仲良くしないとダメよ。お姉さんとのお約束っ」


「うわっ!!」


 ジョアナ、いつからいたんだ!?

 当たり前のように会話に入ってきてるけど!

 びっくりしたな……、トーカなんて指さしながら口パクパクさせてるし。


「ふふっ、私のために争うだなんて、お姉さんたら罪作りね」


「ジョ、ジョアナさん、いつからいたんだい?」


「割りと最初からよ」


 あ、トーカがサーっと青ざめた。


「まあ、それはそれとして。お姉さん重大ニュースを持ってきたの。なんと、リアさんがあなた達に会いたがっているわ」


「リアさんが!?」


「ルーゴルフがクロだと断定して、とっ捕まえたらしいの。拷問……じゃなくって尋問に、あなたたちにも立ち会ってほしいんだって」


 ホントに重大ニュースじゃん、それ。

 タルトゥスの謀反むほんを知れば、本国はヤツの討伐に動くはず。

 そうなれば、スティージュとコルキューテが連携してタルトゥスを攻められる。

 情勢がガラリと変わるはず。


「宿の前で、迎えの兵士さんが待っているわ。みんないっしょに行きましょう」


「だね、ベアトたちもいっしょに!」


「……っ!」


 一刻も早く、リアさんに会いにいかなきゃ。

 イスを蹴っ倒すように立ち上がる私。

 メロちゃんもベアトもついてくる気満々だけど、トーカだけがぼんやりと座りこんだまま。


「ほらほらトーカっ、なに座ってるですか! ちゃっちゃと立つのです!」


「あ、あぁ……」


 メロちゃんに引っ張られて、やっと立ち上がった。

 ジョアナに話を聞かれてたの、よっぽどショックだったのかな……。



 ○○○



 コルキューテのお城は、デルティラードのお城よりも少しだけ小さい。

 そう、少しだけ。

 比較対象がおかしいだけで、びっくりするほど大きいってのに変わりない。


「ようこそ、キリエ殿。連れのみなも、よく来てくれた」


 兵士さんに連れられてお城の正門をくぐったところで、リアさんさっそくのお出迎え。

 晴れやかな顔してるな、全部うまくいったみたいだ。


「ルーゴルフは地下牢に捕らえてある。まずはそちらまで案内しよう」


 兵士さんの案内はここまで。

 代わってリアさんが先頭に立ち、城内へ。

 お城の中もとっても豪華、かと思いきや、よくある美術品がどこにもなくって、廊下にじゅうたんも敷かれてない。


「なんて言うか、質素しっそだね」


「驚かれたようだな。飢餓きがに苦しむ民のため、贅沢ぜいたく品はセイタム様が全て資金に変えたのだ。他の亜人領から食料を輸入するために、な。だが、戦火にあえぐのは他国も同じ。食料品の値段もつり上がり、作った資金はすぐに底をついてしまったが」


 そっか、セイタム王ってウワサ通り、民想いの優しい王様なんだ。

 そんな人が、息子が謀反むほんを起こしたなんて知ったら、どうするんだろう……。




 リアさんに案内されて階段を降り、私たち五人がやってきたのは地下一階。

 壁にかけられたたいまつの明かりが頼りない、薄暗い石造りのフロアだ。

 廊下を歩くたび、コツコツと靴音がひびく。


「この先にルーゴルフがいるですね……! あたい、かなりキレてるですよ……!」


「キミみたいな小さな子には見せられないよ。拷問は大人の仕事だ」


 メロちゃんすっかり殺意先行になってるな……。

 けど、拷問か。

 ベアトやメロちゃんには見せたくないし、ジョアナに頼んで部屋の外にいてもらおうか。

 今の調子だと、メロちゃんが大人しく待っててくれるか疑問だけど。


「メロはアタシとベアトといっしょに待機だな。拷問なんてキリエに任せとけ」


「言い方……。その通りなんだけどさ……」


 よかった、トーカと私、普通に話せてる。

 ただ、ジョアナ相手だと気まずそう。

 あの二人、宿を出てからまだ一回も言葉をかわしてない。


 先頭を歩くリアさんが、両開きの大きな扉に手をかける。


「地下牢はこの広間を抜けた先だ」


 ぎぃぃっ……。


 きしみを上げて扉が開かれた。

 中は砂地が敷き詰められた、円形の空間。

 広間っていうより、闘技場っぽい。

 地下牢に行くために、こんな場所を通る必要があるなんて、変わった構造だな……。


「リアさん、ここってなんの部屋?」


 私たち全員が広間に入ったところで。


 ガチャリ。


 扉にカギがかけられた。


「……リア、さん?」


「……キリエ、気をつけろ。なにかおかしい」


 リアさんの表情が、いつの間にか人形みたいな無表情に変わってる。

 ツカツカ歩いて、壁にかけられた槍を手に取って、ぐるりと首を動かしてこっちをむく。

 まるで、操り人形みたいに。


「これはもしかして、お姉さんたち、まんまと罠にハマった感じかしら」


「罠って……っ、リアさんが敵だったっていうんですか!」


「半分正解、半分はずれ……、ふわ~ぁ……、いい感じに暗くてねむい……」


 広間のスミの方から、男の声が聞こえた。

 よく見れば、薄暗いすみっこでダルそうにあくびをする黒髪の魔族がいる。

 忘れもしない、アイツはあの日王都で会った魔族の一人。


「お前……、ルーゴルフっ!」


「チッ、呼び捨てにしてんじゃねぇよ……。はぁ、ダル……」




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ベアとさんも狙われてるんよな?心配や
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