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魔法書を作る人 番外編  作者: いくさや


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10/25

番外編10 ステラの冒険8

連続投稿一話目。

ちょっと短いです。

 番外編10


「いかん。怒りで我を失っておる!」

「なあ!」


 アランおじいさんが上から飛びついてくる。

 二人で地面に寝っ転がったら、その上を空気がぶわって通り過ぎて行っちゃった。

 ステラ、知ってる。

 とーちゃが走ったらこうなるの。


 あ、ほこりがいっぱい。

 これといっしょになれば、隠れられるかも。

 アランおじいさんも息をいっしょにして、まわりとそーっといっしょになって、見つからないようにすれば……。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 とーちゃが地面をドン!


 地震!

 下が揺れて、グラグラして、あちこちがヒビだらけになっちゃって、お池のまわりが低くなっちゃった!

 ヒビの中から鳥さんの羽がぶわって吹いてきて、大変なの!

 羽がね。お空の上まで上がってね。ピカピカピカって光って、お空いっぱいが明るくなっちゃった!


「……世界の終わりか?」

「なあ!」


 あ、こんなに地面とか空気とか動いちゃうと隠れられない! ばれちゃう!


 揺れるのが止まって、目を開けたら、すぐそこにくつが見えた。

 怖いなって思うけど、見ないのはもっと怖いからそっと見上げる。


 とーちゃがいた。


「ステラああああああああああぁぁぁぁ……」


 白い息がね。

 ぼおおおおって出てきて。

 とーちゃの後ろで金色の光とか、龍さんと、鳥さんと、亀さんと、虎さんがわさわさ動いてて。

 浮いてる黒いご本がフワフワしてる。


 ステラの名前を呼んだら、だまっちゃった。

 じーーーーーってステラを見てる。


「……なあ」


 お顔を見ても何もわからない。

 いつもの優しいのも、叱る時の怖いのも、なんにもないの。

 お耳がぺたんってして、しっぽがしょぼんってなっちゃう。


「ステラ。始祖様は、その……大丈夫なのか?」


 アランおじいさんがステラの上から小さな声で聞いてきた。


「わからないの」

「なんとかして鎮めねばならんのか。始祖様を相手に難題すぎやしないか」


 とーちゃ、まっかか。

 静かだけど、どっかん、どっかんしてて。

 光りも、気持ちも、すっごく強いの。

 このままじゃステラもアランおじいさんもお池みたいになっちゃう。


「とーちゃ……」

「ステ――」

「……ん」「にゃあ!」「にゃ!」


 あ、かーちゃとねえちゃたち!

 とーちゃといっしょに来てたみたいだけど、ステラ、ぜんぜん気が付かなかった!


 かーちゃがとーちゃの胸に飛びついて、ソレイユねーちゃが後ろから腰につかまって、ルナねーちゃが背中に乗っかる。


「ちょっ!? 三人とも――」


 とーちゃがあわててる。

 あれ? もう怖いのじゃないような……。


「にゃあ!」

「にゃ!」


 ねーちゃたちがステラを見た。

 なにを言いたいのか、わかる。わかるよ!

 この前とちがう。いつもみたいにちゃんとわかる。

 いっしょだ!


 アランおじいさんの背中を台にして、とーちゃの顔に飛びつく。


「なあ!」

「にゃあ!」

「にゃ!」


 ひっさつ、猫だっこ。


 とーちゃ、いつもの優しいとーちゃに戻って!


「……はあ」


 おへそにとーちゃの息が吹いて、くすっぐたくなった。

 そしたら、赤いのがどんどん消えてって、光も、動物さんもいなくなっちゃった。


「皆、もう落ちついてるから。大丈夫だよ」


 とーちゃがいつもの声で教えてくれた。

 お顔の前にステラのお腹があるからモゴモゴしてるけど。

 でも、かーちゃもねーちゃたちもわかったみたい。はなれちゃった。


 とーちゃはちょっと残念そうだったけど、ステラをだっこして下ろしてくれた。

 ステラの前に座って、目と目を見てくる。


 えっと、ステラは、えっと、そう。怒ってたの。

 ソレイユねーちゃが遠くに行っちゃうって言うのに、みんな止めなくて、ステラだけがさみしくて、悲しくて、一人ぼっちで。

 だから、悪い子なの。

 悪い子だから、えっと、ステラは。

 でも、とーちゃも昔、悲しくって、でもでも、がんばって。

 だから、だから、ステラは……。


「……なあ」

「ステラ。僕の目を見るんだ」


 しっぽをにぎって下を見ちゃってても、とーちゃはずっと待ってる。


「……ん」


 頭がぐるぐるしちゃうけど、悪い子だけど、ちゃんととーちゃとお話しないと。


「ステラ。一人で勝手に家を出ちゃいけないって約束、破ったね」

「……ん」

「反省」


 ゴツン。


 げんこつされた。

 痛い。

 泣きたくなっちゃうけど、お口をきゅってしてガマン。

 とーちゃの方がずっと泣いちゃいそうなお顔をしてるんだもん。


「でも、僕もステラが悲しいのに気付いてあげられなかった。だから、反省」


 なあ!

 とーちゃが自分で自分をドガンってやっちゃった!

 あぁ……、ほっぺ。まっか。痛そう。

 ステラ、なめるよ?


「なあ……」

「ありがと。でも、大丈夫だから。って、リエナも! 大丈夫! 大丈夫だから!」

「ん」


 かーちゃにもいっしょになめてもらえばいいのに。

 とーちゃは止めちゃった。

 また、ステラの目を見てお話を続ける。


「悩んだり、苦しい事があった時は相談して。僕も一緒に考えるから。皆も、一緒に。約束できる?」

「……ん!」


 ステラ、覚えた。

 とーちゃがこんなに悲しいになるのやだもん。


「そっか。他にも色々とあるけど」


 レイアねーちゃとシンにーちゃとアランおじいさんを見てから、とーちゃは何回か深呼吸して、それからぎゅうってステラを抱きしめた。

 とーちゃ、手がぶるぶるしてる。


「無事で良かったぁ……」


 ステラ、悪い子なのに。

 とーちゃもかーちゃもねーちゃたちも見つけてくれた。

 こんなに、こんなに良かったって思ってくれてる。

 ちゃんと、わかるの。


「なぁ……」


 お口をきゅってしたけど、ダメ。

 お鼻の奥がね、ツンってするの。

 涙がポロポロって。

 ポロポロってどんどん出てくるの。


「なあああぁぁぁん! なああああああぁぁぁぁぁん!」


 みんな、ステラが寝ちゃうまでいっしょにいてくれた。

猫だっこ。

シズ専用の拘束具。

効果:なごむ。超なごむ。

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