151話 その先へ
今回は少々短いお話ですが、最終章・前編突入です。
―3年後―
「遂に……だな!」
「本当にこの3年よく頑張ったものだ」
ピーサリアは僅か3年という短い期間で復興を果たした。
これにはピーサリアが新たに掲げた、争いを起こさない国を住民全てが一丸となって目指した結果でもあった。
そして今まさにシャルロットによりピーサリア王国改め、ピーサリア国の樹立が大勢の人の前で宣言されていた。
さらに、この国は世界で初めて王政を捨てた国となる。
シャルロットは自らを王と名乗らず、代表と名乗り、国を導くに相応しい者がいれば即座に代表の座を明け渡すと宣言していたが、シャルロット以外に適任がおらず。といった感じだ。
アクセル達も復興の手伝いをしていたが、過度な手助けなどは一切せず、その中でもミラやイリナは政治について知識を与え、ステラは農作物の知識を与え、ソニアは調理による知識を与えた。
これによりオムニの木から取れる実を加工し、特産として交易も始めることが出来た。
そしてアクセルはそんな国を護ろうと固い意思を持った者に戦闘のいろはを叩き込み、熱心に指導していた。
アクセルは無条件に指導することを嫌っているわけではなかった為、国を自らの手で護ろうとする者達に共感し、指導を行ったというわけだ。
「さて、ついに俺らもお払い箱になったわけだな」
「ふふ、では行くとしようか」
「またいつでも帰ってこられるしね」
「では、軽く挨拶しておきましょうか」
ドラゴンとなったソニアの背に乗り、シャルロット達を空の上から見ていたアクセル達だったが、ソニアが人々の頭上に姿を見せた際、割れんばかりの歓声が響く。
そんな住民たちにアクセルは手を振り、ソニアが咆哮をあげたあと、ピーサリアの地をあとにした。
「随分と感が鈍っちまってるだろうからな…予定通り、ダンジョンで取り戻させてもらおうか」
こうしてアクセル達は再びダンジョンが存在する街、エディオンへと向かう。
「ここはあんまり変わってないな……」
エディオンへと辿り着き、3年の月日を感じさせない街並みを通り過ぎ拠点へと向かう。
3年経過したが、拠点も合間に手入れをしていた為、綺麗な状態だ。
ダンジョンの本格的な攻略は翌日から行うことに決め、ステラとソニアは情報収集のため街へ、アクセルとミラは拠点に留まることになった。
「3年であのドラゴンを倒した者達がいると思うか?」
「確実にないな。まだしばらくは無理だろう……」
「次の階層はたしか…海だったな」
「あぁ、俺達もステラがアクアから魔法教えて貰ってなきゃ足止めくらってところだ」
ダンジョン61階層からは海となる。
入念に準備をしておく必要がある。
「しかし意外だったな。君がまさかダンジョンに行こうと言い出すとは」
「ん?あぁ、戦いの感を取り戻したいってのは本音だが、1番下に何があるのかも気になってたからな。こんな機会がないと多分、下を目指すこともないだろうし」
「それが終わればまた気ままな旅の始まりか………ふふ、それも悪くない」
―翌日―
ダンジョンに入り、前回のような強行はせず、まずはゆっくりと下層を目指す。
「かなり鈍ってるな……」
襲ってきた魔物を即座に倒したあと、アクセルが重々しく零す。
それは肉体的に鈍っているのではなく、命のやり取りを中に身を置くという、いわば心構えのようなものに対してだ。
そしてそれはアクセルだけでなく、皆が感じていたようで、気を引き締め直し、ダンジョンを進んでいく。
そして20階層の階層主を倒した頃には感も取り戻したこともあり、休憩することなった。
「ここからはもう少し速度を上げようか」
「あぁ、人が居なくなる階層までさっさといこう」
「人目があると思いっきりやれないし」
「私もうっかりドラゴンである事が知れればまた面倒ですしね」
「よし、魔石の回収もやめて、一気に61階層までいくぞ」
その後、前回より速い強行を行い、60階、階層主であるドラゴンを倒した。
「ここからですね」
「ステラ、魔法頼むな」
「うん」
「ダンジョンの海か……当然、かなりの危険があるのだろうな」
こうしてアクセル達はまだ誰も攻略していない階層の攻略を開始する。
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